シルファエピデン2章
朝、起きて回りを探しても、ロビーが居ない。
「ロビー、何処に行ったの?」ニーナはとてもロビーの事が心配に成った。キューも心配そうな顔でニーナの顔を見上げる。
ニーナはふと空を見上げた。そこには何と、根が異常に発達し、蔓の様な物が付いてユラリユラリとした、奇妙な木の形をした物体が浮遊していた。
「未確認生物?」よくみるとロビーがその奇妙な物体の中に埋もれていた。「ロビー、ロビーが取り込まれてる!」
そうと気付いた瞬間、ニーナは走ってその物体を追い掛けた。
が、遠目に見ると止まっているようで結構早い。幾ら追い掛けても距離は縮まらない。木々が鬱蒼とする森の中、ニーナは木の根っこに足を引っ掻け、転んだ。
カスリ傷一つ無いが、キューは心配した。
ニーナ「私は大丈夫だよ」何事もなかったかのように風がそよいだ。
仕方無く、一度追跡を止めることにした。
1日遊んだだけだが、ロビーは子供の少ない麓暮らしをしてきたニーナにとって、大切な存在だ。ここで諦める訳には行かない。
ニーナはまず、精霊に水をあげてからロビーを探すことにした。
水やりが終わり、切り株に座って考える。まず、あの物体は何者だったのか。何となく植物よりも動物っぽかった。かと言って動物のくくりにするのも無理がある。魔物と呼ぶことにしよう。あの怪しい雰囲気にピッタリだ。ニーナ「魔物はあの大きな木の方向から来て、太陽の方向に向かって行ったから……こっちね。」
ニーナは切り株から勢い良く立って、魔物を探しに行った。
随分歩いた。「ガサガサガサガサ」ニーナは音の方向に振り返り、目を見開き驚いた。茂みの向こう側を覗いて見ると、そこでキューが鼠を追い掛けていた。「何だキューか、驚かせないでよね。」
その時「ガサゴソガリバキッゴゴゴドン!」「うわああああっ」魔物が現れた。ロビー「ニーナ!」胸騒ぎがする。「ギュアアアア!」
魔物が襲って来た。「逃げて!」ロビーを取り返しに来た筈のニーナだが、一目散に逃げ出した。
魔物は結構なスピードで歩き、ニーナに詰め寄ってくる。
万事休すか。
逃げるニーナは、祠の様な物を見付けた。
急いでその中に入り込んだ。古ぼけた小さめの一室。ピンと張り詰めた神々しい雰囲気が漂っている。
そこに、伝説のバスターソードみたいな物が置いてある。今は緊急事態だ。戦える武器が欲しい。ニーナはその剣に歩み寄り、手を掛けた。
が、こういう物は限られた勇者にしかそう簡単に抜けないのでは……
予想に反し、スポッと軽い音を立てるように剣は抜けた。「これでロビーを助けるんだ。」
ニーナは意気込み、祠の入り口から、壁で半分身を隠しつつ外を覗いた。
まだ魔物はそこら辺を彷徨いている。
ニーナは電光石火で飛び出した。
不意打ちにも関わらず、魔物は反射的にその、触手のような太い鞭で剣を受けた。
鞭は切れている。
今度は逆に魔物側から猛攻を仕掛けてきた。ニーナは何とか剣で受ける。受ける度にバサバサと鞭が切れて飛ぶ。
しかし太く、長く、何本も付いている鞭は半永久的にニーナを攻撃する。「ニーナ、逃げた方が良いよ。」「私はロビーを置いていけない、こんな所で負けられないんだから。」
何とか猛攻を凌いでいたニーナだったが、ふと気を抜いた瞬間。
鞭を受け、吹っ飛んだ。「ニーナ!」吹っ飛んだ勢いで木の幹に激突した。キューが前に出て庇う。
魔物はまた、ロビーを連れて空に飛んだ。
ニーナは暫くして、精霊の水やりをし、一日を終えた。
その夜、キューが姿を消した。




