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研究報告 「世界の成り立ち」
私達が実在する世界は、次元というある一定の時間軸の中にある、多種多様に存在する世界の一つにしかすぎない。
我々は日々研究を重ねてきたが、ついに今我々が存在するこの次元ではなく別の次元、異次元、さらに言うと異世界というものを創りだす事に成功した。
そして異世界は一つだけではなく、複数創りだす事も確認できた。
我々が異世界の存在を決定づけるものは人間が出来る事の一つである想像力にある。
人類は、自分の欲求が満たされない場合や、こうなりたいという未来への期待を抱き出した場合、我々は想像という幻想を自分の脳内で展開し、非現実的な物語や理想の世界を無数に創り出していく。
今までの考えでは、これらの想像で展開される世界は全て個人的な夢であり、一人の人間を対象としたものでしかなかった。
しかし我々はそこに着目点をおき、人々が脳内で創り出した幻想を全てのを対象とし共有することができないのかと研究を続けてきた。
そしてついに脳内で創り出された仮想世界をデジタル化し、そのデータを本当の世界として展開することに成功した。
デジタル化される世界は、一人の人間が自由に想像する世界であり想像者によっては今の環境とは全く違った世界を創り出す事ができる。
デジタル化が成功するとその異世界への他の人間は意識だけを今存在する世界から転移する事ができ、行き先の異世界の住人となることができる。
これを我々は「MAM」(Moment、Awareness、Metastasis)と読んでいる。
この研究は、今存在する全ての人類に人生の価値を与えることができる素晴らしい成果である。
しかし、世界のデジタル化とMAMの使用には二つのデメリットが存在する。
一つ目のデメリットは、デジタル化を行った後に現れる作用についてである。
想像者が想像した異世界をデジタル化すると、想像者の意識は完了直後に異世界に転移され、我々が存在するこの世界に戻ることは不可能となる。
さらに想像者はその後の生活に必要とされる想像力が大幅に低下する。
そして二つ目のデメリットは、MAM完了後の意識の在り方である。
異世界には自分と同じ人間が存在し、MAMを行うと行き先の異世界に存在する別の自分、言わばもう一人の自分と意識が交換される仕組みということだ。
つまりMAM完了後のお互いの体には、元の自分とは全く違った別の人格が入り込むと考えるといいだろう。
この二つのデメリットの改善を含め、我々のMAMの開発、研究は続行する。
“Cavilon・Adhart”
こんにちは深沼バルキです。
これが二作品目です。ですがこの作品は不定期投稿になります。
研究と聞くとと夏の宿題を思い出します。
これを君に捧げます。
ここまで読んでくださりありがとうございます。