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悪役令嬢は令息になりました。  作者: fuluri
プロローグ
7/66

助けてくれたのは精霊でした。

んー……何だか体がだるいなぁ……。

起き上がりたくない……何でこんなに体がだるいんだろう……。


ぴたっ


あ……ひんやりして気持ちいい……。

誰の手だろう?

私が重い瞼を開けると、私の額に手を当ててくれていたのはクラハだった。


「くらは……手、つめたくてきもちいい……」


うわ、呂律があんまり回らない。

頭もぼんやりするし、熱いし、もしかして熱でも出してるのかな?


「リュート様は魔力切れを起こされて、体調を崩してしまわれたのですよ。普通は数時間ほどで治りますが、リュート様はまだ幼くていらっしゃるので、本日は一日ベッドでお休みくださいね」


あー、魔力切れかぁ……。

何で魔力切れになったんだっけ?

確か昨日は私の二歳の誕生日で、屋敷の皆がお祝いしてくれて、その後初めてお兄様に会って……。

……あ?!


「く、くらは!おにいさまは?!」


そうだ、お兄様を助けようとしてどこかから聞こえてきた声に従って名前をつけて魔力を渡して、それで……えーと。

あ、お兄様が光って眩しさに目を瞑って、目を開けたら穏やかに眠ってるお兄様を見つけて、安心して倒れたんだった!

お兄様はその後どうなったの?!


「リュート様、落ち着いてくださいませ。セイラート様はご無事ですよ。現在もお部屋でお休みになっておられます。リュート様がお願いされて、ハイル様が助けてくださったのでしょう?」


「じゃあ、おにいさまはほんとうにたすかった……?」


「はい。リュート様が頑張られたおかげですよ。セイラート様もこれからは少しずつお元気になられるでしょう」


……本当に助けられたんだ……良かったぁ……!

お兄様が元気になるなら、これからはもっと一緒にいられるよね。

早く無事を確かめにお兄様のところに行きたいなぁ。

ん、でも、ちょっと待てよ?……ハイル?


「……そうだ、ハイル……」


あの時聞こえた声の正体は一体何だったんだろう……?

私はあの時力と助けを求めるのに必死で、聞こえてきた希望に何も考えずに飛び付いたんだけど……。


『呼んだ?ティカ』


「え……?」


私があの声について考え込んでいると、ちょうどその声が聞こえ、目の前に突然光が集まって小さい男の子が現れた。

髪も瞳も綺麗な金色で、きらきらした目で私を見つめてくる。

……これは、妖精ですか?それとも精霊ですか?

あれ、どっちも同じようなものだっけ?

わ、分からなくなってきた……。


『あ、そっか。この姿では初めましてだよね。僕は光の精霊、ハイルだよ。昨日契約してきちんと具現化出来るようになったから挨拶しようと思ったのに、ティカが倒れちゃうから焦った』


精霊だったね。

……あ、意識が途切れる直前に『ティカ?!』って私の名前を読んだのはハイルだったのか!

ってことは、私の願いを聞いてお兄様を助けてくれたのはこの子ってことだよね?

お、お礼言わなくちゃ!


「ハイル、ぼくのねがいをかなえてくれて……おにいさまをたすけてくれて、ありがとう」


『どういたしまして、ティカ。僕の方こそ、契約してくれてありがとう。ティカに名前を貰えて嬉しくてたまらないよ』


……満面の笑みでそう言うハイルは可愛らしいが、聞き捨てならないことを二回も言われたような気がするぞ。

一回目は聞き間違いかと思ってスルーしたけど、二回目はさすがにスルーできないぞ。

……契約って何のこと?!

……はっ!まさか、名前をつけて魔力を渡すのが契約だったりして……?

き、聞いてみよう。


「けいやくって……」


『……もしかしてティカは知らなかったの?精霊に名前と魔力を贈って、精霊がそれを受け取ったら契約が成立するんだよ。だから、僕は今ティカの契約精霊だ』


「そう、なんだ……」


知らぬ間に契約が成立していたらしい。

……ハイルとの契約で良かった、これが悪徳商法とかの契約だったら終わってた。

良い子のみんなは契約するときはきちんと何の契約をするのか確認しないとダメだよ!

……当たり前か。


「……じゃあ、ぼくとけいやくしてくれてありがとう、ハイル」


私がそう言うと、ハイルは花が咲くような笑顔を浮かべた。

すごい癒される……。

ハイルの笑顔を見て癒された私は、『クロヒル』のお兄様のストーリーを思い出した。



ゲームの中のお兄様……分かりにくいからセイラート様にしよう。

セイラート様は幼い頃から体が弱く、外に出ることもあまりできず、いつも部屋で読書をして過ごす毎日だった。

そんなある日、突然体調が悪化して危篤状態になった時、何故か部屋に一人で現れて助けてくれた人がいた。


けれど、恩人だと思っていたその人は、実はセイラート様が体調を崩していた原因であるあの黒いもや……呪いをかけていた張本人だった。命を握られ脅された幼いセイラート様はその人に従うしかなく、その人の手先となって色々な事をさせられた。


そのまま数年が経ち、あまり体に影響がでない程度に弱められた呪いはそのままに、魔法学園へ入学してヒロインと出会う。

何度も会ううちにセイラート様の陰りのある表情が気になったヒロインに何故そんな表情をするのかと問われた。

周囲を欺き続けることに疲れきっていたセイラート様は、もうどうなっても構わないと思って、ヒロインに呪いのことを打ち明ける。


すると、ヒロインは何とか呪いを解こうと奔走し始め、セイラート様は自分のために奔走してくれるヒロインの、自分とは対照的な明るい笑顔に少しずつ惹かれ、親密になっていく。

そして、最終的に呪いをかけた敵対勢力を見事打ち破り、呪いが解けたセイラート様がヒロインに感謝と愛を捧げ、エンディング……というのがセイラート様の大体のストーリー。


……あれ、これでいくと、お兄様のヒロインに惚れるフラグは折れてるよね?

呪いはもうないんだし。

ああでも、敵対する勢力がいるみたいだからそれは気を付けないと。

また呪いをかけられたら意味がないし……。

まあかけられたとしても何度だって私がハイルと力を合わせて解くけど。

っていうか敵対勢力ってお母様を害したのと同じ勢力だったりして……。


まあ今考えてもしょうがないか。

もし分かったとしても今の私じゃ何かをするには幼すぎるし、そもそも何とか出来るならお父様やクラハたちが何かしているはずだし。

お母様が亡くなった時、あんなに悔しそうな顔をしていた大人たちが何もできないなら今出来ることはないってことだ。



その後、微笑みながら私とハイルを見守っていたクラハから精霊のことと、この世界の魔法の仕組みと使い方を簡単に教えてもらった。

説明が終わると、クラハは「そろそろ休まれた方がよろしいでしょう」と言って部屋を出ていき、私は話すだけでも思いの外体力を持っていかれたらしく、すぐに眠りに落ちた。

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