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『影』とお話です。

ちょっと書き直そうと思って手を出したら最後の展開が多少変わっちゃいました…(;´Д`A

「それじゃあ名前はリヒトでいいとして、とりあえずリヒトの実力がどの程度なのか把握しておきたいんだけど、いい?」


「もちろん。何が知りたい?」


そうだなあ。

一先ず何が出来るのかっていうのと、どのくらい戦えるのかっていうのが知りたいかな。

そうしないと1人で潜入させるのとか怖くて仕方ないし。

そんなようなことを言うと、リヒトは考え始めた。


「何が出来るのか、ねえ…。色々あるけど、とりあえず『影』として活動するために必要なことは生まれた時から全部叩き込まれてるから、そこは安心していいよ。後は…闇魔法が得意とか、毒は効かないとか?」


戦闘も割と得意だし。

そう言って笑ったリヒトを見て、そういえばお父様が「経験は浅いが潜在能力は高い」って言ってたな…と思い出す。

ふむ、経験が浅いと言うことは数をこなせば公爵家の情報も持ってこれるくらいの腕になるのだろうか?

それとももう既にそれが出来る実力があるんだろうか?


「毒が効かない?」


「そう。慣らしてあるからね〜」


慣らしてあるって…。

あー、日本にいた頃に忍者とかが小さい頃に微弱な毒を継続的に摂取していって、徐々に毒を強くしていくことで体に慣らす…みたいなことをしてたって聞いたことあるような。

そういうことをしてきたのかな。

…なんか、壮絶だな…。


「…そっか。じゃあ、どの程度の情報なら確実に傷一つ負わずに持ち帰る自信がある?」


「なかなか難しい質問だね」


うーん、とリヒトはまた顎に手を当てて視線を上にやりながら考えだす。

答えづらい質問なのは分かっているが、自分で持ってるイメージというものは大切だ。

そのイメージと実力が合致していないと、大変なことになる——特に、『影』のような危険な仕事では。

それに、傷一つ負わないというのは私にとって譲れない一線である。

攻略対象達は心配だけれど、その情報を持ち帰るためにリヒトが傷つくなどもっての他。

だけど『影』の仕事を叩き込まれてきたというのであれば、全くもって無理な仕事ならともかく、ちょっと怪我する程度の仕事なら何も言わずに引き受けてしまいそうだから。

そんなことになる前に、釘を刺しておかないと。


「まあ、大抵の情報はやる気出せば持って帰れるけど…傷一つ負わないとなると…公爵家や王家の情報は厳しいかな」


やっぱりそうか。

まあこの幼さで大抵の情報なら持って帰れると豪語するあたり、自分の実力に自信はあるんだろうけど…やる気を出せば、ってのが気になるな。

まあ最初っから公爵家や王家に情報を取りに行かせるような鬼畜行為をするつもりはないから、良いんだけど。


「ふむふむ。じゃあその辺りはひとまず避けよう」


私がそう言うと、リヒトは不思議な顔をしてこちらを見てきた。

…?何か疑問でもあるのだろうか。


「どうしたの?」


「色々質問に答えといてなんだけどさ…リュート様の年齢で情報収集って必要なの?聞いてる感じだとリュート様優秀そうだし、何でもそこそこやるだけで人並み以上に出来ちゃうタイプでしょ?だったら、社交界デビューも当分先なんだし、今は必要なくない?」


それに、なんだったらリュート様に気に入られようと自ら進んで情報仕入れて持ってくる人とかもいそうだし。

リヒトはそう言いながら手を頭の後ろで組み、ねえ?と視線を向けてくる。

まあ普通に考えたらそうだよね。

私だって自分の命の危険とか攻略対象達の事がなかったらこんなことしようとか思ってないもん。


「あー…」


「あと、リュート様って本当に4歳?僕、大人とあんなに違和感なく話す4歳児って初めて見たんだけど」


げ!!

やっばい、最近自分が4歳児だってことすっかり頭から抜け落ちてた!!

うわどうしようやっちまった感が…。

とにかく何か言い訳しないと…でもなんて言えば…。

そ、そうだ、この家のせいにしよう!


「僕の年齢は4歳であってるよ。子供っぽく見えないのはこの家の教育のせいと、セイル兄様以外に子供がいなくて大人とばかり話していたからじゃないかなあ」


私は出来るだけ動揺が伝わらないよう、少し苦笑している風を装って答える。

リヒトはふーん、と一応納得してくれた様子だ。

この分だと、恐らくそこまでの疑念を持っていたというわけではなく、ただ何となく思ったことを口に出してみただけなのだろう。

あ〜、ドキドキした…全く心臓に悪い。

これからは初対面の人に会うときには気をつけないと。

まあでもリヒトに対してはもうバレてるんだしいいよね⭐︎


「それと情報収集はね、ちょっと定期的に知りたい情報があるんだ。だからお父様に頼んでその手段を貰ったんだよ」


「知りたい情報って、どんな?」


「…特定の人たちの、近況。取り巻いてる状況だったり、周りとの関わりの様子だったり、本人の心境だったり…そういうことを調べて欲しいんだ。どんな些細なことでも構わないから」


「…そんなこと?何かあった場合、その証拠とかは集めなくていいの?証拠がないと追い詰められないよ?」


「ああ、追い詰めたい訳じゃないんだ。むしろその逆というか。証拠に関しては、必要だと思ったら集めてもらうことにするよ」


「分かった。でも逆って…つまり、助けたいってこと?何でまた…」


「んー…簡単に言えば、自分のためかな?まあ、そうすることで僕にメリットがあるって考えてくれればいいよ」


「ふーん…まあ、いいや。それで、その特定の人たちって、具体的には?」


「殿下2人が学園に同時に在学している間に学園にいる年齢の、公爵家の子息たちだよ」


「…それ、バレたら結構やばいんじゃない?公爵家同士って、基本的に不干渉を貫いてるはずだよね?まあ水面下の攻防はあるんだろうけどさ…」


「そうだね。僕は弱みを握りたいわけでも恩を売りたいわけでもないけれど、バレたら問答無用で家同士の戦争の火種になりかねない」


「…分かってるのに、それをやるの?」


「うん。本当はそこまでやるつもりなかったんだけど、やれることがあるならやっておきたいと思って。…もう、エルクの時みたいにはさせたくないから」


最後の一文はエルクを初めてみたあの光景を思い出して、自分でも聞こえないくらいの呻くような声になってしまったから、多分リヒトには聞こえていないと思う。

だけど、リヒトは何とも微妙な顔をしてこちらを見てきた。

…あんな小さい声が聞こえたの?

いや、リヒトは情報収集のスペシャリストなんだから、聞こえてもおかしくないのかもしれない。


「…リュート様はさ、なんて言うか…頑張り屋さんなんだね」


「え?」


…頑張り屋?

そうかなあ、私割と休みたいな〜とかお忍びで町の方に降りてみようかな〜とか考えてるし、勉強とかは自分でやってるっていうよりはそう決められてるからやってるって感じだし…。

それに今回の情報収集だって口ばかりで、実際に頑張るのはリヒトだ。

全面的にお任せ状態のくせ頑張ってるなんて口が裂けたって言えるわけがない。

だから、そんな頑張ってるつもりはないんだけど。


「だってさ〜。弱みを握りたいわけでも恩を売りたいわけでもないなら、リュート様に何のメリットがあるのかは分からないけど、それってリュート様がやらなきゃいけないことなの?本来なら本人がどうにかするべき問題でしょ?」


「…本人ではどうにもならない問題は誰かが干渉しないと解決しないでしょう?」


「だとしても、少なくとも現時点で直接関わりのないリュート様がやらなければならない問題じゃない。それなのに、そんな危ない橋をその人たちの為に渡ろうとしてる。…ほらね、頑張り屋さんじゃん」


…リヒトの言うことは正しい。

ゲームのことを知らないのだから、私にとってのメリットが死亡フラグをへし折れることだなんて想像がつくわけない。

とはいえ、一つ間違っていることがある。

私の行動理由は、『人のため』なんてものじゃない。


「…その人たちのためなんかじゃないよ。全部自分のため」


自分が死にたくないがためにフラグをへし折りたくて情報を集めるのだ。

これが自分のためでなくて何だと言うのだろう。

そのついでに、攻略対象達が苦痛な体験をする期間を極力短く出来るというのならそれはその方がいいだろう、というだけの話。

人のためというよりは、単なるエゴなのだ。


「でも、そうだね。全部自分でやることしか考えてなかったけど…リヒトの言う通り、周りの人に情報を流して動かすとか…他にもやりようはあるかもしれない。もっと考えてみることにするよ」


「…僕が言ったのはそういうことじゃないし、僕にはそこまでして頑張る理由がちょっと分からないけど…まあ、いっか」


ぽりぽり、と頰を掻きながらリヒトが言った。

あれ、違ったの?

そう思ってさっきのリヒトの台詞を思い返していると、リヒトはニッと悪戯っぽく笑って唐突に爆弾を落とした。


「とりあえず、リュート様がお人好しってことは分かったよ」


「はっ!?お人好し!?」


お人好しなんて呼ばれると思っていなかった私が驚いた顔を向けると、リヒトは吹き出した。

ちょっと、失礼じゃない!?

人の顔見て笑うとか…!

って、指を差すな、指を!


「…ぶはっ!リュート様、顔、顔!」


「………………」


そう言いながら笑い転げるリヒトをジト目で見つめること十数秒。

ようやく笑いが収まってきたものの、まだ笑いのツボから抜けきることが出来ていない半笑いのリヒトと視線が合うなり、ふーんと膨れっ面で視線を逸らす。

…あれ、さっきも同じやりとりをしたような。

すると「あ、やば」みたいな顔をしたリヒトが、笑いすぎで目尻に浮かんだ涙を拭いつつ近寄ってきた。

くそう、この引き際を分かってる感じ!

何でうちの男どもはこんな女たらしばっかりなんだ…!


「リュート様〜、ごめんって!」


…と、拗ねてますよ感を全面に出している癖して全く別のことに気を取られていると、思考の隅で困ったように私の名前を呼ぶリヒトの声が聞こえた。

その声にハッとして意識を戻すと、ごめんね?とまたも上目遣い&小首を傾げるダブルパンチを繰り出してくるリヒトがドアップで映った。

…かわいい。

ていうか近い。

けどかわいい!

…だ、だからってそれで毎回私が許すと思ったら大間違いなんだからね!


と、思いっきりリヒトのあざとかわいさに負けながらも、必死に抵抗してそのままそっぽを向いていると、無視されたリヒトの頭にまた幻覚のうさ耳が見え始めた。

うっ、と心が揺らぐのを自覚しつつも、ポーカーフェイス、ポーカーフェイス…と必死に自分を押さえ込む。

だってここで甘やかしたらダメな気がするんだもん…1回甘やかしちゃったけど!

その間にもどんどんどんどんへたっていくうさ耳。

そっぽを向いて見ないようにしていたのに、ちらりと見てしまって…後悔した。

…あ、だめだ。

私、このうさ耳には勝てる気がしない!


「…分かったよ、もうっ。許すけど、今回だけだからね!」


私の言葉を聞いて、ぱっと明るい笑顔になるリヒト。


「わーい!」


そう言ってがばっ!と勢いよく抱きついてきた。

その変わり身の早さにやれやれ…と思いながらも、まんざらでもない気持ちで笑っていると、不意に。

背後でカチャッ、と扉が開く音がした。


「お邪魔するよ、リュー…ト…」


そ、その鈴がなるような、麗しく優しい天使の御声は…!


「セ、セイル兄様!?」


慌てて振り向くとそこには、我が家の天使ことセイル兄様が顔を俯かせ肩をわなわなさせながら立っていらっしゃったのであった。


次回、修羅場です⭐︎←

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