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セイル兄様の癒しと極上の微笑みです。

ハイルのお陰でなんとかお風呂を済ませることができ、服を着終わったところで魔法を解除した。

魔力消費は大したことがなかったので、体に負担がかかってもいないし倒れる心配もないし、セイル兄様のマジギレ姿は見ずに済むはずだ。

そのことに心の底から安堵しつつ、髪を乾かしてエルクと一緒にセイル兄様の元へ向かう。

さっきの心労で地味に疲れたし、セイル兄様に癒されたい。


「…あ、二人とも。そろそろ昼食の時間だって。食堂に行こうか」


部屋を出てセイル兄様の部屋へ向かっていると、セイル兄様がこちらに歩いてきた。

優しい笑顔を浮かべて話しかけてくる姿になんだか安心する。

さっきまで一緒だったけど、会いたかったよセイル兄様!


「…?リュート?どうしたの?」


…はっ!

あまりの安心感でいつのまにか抱きついていた。

少し戸惑ったようなセイル兄様の声で我に帰ったものの、そのままでいたくてぎゅーっと力を込める。

いきなり抱きついた挙句離れようとしない私に不思議そうにしながらも、手馴れた仕草で抱きしめ返してくれるセイル兄様。

…ああ…癒される…。

と、無意識でセイル兄様に抱きついた時に手が離れたのか、エルクが所在なさげに立っているのに気がついた。


「エルク、おいで」


セイル兄様から離れ、エルクをこちらに呼ぶ。

遠慮がちに近寄ってきたエルクを、さっきセイル兄様にしたようにぎゅーっと抱きしめた。


「…?!」


エルクは驚いたように私の腕の中で肩を跳ねさせた。

抱きしめられるのも初めてかな?

なら、これから嫌ってほど抱きしめてあげなくちゃね!

と意気込んでいると、横から何かに包まれる。


「ふふ、なんだかよく分からないけれど、僕も」


そう言ってウインクしながら私とエルクを一緒に抱きしめる。

…くっ、セイル兄様がかっこかわいすぎて鼻血が出そう…!!

さすがセイル兄様、もう天使通り越して女神に見えてきた。

しばしそのままお互いを抱きしめ合う時間が続く。

エルクは戸惑っているけど、頰が少し紅潮してまんざらでもなさそうな感じなので喜んでいるのだと思っておこう。

エルクの表情が乏しいのは多分虐待のせいだと思う。

だけど隣で私やセイル兄様がたくさん笑えば、もしかしたらエルクが釣られて表情が戻っていくかもしれないから、私たちは何も言わずに笑っておこうと思う。


「…さて、兄弟の親交を深めるのもいいけど、そろそろ行こうか。父上をお待たせするわけにもいかないしね」


苦笑しながらセイル兄様が言う。

うん、冷静になって考えればこんなところで何やってんだって感じだよね。

ちょっとセイル兄様に癒されたい願望に振り回されすぎました…反省。

…あ、お父様といえば…。


「セイル兄様、忘れてましたけどお父様にスムージー作りましたよね?あれってどうなりました?」


なんか色々あって記憶の彼方に飛んじゃってたけど、そもそもあの日はお父様がすごく健康に悪い生活をしてたからそれを改善しようとしてたんだよね。

んで、スムージーは一応完成したはず。

けど私はその後ハイルと同調を始めちゃったから、あれがその後どうなったのか分からない。


「ああ!リュートが意識を失った後、料理長に後を頼んだから僕も詳しくは知らないなあ…」


「そうですか…。じゃあ後で聞きに行きましょう!」


「そうだね」


そんなことを話しながら歩いていると、あっという間に食堂に着いたので中に入る。

…お父様はまだ来てないみたい。

今日の席はセイル兄様が正面に座るから、エルクは私の隣でいいかな。

エルクに席を案内していると、お父様が到着した。

私たちが全員席に着いたのを見計らい、料理が運ばれてくる。

エルクは作法とか知らないので、最低限だけ教えつつ食べさせてあげる。

本当はそんなことをするのはマナー違反なのだけど、誰も咎めはしない。

全部食べ終わり、デザートタイムになる。


「…あれ、これって…」


今日のデザートは何かな〜と思いながら待っていたら、綺麗なグラスに入れられた薄ピンク色の液体が出てきた。

…あれって、スムージー?

でも、色が…?

頭にはてなを浮かべていると、料理長が出てきた。


「失礼いたします。旦那様、こちらはリューティカ様が旦那様の御為に考案された『スムージー』というものにございます」


「…リュートが?」


お父様に視線を向けられたので、コクンと頷く。

まあこれは私が教えたやつじゃなくて料理長がフルーツのみで作ったやつっぽいけどね。

あの後どうしたのか聞くつもりだったけど、料理長が色んな種類を考えてくれてたみたいだ。


「お父様があまりに不健康な生活を送っているので、せめて栄養を摂っていただこうと作りました。飲み物なので、これならばお仕事が忙しくても大丈夫だと思います」


私の言葉に、お父様は意表をつかれたような顔をした。

作るって言ってあったのになんでそんな顔をするんだろうと思ってお父様の顔を見ていると、お父様が一瞬、ほんの一瞬だけ微笑んだ。


「…そうか。本当に作ってくれたのだな」


お父様にしては珍しく、素直に声に喜色が現れている。

それを感じ取って、私とセイル兄様はバッと顔を合わせた。

私が表情で『やりましたね、セイル兄様!』と言うと、セイル兄様は『父上が喜んでくれて良かったね、リュート!』と言う。

エルクはそんな私たちを見て首を傾げていた。

とりあえずかわいいので頭を撫でる。


「…これからはこれを城に持って行くとしよう。…ありがとう、リュート、セイル」


そう言って、お父様は大切そうにグラスを眺めるのだった。



…それにしても、やばかった。

何がって、お父様の微笑みの威力が。

あんな微笑み向けられたら女の子はみんな腰砕けだよ!

さすがは『リューティカ』と『セイラート』のお父様。

攻略対象級の顔の良さに年齢相応の深みが加わってもう無敵状態でした。

永久保存ものだったね、あれは。


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