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ハイルとの繋がりです。

大変…大っっっ変お待たせいたしました(T ^ T)

もう展開を悩みに悩んで何度変えたことか…。

そうこうしてたら三ヶ月も経っちゃっててカレンダー見てびっくりしました。

なんとか書き上げたので今日は一気に投稿させていただきます!

では、お楽しみください↓

『ティカ、聞こえる?』


「…ハイル?」


突然ハイルの声と魔力を感じて、びっくりして辺りを見回しながら返事をする。

けれど、近くにハイルの気配はしない。

空耳かと思い、こちらを訝しげに見ているセイル兄様と料理長に何でもないと伝える。


『ティカ?』


2人が不思議そうにしながら話し合いに戻った直後、またもやハイルの声が聞こえた。

こんなにはっきり聞こえるということは、空耳ではなく実際に聞こえているのだろう。

けれど、周りを見回してもやっぱりハイルの姿はない。

私はその事に軽く混乱したらしく、ハイルはお父様の近くにいるままで声だけを送ってきているのだ、と思い当たるのに数秒かかった。

…そうだ、魔力を乗せないとハイルが遠くにいる時は声が届かないんだっけ。


『ハイル、返事して!』


声に魔力を乗せ、ハイルに再度呼びかけて返事を待つ。

すると、待ち構えていたようにすぐに返事が返ってきた。


『ティカ!良かった、声が届いたんだね。返事がないから心配したよ』


『ごめんね、すぐに返事できなくて。それでハイル、どうしたの?もしかして、お父様に何か…』


ハイルの声からはそういう焦燥も緊迫も感じられないから大丈夫だとは思うけど…。

でも、万が一ということもある。

そう思って、恐る恐るハイルに尋ねると、あっけらかんとした明るい声が返ってきた。


『違うよ。僕はずっとフィレンツのそばにいるけど、今のところは何もないから安心してって伝えようと思っただけだよ』


どうやら、ハイルは私を安心させようと安全報告をしてくれたらしい。

ハイルの声が聞こえた瞬間から無意識のうちに緊張して強張っていた体から力が抜けるのが分かる。

それにしても、何もないのか…。

やっぱり、あの不安感は私の勘違いだったのかな。

それなら嬉しいんだけど。


『そっか。良かっ…』


『……!ティカ、安心するのは早かったみたいだ』


私が安心しかけた次の瞬間、ハイルの声が一気に緊張感を帯びた。

その声に、嫌な予感しかしない。


『…ハイル?どうしたの?!』


『ティカなら僕と感覚を繋げて僕が見てる景色を見られるはずだ。僕との繋がりを強く意識してみて!』


繋がりを強く意識する…って、どうすればいいの?!

どうせならもっと細かく詳しく教えてよハイル!!

早くしないと、手遅れになるかもしれないのに!

…って、そんな文句言ってないで早く考えないと!


(ハイル…ハイルとの繋がり…!)


一生懸命考えているけれど、焦りが邪魔をして一向に考えがまとまらない。

…どうしよう、このままじゃ…!

最悪の結末が脳裏をちらついて、焦れば焦るほど考えはまとまらなくなっていく。

焦燥と自身への不甲斐なさから涙目になりながらもどうにか集中しようと努力していると、不意に私の両頬がふわりと包まれた。


「…リュート、落ち着いて。大丈夫だから」


「セイル兄様…」


セイル兄様は安心させるようにしっかりと私の目を見て、静かに語りかけてくる。

ハイルの声が届いていないセイル兄様は、私の様子を見ても状況が分からなくて不安なはずなのに。

でも、セイル兄様の冷静な声を聞いて、少しだけ平静に戻れた気がする。

…落ち着かなきゃ。

頰に触れているセイル兄様の手の温かさを感じながら、ゆっくりと深呼吸をする。


「……もう大丈夫です、セイル兄様」


「…うん。さっきより落ち着いたね」


私の顔を見て落ち着いたことを確認し、柔らかく笑ったセイル兄様を見て、私も少し笑う。

やっぱりセイル兄様には敵わないなぁ。

…さて、落ち着いたんだから考えないと。

一応深呼吸をしている間にいくつかやり方候補が浮かんではいる。

一番出来る可能性の高そうなやつからやってみよう。


「セイル兄様、後で事情を説明するので、今は見守っていてください」


「うん、分かった。ゆっくりでいいからね」


そう言いながら、セイル兄様の手が私の頭をさらりと一撫でして離れていった。

それに少し名残惜しさを感じつつ、私は考えに集中する。

…以前、クラハから契約者と契約精霊とはどんなに遠くにいても細く伸びる魔力で繋がっているのだ、と聞いた覚えがある。

イメージとしては赤外線や光ファイバーのような、ごくごく細い光の糸で繋がっている、という感じだ。

…それなら、声に魔力を乗せて遠くにいるハイルに声を届ける感覚を応用して、いつもはあまり意識していないハイルとの魔力的な繋がりをきちんと意識してみたら、いけるんじゃないだろうか。


(…まぁ理屈は後でいいや、とにかくやらないと!)


考えを中断し、意識を集中して自分の魔力の流れを感じる。

そこから細く遠くに伸びていっている魔力を探し出し、慎重に辿っていく。

…やってみて分かったけど、これ、めちゃめちゃ集中力と精神力が必要な作業だな。

集中力がないと、こんな細い魔力の繋がりを辿っていくなんて出来ないし、精神力がないと、耐えきれなくなって途中で一気に意識が自分の所に戻ってくる。

地味だけど結構きつい。


(ハイル、届いて…!)


いつのまにか額から玉のような汗が滴ってきていた事にも気がつかず、私はハイルに呼びかける。

きっとあと少しで届くはずだと信じて、何度も何度もハイルを呼んでいると、微かに声が聞こえた気がした。


(ハイル…?聞こえてるの?返事して!)


(……カ……ィカ……)


今度は確実に聞こえた。

もう少しでハイルに届くはずだ。

お父様に何が起こっているのかも、ハイルに繋がれば分かるはず…!


(ーーーーハイル!!)


繋がりそうで繋がらないもどかしさから、一際強くハイルを呼んだ瞬間、今まであった薄い膜が破れたような、不思議な感覚があった。

ハイルの存在がより深く感じられ、私とハイルの感覚が繋がったとはっきり分かる、そんな感覚。

今までよりもずっとずっと絆が深くなった気がする。

そんな感慨に浸っていると、ハイルの声が聞こえてきた。


(…ティカ!良かった、繋がった!今から僕の記憶を見せる。視覚とか聴覚とかも全て繋がるから!)


分かったと返すより早く、ハイルから記憶が流れ込んでくる。

視界が光で白く塗りつぶされ、視力が戻ると同時に記憶が再生され始めるのだった。


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