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騎士になった少年  作者: ルネ
第一章 幼年期編
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第三話 父との稽古

「ん……」


目が覚めたらエヴァリーナに膝枕されていた

この世界に来たばかりの頃だったら少しは照れたりしたかもしれないが、さすがにこういうのはもう慣れた

五年もこの二人の子供として過ごしていれば嫌でもこういう場面に出くわすからね


「あ、エルヴィス。大丈夫?無理しないでって言ったのに、もう」


エヴァリーナが微笑み、僕の頭を撫でながらそう話しかけてくる


「ちょっと兄としての威厳をと……」


「まったく、それで倒れてたら意味ないでしょう。アーシアも心配してたわよ」


「え、ほんと?うわぁ、逆に恥ずかしいとこ見せちゃったなぁ」


僕はそう言って肩を落とす。妹に心配をかけることになるとは


「でも凄いじゃないエルヴィス。普通あなたくらいの歳で150回も振ってられないわよ。私だって出来ないと思うし」


エヴァリーナはそう言ってまた僕の頭を撫でる

母さんに撫でられると安心する感じがしてなんだか好きだ




「はっはっは!200は流石にまだ無理だったか!わりぃ!」


出たなクソ親父


「ほんとに死ぬかと思ったよバカ!」


「悪かったって。でも俺はエヴァリーナの言うとおり途中でやめても良いって言ったぞ一応?」


「それはーまぁ僕が無駄な意地を張ったのも悪いけどさー」


「だろ?」


「だろ?じゃなぁい!」


「機嫌直せって。とりあえず明日から俺は昼間王城に仕事に行かなきゃならなくなるけど、そうだな…一日50回。俺がいない時にも自主的に毎日それだけはやれ。それくらいなら大丈夫だろ?慣れてきたら増やすけどな」


50か。まぁ出来ない数字じゃない


「まぁそんくらいなら倒れ無さそうだし頑張ってみるよ」


この位で剣の修行は辞めるつもりはない。こんな最初の最初から根を上げるほど僕はやわじゃないぞ


「よし、頑張れよ。立派な騎士になれよ、エルヴィス」


「うん!」


こうして僕の騎士への道が始まった




それから毎日欠かさずに50本、素振りをやり続けた

家の中にはもう読む本もないのでいい暇つぶしにもなる

前の人生では本ばかり読んでいたので今度は体育会系になってみようかなっていう思いもある


アーシアはいっつも僕が素振りをする時には一緒に庭に出て僕のやってるのを見ている

退屈じゃないのか?って聞いてみたこともあったけど見ていたいらしい。

実際、目を輝かせながら僕の練習を見ているのでまぁつまんなくはないのだろう。何が楽しいのかは分からないが

そんな日々が何日か続き、ダニエスの仕事が休みの日になった


この数日間の間にだいぶ剣の扱いにはなれたと思う。

僕の手のひらはマメとか傷とかでボロボロだ

まだまだ50本の素振りはキツいが体が成長すればもっと楽にこなせるようになるだろう

……あの筋肉ダルマ、俺まで筋肉ダルマに育てる気じゃないだろうな?


「おい、なんか変な事考えてねぇか?」


「気のせいだよ」


「なら良いけどよ……」


この人、意外と鋭いからさらに厄介


僕は今、今日の分の素振りを終えて休憩中だ


「はい!お兄ちゃんお水持ってきた!」


「ありがとアーシア」


アーシアの持ってきた水を受け取り、胃に流し込む

水分を取って暫く庭に寝っ転がっているとようやく落ち着いてきた


「もう息は整ったか?」


「うん、だいぶ。やっぱり50回は疲れるよ」


「将来は100や200はやってもらうつもりだけどな。まぁ先のことはいい。折角俺が休みなんだ。ちょっと打ち合おうぜ」


……は?剣を握って数日しか経ってない子供に何をする気だ?この騎士団長様は?弱いものいじめが大好きな感じか?


「そんな明らかに嫌そうな顔すんじゃねぇよ〜傷つくだろ?別に本気を出したりしねぇよ」


「はぁ……絶対本気出さないでよ?」


「わーったわーった。ほら、立てよ」


僕は渋々起き上がり、剣を構える


「なかなか様になってんじゃねぇか。よし、とりあえず打ってきてみろ。俺からは手出ししないからよ」


「よし、じゃあ行くよ!やあああああっ!」


僕は木剣を握りしめ、ダニエスに向かっていく

そして今までやってきた素振りのように剣を縦に振り下ろす

しかしそれは簡単にダニエスの木剣に受け止められる


「ガキにしてはなかなかの太刀筋だぞ。いい調子だ。」


すぐに1歩退いて、もう1本打ちに行くがまたも弾かれる

やっぱり無理ゲーでしょこれ


「父さん、満足した?流石にまだ父さんとやるの早いと思うんだけど」


「そうかもなあ。最後に1回だけ。構えろ」


「はーい」


僕は再び木剣を構え、ダニエスを見据える

そしてさっきまでと同じように打ち込むためにダニエスに向かって走り出そうとしたその時

目の前にいたはずのダニエスの姿が消えた


同時に僕は本能のままに構えていた木剣を全力で左に振る

なぜだか何となく左に剣を振らなければまずい気がした。何かが自分の危機を知らせてくれているかのように

咄嗟に降った木剣を持つ手にとてつもない衝撃が走り、握っていた木剣は高く打ち上げられ、僕は衝撃で少し吹っ飛ばされた


なんだ!?何が起きた!?

呆然とする僕の目の前にいたのは同じく呆然としているダニエスだった


「父さぁん?」


若干キレながらダニエスをじっと見つめる

本気は出さないって言ったじゃないか!3歩歩いたら忘れるのかこいつは!


「あ、いや、すまん。寸止めするつもりだったんだ」


「出来てないじゃん!」


「いや……。ちょっと驚きすぎて剣の前で止めらんなかったわ。わりぃ」


わりぃ、じゃなぁぁい!


「ところでエルヴィス、お前どうして俺の剣に反応できた?一応寸止めの直前までは本気で剣を振っていた。まだお前が反応できる物じゃなかったはずだぞ」


「やっぱり本気だったんじゃんか!反応できたのは勘だよ勘!なんとなくこっちからなんかやばいのが来る気がするって思ったから受け止めようとしただけ!」


「……ははっ!自分の子供に勘だけで剣筋を悟られるとはな!おれもまだまだだな!」


ダニエスは豪快に笑い出す

こっちは怒ってるんだぞ!笑うんじゃない!空気読め!


「で?なんでこんな事したのさ。父さんと稽古する度吹き飛ばされなきゃなんないの僕?」


「あー、エルヴィスにはこの速さに慣れてもらおうと思ってな。いつかお前がこういうのに対応出来るように。まさか最初から反応されるとは思ってなかったわ」


「じゃあもうやんない?」


「いややる。今回のが偶然かもしんないしな」


「やっぱり……。今度からはちゃんと寸止めしてね」


「努力する。ってか言っとくけど痛みを知らないまま強くなるなんて出来ないからな?まぁそれを知るのはもっと先でいいんだけども」


既に素振りで手のひらがだいぶ痛いのだが、ダニエスはそういう事を言っているのではないだろう。

僕の目指す騎士という職は戦う戦士のことだ

戦いの恐怖を、痛みを、苦しみを知り、乗り越えることが出来なければ務まる職ではないのだろう


「たまに正論言うなぁ父さんは。確かにそれはそうだね。覚悟しておくよ」


「たまにとは何だたまにとは。いっつも正論しか言ってないだろ」


「父さん、そういうの頭悪く見えるからやめた方がいいよ」


「何っ!ほんとか!」


ダニエスが驚きを顕にする。知らずにやってたなら本物だな


とにかく今回のことであの直感は何だったのかを知る必要があると思った。偶然ならそれでいいのだがなんかの能力だったりするなら使いこなせるようにならなければ。異世界だしそういう事がないとも言いきれないしな

異世界ってそういうもんでしょ?いや小説の中でしか見たことないけどさ

使えるはずの力を使えずに何かを失うなんてことあってはならない。それでは前と何も変わらないから




ちなみにアーシアがエヴァリーナに「お父さんがお兄ちゃんを吹っ飛ばしてた!」とチクったため、ダニエスは説教を食らっていた

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