第二十話 奉闘祭
午前中の簡単な授業を聞き終え、昼休みが訪れる
「あーやっとご飯食べられる!アル!食堂行こう!」
「お前先生に呼ばれてただろ……」
「ハッ!そういえばそうだった!くそ、なんで僕だけなんだよ……」
「日頃の行いだろ。ほらさっさと行ってこい。」
アルはそう言って手をパタパタさせる
「わかったよもう……」
全く、いい加減何か食べないと死ぬぞ。死んじゃうぞ。
呼ばれたのもどうせ遅刻のことだろうし行くのすごい嫌だ……
僕は重い足取りで職員室に向かった
「失礼しまーす」
「お、来ましたねエルヴィス君。こっちこっち」
職員室の中に入るとディアナ先生に手招きされた。
僕がディアナ先生の元に向かうとそこには先客がいた
「あれ?ラティア?どうしたの?」
「……エルヴィスと同じ」
「え?ラティアも遅刻したの?」
「……なんのこと?」
ラティアは僕の言葉に首を傾げる
あれ?なんか話が噛み合ってない感じ?
「え、だって僕、遅刻の件で呼ばれたんだよ?」
「誰もそんな事言ってませんよ……。まぁ確かにその件でも呼びたしたい気持ちはありますが今回は違います」
え?違うのか?
「じゃあどうして僕は呼ばれたんですか?」
「エルヴィス君、奉闘祭って知ってますよね?」
「いえ、知りませんけど」
「もっと学校の行事とかに興味持ってくださいよ……。奉闘祭っていうのは毎年この学校でやっている武闘会みたいな物です。まず各学年で優勝者を決めてそれから学年の代表同士で戦います。」
なるほど。そんなのがあるのか
しかし一つ疑問点がある
「あの……それ六年生の優勝決まってるようなものなんじゃないですか?僕達子供は魔力量が成長途中だから歳に左右されるし体の大きさだって違うじゃないですか」
「そうですね。いっつもだいたい学年の数字の大きい方から順位がついていきます」
「えぇ……、やる意味あるんですかそれ……」
出来レースもいい所じゃないか
「うーん、まぁそれでも毎年の行事なので……。戦の神であるファリマン様に闘いを献上するという意味もありますしね」
「まぁ別にいいんですけど。それで、その奉闘祭がどうしたんです?」
「エルヴィス君とラティアさんが2組の代表に決まったので色々と説明が必要かと」
「へ?なんも聞いてないんですけど……」
「まぁ今日の朝決まりましたしね。問題ないでしょうお寝坊さん?」
「う……」
それを言われると何も言い返せない
「分かりましたよ……。やりますよ」
「ありがとうございます!それでは諸事情を説明しますね」
「諸事情?何か普段と違うことでもあるんですか?」
「はい。何故か分かりませんが今回の奉闘祭には国王様が見学にいらっしゃいます」
……聞いてないんですけど?ぜんぜん聞いてないんですけどそれ?
「……暇なんですか?うちの国の王様は?」
「知りませんよ。まぁそういう訳なんでよろしくお願いします。活躍してくれたら君たちの成績も私の評価も上がるみたいなんで」
それが本音かっ!
「まぁ良いですけど……」
「私のお給料の為に頑張って下さい!」
とびきりの笑顔でこんな事言われたらなんかもういっそ清々しさまで感じるよ……
「分かりましたって。話はそれだけですか?ご飯食べに行きたいんですけど……」
「あ、もういいですよー。ラティアさんもよろしくお願いします」
「……りょうかい」
「ラティア、食堂行こ」
「……うん」
僕達は空腹を満たすため、職員室を後にし、食堂へと向かった
「おうエルヴィス。きっちり絞られてきたか?これにこりたら明日からはだな……」
食堂に行くとアルとリンダが僕たちの分の席をとって待っていてくれた
「別に絞られてないよ?リンダから話聞いてないの?」
「は?聞いてねぇんだけど。どういう事だ?」
「あぁ、2人はあれよ。奉闘祭の代表に選ばれたのよ」
「うっわマジかよ!くそ、俺が出たかったよ!エルヴィスはともかくラティアより弱そうに見えんのか俺!」
「……失礼。アルベルトなんかに負けるほど落ちぶれてない」
ラティアがむ~っと頬を膨らませる
「ラティアさんも結構失礼ですよそれ!?」
「アル、あんた知らないの?ラティアは学年一の魔力量らしいわよ?」
「うっそぉ!?まじで!?」
「……失礼」
「いてぇ!ちょっ、ラティア、いてぇ!」
ラティアがアルの脛を蹴りまくる
「アルが悪い」
「そうね、アルが悪いわ」
「ラティアさんほんとすいませんしたぁー!」
脛を蹴られるのって地味に痛いんだよなぁ……。
ふふふ、アルざまぁ
その日を境に僕とラティアの奉闘祭に向けての特訓が始まった。
奉闘祭はだいたい1ヶ月後。それまでにチームワークとか連携とか色々調整しとかないといけない
練習はアルとレガルドに手伝って貰った。アルは来年こそ選ばれる様にと剣と魔法の練習をよくしているからついでに相手してもらっている
レガルドは毎晩前庭にいるので、その時にとっ捕まえている
レガルドも8組の代表に選ばれたらしい。まぁ腐っても副団長の息子。結構強いほうらしい
なので僕達はお互いのパートナーを連れてきて練習する様になった。
練習の場所は闘技場を借りている。
奉闘祭まで選手には闘技場の使用権が与えられるらしい。
昼間は上級生が使っていることが多く、僕達1年生はなかなか使えないのだが、夜は空いていることが多い。
なので僕達はその時間を狙って闘技場を利用している。
週末はスフォルテス家に帰って父さんや衛兵の人たちに練習を付き合ってもらったりもした
そんな努力のお陰で最初はグダグダだった僕とラティアの連携も今ではちゃんと息が合うようになった
そもそもよく考えれば簡単な事なのだ。
いつも相手の動きを読んで戦っているのだ。ならばそれを応用して味方の動きを読みながら、それにあわせてサポートしてあげれば良いだけなのだ。
最初の週末にダニエスに教えて貰ってそれに気づかされてからは早かった。
まぁこれは息があっていると言えるのかどうか疑問ではあるのだが。
そんな生活を繰り返しているうちに時は流れ、遂に奉闘祭の前日になった。
「いよいよ明日から本番だね。やるからには全力で勝ちに行こう」
「……当然。優勝する」
「よし、その意気だ。明日からよろしくな、ラティア」
「……うん、よろしくエルヴィス」
僕らはお互いの決意を確かめ合い、自分たちの部屋へと戻る
別に先生の給料のためにこんなにやる気を出しているんじゃない。
今の僕がどこまで出来るのか、それを知りたいんだ。
いつか誰かを守れるように、という希望を叶えるために
そして何かを成せる人間になれるように
――自分のために僕は奉闘祭を勝ち抜く。
***
いつものようにエルを起こすために7時に俺は目を覚ます。
この時間に起きてもいつもギリギリになるんだからほんと、あいつのネボスケっぷりは酷いものだ
「おいエル!今日は本番だぞ!おき……ろ?」
エルの布団がある方を見ると、いつも目に飛び込んでくるエルの幸せそうな寝顔の代わりに綺麗に折りたたまれたエルの布団があった
「……んだよ。ちゃんと起きられんじゃねぇか」
俺は寝癖の着いたままの髪をグシャグシャと掻き回しながら一人で洗面所に向かう
「頑張れよ、エル」
俺は虚空にそう呟いた




