第十九話 帰省の終わり
外に出るとアーシアは僕の手をいっそう強く握りながら足を運んでいく
「大丈夫だ。何も怖いものなんて無いでしょ?」
「う、うん……」
バサバサバサッ!
「ひゃあっ!?」
「落ち着いて、鳥だって。鳥くらい家の庭にもいるでしょ」
「鳥さんかぁ……びっくりしたぁ」
「そんなにビクビクしなくてもいいんだよ。ほら、歩こう」
僕はアーシアの手を握り、一緒に駆け出す
しかしアーシアは僕の手を引っ張り、僕が行くのを止める
「どうした?」
「お兄ちゃん!昨日のやつやって!」
「昨日の?肩車のこと?」
「それ!やって!」
「アーシアもハマったのか?」
「うん!」
まったく、何が楽しいんだか
「仕方ないなぁ……。特別だよ?あ、それとラティアには言っちゃダメだよ?羨ましがっちゃうから」
「分かった!秘密にする!」
「よーしいい娘だ。じゃあ行くよ、乗って」
僕が腰を下ろし、アーシアがそこに座る
「よいしょっと!」
僕はアーシアを肩の上に乗せ、立ち上がった
「お兄ちゃん号、しゅっぱーつ!」
「了解っ!」
僕はアーシアと一緒に街の中を歩き回った
僕達のことはある程度この街の住人達には知られているので、まぁ仲のいい兄妹、くらいにしか思われないだろう
街の中といっても今日は家の周りに留めてある
家の近くにある、人の良さそうなおばあちゃんが切り盛りしている駄菓子屋のような所で買い食いをしたり、近くの広場でだるまさんが転んだをしたり、とにかく遊びまくった
ちなみにだるまさんが転んだはこの世界には周知されていないようなので、僕が教えた。
今度アル達ともやろうっと
家のそばをうろちょろしながら遊んでいると時々アル達三人が稽古をしている声や音が聞こえてくる。なかなか頑張っているみたいだ
「楽しいね!お兄ちゃん!」
「うん、やっぱり帰ってきて良かったよ」
「毎週こうやって遊ぼうね!アーシア待ってるから!」
「分かってるよ、毎週必ず帰ってくる」
本当に今日アーシアと街に出て良かった
あの事件からもアーシアはよく笑う娘だった
いつも元気な娘だった
でもその元気にはあれ以来空虚さを感じるようになった
偽りの笑顔、空元気だったのだろう
そんなアーシアが今日、久しぶりに本気で、偽りのない笑顔を浮かべている。そんな気がする。
毎週こうやって、少しずつでもアーシアが元に戻っていけばいいと思う。僕はそのためにいくらでも手を尽くそう。そう誓った
しばらく遊んで空が紅くなってきたので僕達は家に戻った。
明日は学校があるので今日中に王都に戻らなければいけない
王都行きの馬車は6時に最終便が出る
それまでに家を出る準備をしなければならない
「ただいまー」
「お、おう……帰ってきたかエル……」
「あー……、だいぶ扱かれたみたいだね」
家に着くとなんか色々ボロボロなアルがいた
「キツかったぁ~マジキツかったぁー!」
「何よなっさけないわね。男でしょ!」
「……ヘタレ」
「お前らは魔法の練習しかしてねぇからそういうこと言えんだよ……。6時間動き回ってたこっちの身にもなってくれ……」
まぁダニエスの特訓は厳しいからなぁ。その辛さは身をもって理解している
「仕方ないなぁ。アルの荷物も片づけておくから休んでていいよ」
「さっすがエル!サンキュー!」
「まぁいつもお世話になってるしね」
僕は部屋に戻って僕の荷物とアルの荷物を片付ける
ダニエスは加減というものを知らないから困るんだよな
まぁ教え方は僕より絶対上手いからアルにとっては良かったのかもな
僕が二人分の荷物を片付け終わる頃には出発しなければいけない時間がすぐそこまで迫っていた
「それじゃ父さん、母さん、アーシア。また来週ね」
「おう、学校頑張れよ。」
「体に気をつけてね?無理しちゃダメよ?」
「バイバーイ!」
僕達家族は別れの挨拶を交わす。まぁまた来週会うんだけど
「お邪魔しました。二日間ありがとうございました!」
「……バイバイ」
「お前らも元気でやれよ!エルヴィスを頼んだぜ」
「はい!」
僕達が挨拶をしているとだいぶ息が整ってきたアルがダニエスに歩み寄った
「ダニエスさん、また来ても良いですか?」
「ん?別にいいけどどうした?」
「また剣教えてください!」
「お、やる気満々じゃねぇか。いいぜ、週末はだいたい暇だしよ。エルヴィスにはどうせ稽古付けるんだしな」
「ありがとうございます!」
「じゃ、お前らもまた来週か。待ってるぜガキども」
「「「「はい!」」」
こうして来週の予定を決めると僕達はスフォルテス家を後にした
6時の馬車に乗り、僕達は王都へと戻った。
女子ふたりとは別れ、僕達男子は男子寮に向かって歩く
「あ~疲れた疲れた。早く帰ってさっさと寝ようぜ。明日も学校だしよ」
「そうだね、アルまで寝坊したら終わりだ」
「自分で起きる気は無いのか……」
そんなことを話しながら歩いていると、男子寮の前庭に素振りをしている一人の少年の姿があった
その少年はこちらに気づくと素振りをする手を止め、ずかずかとこちらに近づいてくる
「スフォルテスてっめぇ!昨日なんで来なかったんだよコラ!ずっと待ってたんだからな!」
その少年、レガルドは僕に怒鳴り声を上げる
来ない僕を待ち続けるなんて忠犬ハチ公かこいつは
「あー言うの忘れてた。僕週末はこっちいないから」
「はぁ!?なんでだよ!」
「実家に帰ることになってるの」
「お、おう。ならしょうがねぇな。じゃあほら、昨日の分もやるぞ!」
「え、普通に嫌だ」
「拒絶の仕方酷すぎねぇ!?」
「今日は疲れてんの。また明日ね。おやすみ」
「またな噛ませ犬~」
そう言って僕達は寮の中へ入った
「いい加減名前を覚えやがれー!」とレガルドが叫んでいたが、スルーして部屋に戻る
「荷物は明日片付ければいっか」
「そうだな……もう寝ようぜ」
「そうしよっか。灯り消すよ」
「おう、おやすみ」
僕達はさっさと布団に入り、眠りについた
「おいエル!起きろって!やべぇよやべぇよ!」
次の朝、起きたらなんと9時だった。
「おぉ、これは……アウトですね」
いや~、昨日の会話フラグだったか~
「悪ぃ寝坊した!さっさと行こうぜ先生キレちまう!」
「え、僕まだ朝ご飯食べてない……」
「俺もだよ!ついでに言うとよく考えたら昨日の晩飯も食ってねぇよ!」
「……食べてから行かない?」
「昼まで我慢しろや!」
そのままアルに引き摺られて空腹状態で登校することになってしまった
「アウトです!完全にアウトです!セーフのセの字もありません!遅刻しない様にって言ったじゃないですかぁー!」
教室に入ると授業をしていたディアナ先生がめっちゃ怒ってきた
「すいません!」
遅刻関係で謝るのこれで何度目だっけ……
「明日からは頼みますよほんとに……。あ、エルヴィス君は昼休みに職員室に来てください。お話があります」
「はい……」
ついに呼び出しまで受けてしまった……。何か早起きできる方法を考えなきゃな




