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騎士になった少年  作者: ルネ
第一章 幼年期編
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第一話 おぎゃあ

気づくと先程までの辛さが嘘のようにとても体は楽だった

今僕はベッドに寝ているようだ。

先生がまた助けてくれたんだろうな


もう瑠奈は助けられない

瑠奈は死んでしまったんだ

けどせめて葬式と墓参りには行こう

ケーキ、絶対一緒に食べような。約束だもんな

そう思いながら目を開けようとする


だが、瞼があかない。

いつも通り、目を開けようとしてもあかない


え?なに?先生手術失敗した?でも目って関係ないよなぁ?

体も動かない。ほんと、何これ?

全く事態が飲み込めていない優人はとりあえず誰かいないかと声をあげようとする

すると代わりに優人の口から出たのは

おぎゃああああっ!


という赤ん坊の泣き声だった。



優人は赤ん坊になっていたのだった







「○●▲□◎※♂仝ヾ〒▲♀」


「◇▲▽■§◇▼▲♀〒ヽ〒」


なんだかよく分からない言葉を使って近くで会話がされる

目の前で同じベッドに寝ている女性と部屋にいる男性との会話らしいが全く分からん

頭の上ではてなマークを浮かべていると、誰かに優しく抱き抱えられ、お湯に入れられる

産湯かな

あ、温かい温かい


……なんだこの状況


わけが分かんなかったので、とりあえず泣いた










状況を整理しよう

僕は病院で瑠奈の不幸を耳にした後、強烈な苦痛に襲われて意識を失った。

で、目が覚めたら赤ちゃんになっていたと

ばぶぅ、と


いやいやいやいや

どこの小説だよどこのファンタジーだよ

心の中で頭をぶんぶんとふる

異世界転生、という言葉が脳裏を過ぎるがあれは物語だからこそ起こることだぞ?

こちとらしっかり現実世界の人間ですよ?


この状況も理解出来ないしなんだか猛烈に眠いのでとりあえず睡魔に抗うのを諦めて、眠りについた






それから数日が経っても事態は何も変わらなかった

いい加減認めるしかないのだろう

僕は本当に異世界転生してしまったようだ

もうなんていうか、マジか!としか言いようがない


この数日間、普通の赤ちゃんのように過ごした

朝起きて寝て起きて寝ておっぱい飲んで寝て

だいぶ神経が磨り減る生活だった

まぁ夜泣きもおもらしもしないので普通かどうかは怪しいが

この年になっておもらしなんて出来るかッ!


……それにしても、あと数年これが続くの?僕赤ちゃんプレイの趣味はないんだけど?

優人はこれからの事を考えて憂鬱になるのだった














月日は流れ、僕がこの世界にきて1年がたった

もうすぐ1歳の誕生日だ。

誕生日の日が同じなのはまぁ覚えやすくていいといえばいいんだが、あの日のことを思い出してしまい、胸が痛くなる

だからといってあの事を、あの人を忘れたい訳では無い

瑠奈が入院を繰り返していた僕の精神的支柱だったのは言うまでもない。

その彼女のことを忘れるはずがない。忘れていいはずがない。

本当は瑠奈を殺した奴らに復讐してやりたいのだが、こんな状況になってしまった以上それを叶えるのは難しそうだ。

もとの世界に戻れる方法が見つかるまで大人しくしていよう


この時期にも近くなって来るとハイハイも卒業し、家の中をてこてこ歩き回れるようになった。

それからこの世界の言葉もある程度分かるようになった。

ずっとリスニングし続けてれば流石にある程度覚えられるもんだね


この二つの進歩によって自分の周りのことがだいぶ分かってきた。

まず、僕がこの世界で付けられた名前は『エルヴィス=スフォルテス』だ。

エルヴィスが前の世界で言う名前で、スフォルテスが名字らしい。

第2の親の名前も分かった

父親の名前は『ダニエス=スフォルテス』

母親の名前が『エヴァリーナ=スフォルテス』

らしい。


ダニエスはガタイがよく、抱かれるとなんだか硬い感じがする

なんでもこの人の仕事は騎士らしい。しかも王国騎士団長。結構偉いみたい

そりゃあ筋肉質にもなるか

でも僕が産まれてから一日中家にいることが多い。

騎士にも育給とかあるんだろうか

騎士団長が休んでても大丈夫ってことはそれだけ平和という事なのだろう


エヴァリーナは美人を体現した様な綺麗な人だ。

金髪のサラサラヘアーに細長い体躯。

ダニエス、筋肉ダルマのくせによくこんな人見つけられたな

この人に抱かれると柔らかくて優しい感じがして気持ちいい。さすが母さん、筋肉ダルマとは違う




とりあえずこの世界での父母であるので父さん母さんと呼ぶことにしよう


まぁまだあーとかうーとかおぎゃーとかしか話せないのだが。


それからこの家を歩き回ったところ、だいぶ広そうだということもわかった。大きな庭もあるみたい

割と裕福な家庭らしい


僕は自由に動けるようになるとまず、庭に瑠奈の墓を作った

墓と言っても土の山を作って木を挿しただけだが

1歳児にはこれが限界だった。ごめん瑠奈

1歳の誕生日パーティーでエヴァリーナが作ったケーキはそれの前で食べた。

そして1口分残して即席の墓に埋めた








「エルヴィス〜ご飯よ〜いっぱい食べて早く大きくなりなさい」


母さん(エヴァリーナ)がどろどろしたスープみたいなものを持って僕の方に向かってくる。

おっぱいは何ヶ月か前に卒業した。それからは離乳食を食べている

離乳食ってあんまりおいしくないんだよなぁ。味が薄い


それでも僕のために作ってくれたんだ。

いつもお礼を言いたいんだけど、喉からは曖昧な音しかとしか出てこない。

またそうなってしまうんだろうな、と思いつつ声を出す


「ありあと、かあしゃん」


お?いつもよりまともに話せた。やっぱり日々の努力って大事。


エルヴィスが自分の成長に感動していると食器の割れる音が聞こえてきた。

エヴァリーナが手にしていた僕の食事を落としてポカーンとしていた。

そしてハッと我に帰ると


「ダニエス!エルヴィスが喋ったわ!私のこと呼んでくれたのよ!」


そう叫びながら急いで部屋を出ていってしまった


「何!?本当か!」


ダニエスのここまで聞こえてくるほど大きな返事が聞こえたかと思うと二人一緒に部屋に飛び込んできた


「エルヴィス!俺は?俺はなんて言うんだ?」


な、なんだ!?どうしたんだこの父親は!?


「どいたの、とうしゃん?」


あ、またちゃんと言えなかった。もっと練習しないとだめか


「うおお!ホントだ!喋った!喋ったぞエヴァリーナ!」


「言ってるじゃない!あぁーもう、エルヴィスはお利口さんね〜!可愛いっ!」


その後、2人の気の済むまで抱きしめられ、撫で回され、振り回された。


お腹、へったなぁ……

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