第十八話 みんなで囲む食卓
「お・に・い・ちゃぁーん!!」
「うおっ!」
家に入るとまずアーシアが飛びかかってきた
避けるわけにも行かず、なんとか受け止める
「久しぶりお兄ちゃん!会いたかったよぉ~!」
「相変わらず元気だなアーシアは」
そう言って僕に抱きついているアーシアの頭を撫でる
アーシアは「えへへ~」と嬉しそうにナデナデを受け入れている
昔っからアーシアは頭を撫でられるのが好きみたいだ
ほんと小動物みたいだな
「おいエル……お前小さいのが好きだって言っていたが、まさかシスコンじゃ……」
「んなわけあるかっ!ノーマルだよっ!」
「お兄ちゃん、この人たちだれ?」
「あぁ、学校の友達だ」
「この人たちはアーシアのこといじめない?」
「そんなヤツら僕が連れてくると思う?」
「そっか、そうだよね。よいしょっと。お兄ちゃんの妹のアーシアです!よろしくおねがいします!」
アーシアは立ち上がって三人に挨拶をする
「おう、俺はアルベルトだ。よろしくなアーシアちゃん」
「私はリンダよ。あとそっちの娘はラティア」
「……よろしく」
「よろしくおねがいします!」
アーシアはもう1度ペコリとお辞儀をしてからソファに座り直した僕の膝の上に座ってくる。
そして振り返って僕の顔を見ながら一言
「お兄ちゃん、シスコンってなに?」
「アーシア、気にしなくていい。大したことじゃない」
「アーシアちゃん。シスコンってのはな……」
ジロッ
僕は鋭い目でアルを睨みつけ、視線でアルの言葉を止める
「あー……、わりぃ。俺もド忘れしたわ」
アル、アーシアに変な言葉覚えさせようとするんじゃない。
しばくぞ
その後、アーシアと一緒に遊んだり、ダニエスと稽古をしたりして昼間を過ごした。
約束通りラティアを肩車して庭を走り回ったりもした。
その時ちょうどアーシアがその様子を見ていて「お兄ちゃん、私も私も!」というのでアーシアも肩車してやった。
それを見ていたアルも「私も私も!」と裏声まで使って言ってきたのでもちろんぶっ飛ばした
ついで昼間の間にこの数日間の事も話しておいた。魔法が使えなかったことも含めて。何故かあまり驚かれなかったが
そして時は流れ、夕食の時間がやってきた
「はい皆!沢山作ったから遠慮しないで食べてね!」
エヴァリーナが食卓にたくさんの食事を並べる。なかなかのご馳走だ。
「「「いただきまーす!」」」
いつもの家族に3人を合わせた7人での賑やかな夕食が始まった
「うまっ!何これうまっ!」
「……おいしい」
アルとラティアが食事に口をつけながら料理のクオリティに驚いている
「本当?よかったわ~」
「美味しいね、お兄ちゃん!」
「そうだな。美味しいな」
こりゃ母さんだいぶ張り切ったな?
「そういえばエル、今日も剣の練習やろうな!ちゃんと木剣持ってきたからよ!」
「りょーかい。食べ終わったら庭でね」
あれからアルは毎日かかさず僕と一緒に素振りをしている
いきなり100回振ってるし、結構根性あるなこいつ
「なんだエルヴィス。お前他人に剣教えられるほど強くなったのか?」
ダニエスがニヤニヤしながら聞いてくる
「うるさいなぁ。頼まれたからやってるだけだよ」
「あ、そういえぱ聞いたぜ?お前毎日エドワルドにボロボロにされてんだって?まだ魔法攻撃には慣れねぇのか?」
「そんな簡単に慣れる訳ないじゃん……。入学から何日だと思ってるのさ」
「ハッハッハ!まぁ頑張れや。アイツの魔法に慣れたらもう怖いものなしだぜ?」
「エドワルド先生ってそんなにすごい人なの?っていうか父さん知り合いだったの?」
「あぁ、あいつは前の戦争の魔力部隊のトップだしな」
……は?
思わず目をパチクリとさせてしまう。
他の3人も僕同様驚きを隠せないようだ
「なんだ?知らなかったのか?」
「聞いてないよ!そんな凄い人がなんで学校で先生なんかやってるの!」
「そこまで知らねぇよ。ガキが好きなんじゃねぇのか?まぁいい機会だ。たっぶり鍛えてもらえや」
「そうは言っても僕魔法使えないんだけどね……」
「だいじょーぶだ。お前はいつか必ず魔法が使えるようになるさ」
「そんな根も葉もない事言われても……」
「俺を信じろって。まぁそれまで元気に育てよ」
ダニエスはそう言って頭をポンポンと叩いて来る
まったく、たまに父親らしいことしてくるからこの人はほんとにもう
「さてと、おいエルヴィスのダチ。えーっと、アルベルトっつったか?」
「なんすか?もぐもぐ」
「アルっ!あんた食べながら話すんじゃないわよっ!失礼じゃない!」
ボカッ
「いってぇ……鬼め」
「……アルが悪い」
「ラティアの言う通りだね」
「お前ら……3対1かよぉ……ぐすん」
「あ、泣き真似とか気持ち悪いんでやめてください」
「ほんとに泣くぞ!?」
やめろ。男の涙なんて見たくは無い
「うぅ……それで、なんすか?」
アルは口の中のものを飲み込みダニエスに聞き返す
「お前、どうせ剣教わるんなら俺が明日俺が教えてやるよ」
「え、いいんすか?」
「まぁ俺も明日まで休みだし暇だしな」
うわなんか仕事取られた。まぁいいけど
「じゃあお願いします!」
なんかアル、だいぶふてぶてしくなったなぁ。
来るまであんなにビクビクしてたのに
「あら、じゃあ私はこの娘達に色々教えちゃおうかしら。あなた達は魔法使う?」
エヴァリーナはそうラティアとリンダに尋ねる
「あ、はい!まだ習いたてですけど……」
「……とくい」
「よかったわ~。それじゃ、あなた達は明日私と練習しましょ?私、これでも結構やるのよ?」
「よ、よろしくお願いします!」
「……ありがとう」
皆それぞれ明日やることが決まったみたいだ。
かく言う僕もしっかりやる事がある。ダニエスとの鍛錬よりも大切なやるべき事が
その夜は僕の部屋で皆一緒に寝て、次の朝が来た
目が覚めるともう周りには誰もいなかった。
もうみんな起きたのかな?そう思ってリビングへと向かう
「おうエルヴィス。やっと起きたか」
そこには朝御飯を食べおえ、片付けを始めているエヴァリーナやソファでぐだぁっとしている3人の姿があった
「朝お前を起こさずにほっといたらどうなるかなんとなく分かったぜ……」
時刻は10時。学校がある日なら遅刻もいいところだ
「あはは……これからもよろしくね、アル」
「仕方ねぇなぁ。毎朝このアルベルト様が優しく起こして差し上げますよ。感謝しやがれ」
「どうもありがとうございます」
僕は朝ご飯を食べながらアルに感謝の言葉を送る
「さて、エルヴィスが飯食い終わったらお前ら庭に行くぞ。ちょっくら鍛えてやる」
「「「はい!」」」
皆をあんまり待たせるのも悪いので朝ご飯を掻き込んで、僕達は庭に出た
庭に出ると僕とアルはダニエスのところ、リンダとラティアはエヴァリーナのところへと別々に分かれる
今日は皆特訓の日にするみたいだ。
邪魔するのも悪いしさっさと出掛けよう
僕か今日やる事とはアーシアと一緒に家の外に出ることだ
アーシアが街のゴロツキに連れ去られたあの事件以降、アーシアはあまり家の外に出る機会が無くなってしまったのだという
1人で出ることはもちろんダニエスたちが許さないし、そもそもアーシア自身があまり外に出たがらなくなってしまったのだ。所謂トラウマというやつだ
それでも来年にはアーシアも学校に通うため、この一年の間に外に出ることに慣れなければいけない
ダニエスが一緒に外にいって慣れさせてもいいのだが、アーシアが僕をご所望らしい
ならば毎週帰ってくる僕がアーシアのトラウマ克服のお手伝いをしよう、ということになったのだ
「それじゃあ行こっか、アーシア。まずは家の近くを歩いてみよう」
「うん……」
「まだ外は怖い?」
「そ、そんな事ないよ!アーシア大丈夫だよ!」
「無理しなくていいから。ホントの事言ってみてよ」
「……ちょっとだけ、ちょっとだけまだ怖い」
ちょっとだけ、というのはアーシアなりの意地なのだろう。そんな意地見せてくれなくてもいいのだが
「そっか……。大丈夫、今度こそ見失わない。安心して外の世界を楽しもう?」
「でも……」
「なんだよ、僕が信じられない?」
「そ、そんなことないよ!お兄ちゃんは凄いんだもん!信じてる!」
「よし、なら問題ないね?行くぞ」
「……うん、早く行かないとたくさん遊べないもんね。行こう、お兄ちゃん!」
そして僕達は手を繋ぎあい、門を開けて外へと踏み出した




