第十五話 図書室での出会い
さっきの負けが頭からなかなか離れてくれない
メリハリつけるの苦手だったんだな僕って
僕はホームルームが終わってからすぐに図書室に向かった。
アルから鬼ごっこしようぜ!と誘われたけど断った。
今はそんな気分じゃなかったし、そもそも今の僕が本気で鬼ごっこしたら僕が鬼になった瞬間にゲーム終わりそう
っていうかこの世界にも鬼ごっこあったんだな。どこの世界の人も考えることは同じか
まぁこっちの世界には本当に鬼がいるらしいしあっても不思議じゃないのかもしれない
図書室に足を運んだ訳は、今の気分をなんとかしたいっていうのもあったけどやっぱりただ単純に本が読みたくなったっていうのが大きい
あの親父は本を持ってなさすぎる!あんなんじゃ僕の読書欲は満たせないぞ!
図書室は3年生の校舎にある。一年生で図書室を利用する生徒は少ないからだろう。
二年生の校舎を通り過ぎ、図書室の前に辿り着く
「やっとだ……。やっと念願の読書が思う存分できる……」
僕は感慨にふけりつつ、図書室のドアを開ける
するとたくさんの本棚に収納された無数の本が目に飛び込んできた
「……ここが聖域か」
そう呟いてから、ハッとなって辺りを見回す。
幸い誰の姿もない
誰にも聞かれていないようでよかった。
あまりの本の数に圧倒されてしまってつい変なことを呟いてしまった
気を取り直して聖域探索を始めよう
これだけ本があると返ってどれを読もうか迷ってしまう。
とりあえず適当にぶらぶら歩いて物色してみるか
本棚にはジャンルごとに本が分けて置いてあるようだ
物語、伝記、図鑑、辞書、評論などなど多岐にわたる本が置かれていた
うおー!テンション上がってきたー!何から読もうかなぁ
やっぱり物語からいってみようかな
どの本を読むか迷っていると突然後ろからトントンと肩を叩かれた
いきなりの事に驚いて後ろを振り向くとそこには銀髪幼女がいた。
ん?なんかこの娘見覚えがあるな?
あーなんかクラスにこんな娘いた気がする
「えっと……ラティアだっけ?」
目の前の女の子はコクンと小さく頷く
「えっと……なんか僕に用?」
肩を叩かれたってことはなんか用事があったんだろう
「……しゃがんで」
「え?うん」
よく分からないけど別に減るもんじゃないし、言われた通りにしゃがむ
すると肩に何かが乗っかってきた。
いや、この状況でその何かが分からないはずがない。
言い直そう。ラティアが僕の肩に乗っかってきた
「え、えーと、ラティアさん?いかがいたしました?」
「……立って」
「え?」
「………立って」
「う、うん」
言われた通り立ち上がる。
ラティアが肩の上に乗っているので、肩車する形になる
「……エルヴィス。もうちょっと右」
「えっと……」
「……右」
「うん……」
僕は戸惑いながらも言われた通り、右に移動する
なんなんだこの状況
なんで僕、同い年の女の子を肩車してるんだ
「んん~……」
ラティアが僕の方の上で本棚に手を伸ばす
なるほど。ラティアは本が上の方にあった本が取りたかったみたいだ
「とれた?」
「……うん」
「じゃあ降ろすよ」
僕は再び腰を下ろし、その間にラティアは僕の肩から降りる
「……ありがと」
「ん、どういたしまして。ラティアも本読むの好きだったんだね」
「……エルヴィスの方が意外」
「そう?結構本読むのは好きなんだけど」
「……仲間」
「うん、仲間だね。ねぇ、なんかおすすめの本とかない?何読むか迷っちゃって」
「……ん」
僕が質問してみるとラティアはさっき頑張って取った本を渡してきた
「いいの?せっかく取ったのに」
「……私はもう何度も読んでる」
「へぇ、そんな好きなんだ」
「……ん。だいすき」
「じゃあ有難く読ませてもらうね。ありがとう」
タイトルは『オーレリアの英雄譚』というものだった
この図書室は本の持ち出しが出来ないらしく、部屋の中にある席に座って読んでいくというスタイルらしい
僕はその本を持って空いている席に座り、早速本を開く
大まかなあらすじとしてはオーレリアという1人の騎士が滅亡しかけた国をその国の姫とともに再興していくというお話だ
騎士というのは子供に人気が高いらしく色んな物語に取り上げられている
この物語も例に漏れず騎士が主人公だ。
だが、ただのテンプレではなくちゃんと作者の個性が出されていて、確かにとてもおもしろい
流石本好きらしいラティアのオススメだけある
3時間ほどかけて一気に読み切ってしまった
「ふぅ……」
すべて読み終わり、一息つくと
「……どうだった?」
と、横から声がかけられた
「うわっ!びっくりしたぁ。ラティアか。まだいたんだ」
僕が驚いて大きな声を出してしまったので、逆にラティアを驚かせてしまったみたいだ。一瞬目を見開いてるのが見えた。
まぁすぐ無表情に戻ったけど
「……うん。ずっといた」
「え、ほんと?本に集中してて気づかなかった、ごめん」
「……いい。それで、どうだった?」
「すごい面白かったよ!ありがとうね」
「……良かった」
「また良さそうな本があったら教えてよ。ラティアのオススメなら間違いなさそうだし」
「……分かった。頑張る」
ラティアは基本的に無表情みたいだが、今は心なしか嬉しそうに見える。
やっぱり好きな本を褒められるのは嬉しいのだろうか
「じゃあそろそろ図書室も閉まるみたいだし帰ろっか」
もう外はすっかり日が沈んでいた。
やっぱり本1冊読んだらこのくらいの時間にはなっちゃうか。
結構読むスピードは速いと思ってたんだけどな
もう暗いしこの娘をほっとくわけにも行かないか
「ラティア、女子寮まで一緒に行くよ」
「……変態さん?」
「違う!断じて違う!女子寮まで送るって言ってるの!」
「……冗談。エルヴィスは一般人」
無表情だから冗談か本気か分かりにくい!
「ほらもー、行くよ!」
「……うん。……エルヴィス、乗せて」
「へ?」
思わず変な声が出てしまった
「……さっきの」
「さっきのって、もしかして肩車?」
ラティアはコクンと頷く
「……ラティア、自分の足で歩かない?」
「……だいじょーぶ。エルヴィス、力持ち。いける」
「いや別にそういう事じゃなくてね……」
「……じゃあなんで?」
実を言うとさっき肩車した時に思ったけどあの顔がラティアの太ももに包まれる感じ。
あれ、とてもやばい。
精神年齢が無駄に高いせいでこんな禄でもないこと考えてしまう自分が情けないとは思うがしょうがないだろ!
こちとら生まれたときから14歳レベルの性欲持ってるんじゃ!
「う……、とにかくダメなものはダメ!歩くよ!」
「……けち」
「ラティア、こういうことあんまり言わないようにしなよ……」
その言葉にラティアは首をかしげるも、僕が歩き出すとトコトコと着いてきた
この娘、無防備すぎでしょ……
心配になるレベルだよ
その後、女子寮までラティアを送って別れ、男子寮に戻った
こうして僕はもう少しで本当の変態さんになってしまいそうだったこの危機的状況を乗り切った
部屋に戻るとアルが僕のことを待っていた
「よーやく戻ってきたかアル!飯くいに行こうぜ!鬼ごっこしたら腹減った!」
「いいよー。別に待ってなくても良かったのに」
「いいんだよ、折角友達いんのにぼっち飯なんて寂しいだろ?」
「まぁね。じゃあ行こっか」
僕達は食堂へと足を運んだ
食事の最中、アルにさっきあったことを話したら「いいないいなずりぃなぁ!」などと騒ぎ出した。
何もずるくない。犯罪者一歩手前まで言ったんだぞ僕は




