第十四話 先生との模擬戦
はい?なんで?何この状況?
「えーっと……魔法を見せるだけだったら僕が相手する必要無くないですか?先生1人でやればいいじゃないですか?」
「派手な魔法っていうのは相手がいてこそ映えるもんなんですよ!エドワルド先生は忙しそうだし、どうせエルヴィス君は暇でしょう?ちょっと付き合ってくださいよ」
「暇って……。はぁ……分かりましたよもう」
まぁ確かに暇といえば暇なのだが
つくづくこの世界の大人達は僕をいじめるのが好きだと、そう思った
この場所はエドワルド先生が普通の授業をやっているので隣にある第二闘技場へ移動する
闘技場は特殊な結界に包まれており、その中では死なない限りどんな傷でも結界から出ると治ってしまうとディアナ先生の説明があった。
これも通行証を作った時の玉と同じアーティファクトらしい
ほんと、お金かかってるなぁこの学校
アル達生徒組は2階の観客席に座り、ざわざわと騒いでいる
「はい!それではこれから私とエルヴィス君の模擬戦を始めます!相手が戦闘不能になるか場外に出たら勝負ありってことで!
エルヴィス君には真剣を渡してあります。エルヴィス君!死なない程度だったら遠慮は入りませんからね!」
「は、はぁ……」
そう言われたってはい分かりましたって先生切れるわけないでしょ!
「それでは10秒後に始めましょう!10……9……」
先生がカウントダウンを始める
そういえば魔法使いとの稽古はやったことなかったな
深呼吸をし、精神を落ち着ける
「2……1……0!」
「スフォルテス流剣術……」
僕はカウントダウンが終わるとともに思いっきり駆け出し、一気に距離を詰める
「『薊』!」
鋭く素早い刺突を脇腹に向けて放つ
当然寸止めはするつもりでいたが、放った刺突はそれより前で止められた
先生が直前に発動させていた『土壁』によって防がれたのだ
へぇ、あれに対応出来るんだ
「流石です先生」
「当然です!それにしてもあんな早業が出来るなんて……。先生びっくりです」
「そりゃありがとうございますっと」
初撃は防がれてしまったので1度後ろに退いて態勢を立て直す
「でももっと派手にいかないとですね!いきますよ!『樹海』!」
先生が地面に手を当て魔法を発動する
僕は危険な気配を感じ取り、その場から飛び退く。
この感覚、あまりにも精度がいいのでもう最近は『危険予知』と呼ぶことにしている。
自分に危機が迫っている時だけに感じるからそのように名づけてみた
『危険予知』に従ってその場を離れると次の瞬間、突然地面から太いツルのようなものが複数本一気に生えてきた
そのツルは先生の意思で動かせるようで、先生の「それっ!」という掛け声とともに後退した僕に追撃をかけてくる
うっひゃあ~、先生これ本気じゃん……
僕はバックステップで再び後退しながらそれを躱す
観客席から「すっげぇ~」だの「先生かっけぇ」だの聞こえてきてるしもうこれ終わりで良くない?
だいたい相手の動きを読むスフォルテス流と遠距離魔法の相性めちゃくちゃ悪い気がする。今更だけど
そんな事を考えながら先生の攻撃を交わしていると何かにぶつかった
「何だ?」
まだ闘技場の端までは距離があるはずだ。不思議に思って後ろを振り返るとそこには土壁がそびえ立っていた
瞬時に状況を理解し、思わず「げっ」と声を上げてしまう
続いてドンドン!と僕の左右にも土壁が現れる
そして逃げ場を失ったエルヴィスに巨大なツルが襲いかかる
「大人気なさすぎでしょあの担任……」
全く、僕になんか恨みでもあるの?
もしかしてあれか?昨日ホームルーム抜け出したのまだ怒ってるのか?
僕は襲い来るツルに対抗するために剣を構える
1度深呼吸し、集中を深めてから向かってくるツルに向かって飛び出す
「スフォルテス流剣術、『紫陽花』!」
僕は剣を素早く振り、巨大なツルを粉々に切り刻んだ
「えっ!?」
先生もこうなることは想定していなかったらしい
その隙に先生の元へと全力で駆ける
「うおおおぉぉお!」
僕は吠えながらおおきく剣を振りかぶる。もちろん寸止めする準備は出来ているが
そして剣を振り下ろそうとした次の瞬間、僕は『危険予知』の感覚を感じる
(なんだ?)
それを考える間も咄嗟に回避行動をとる間もなく
「『地竜』!」
先生が魔法を行使した
その魔法の詠唱とともに先生の足元から土でできた竜が現れる
「なっ!」
攻撃のモーションに入っていた所だったので、とっさの反応が遅れ、突然現れた竜に胴に噛みつかれてしまう。痛い。
「えいっ!」
先生の操作により、地竜は僕を場外に投げ飛ばす
僕はなす術なく闘技場から退場させられてしまった
「私の勝ちです♪」
この勝負は先生の勝ちという結果で終わった
あーくっそ!負けるつもり無かったのに!
前にダニエスがこんなことを言っていたのを思い出した
「魔法を主力にして戦うやつを相手にした時は人間を見るんじゃなくて空気を見ろ」、と
正直言われた時は何を言っているのか分からなかった。
でも実際に魔法を使う人と戦って何となく分かった気がする。
空気を見ろっていうのは多分雰囲気を感じ取れってことなんだ。
雰囲気を感じるって言っても勘を鍛えるっていうことでも無いと思う。まぁ勘も時には大事だけど
空気の微弱な揺れ。風の向き。相手の目線。態度。
そういう要素を一つも漏らさず集約することによって初めて相手の行動がいち早く予想できる
それができればさっきみたいな不意打ちはくらわない
これは要練習だな……
投げ飛ばされて闘技場の外へ出ると、さっき竜に噛みつかれて血が出ていた腹がみるみるうちに治っていく
すごいな流石アーティファクト
僕がアーティファクトの効力に感心していると、上からアル達生徒が降りてきた
「エル!すっげぇなお前!かっこよかったぜ!」
「ありがとアル」
「お世辞じゃなくてマジだからな?あと先生も!特に最後の竜出すやつはかっこよかった!あれはいつ教えてくれるんだ?」
「あれは上級魔法なのでまだ大分先ですねぇ」
「よっしゃあ!あれが使えるようになるまで頑張るぜー!」
アルのテンションが急に高くなってる。単純なヤツ。
でもやっぱり直に見せるってのはモチベを上げさせるには良かったみたいだ。
アルだけでなく、他のクラスメート達もさっきとは対照的にやる気に満ち溢れている様子だ。
「ふふっ、ちゃんと効果あったみたいで良かったです。エルヴィス君、付き合ってくれてありがとうございました」
「……どういたしまして」
敗北の悔しさがなかなか拭えない。
もっと強くならなきゃ
そうでなければまた失ってしまう。
それから少ししてエドワルド先生の方の授業も一段落ついたようで、授業は終わりとなった。
その後、教室に戻ってホームルームを終わらせるとその日は終わりとなった。
ホームルームが終わるとリンダが近付いてくる
「聞いたわよエルヴィス君。ディアナ先生と戦ったんだって?」
「うん。まぁ負けちゃったけどね」
「お前、勝つつもりだったのかよ……」
アルが横槍を入れてくる
「当然じゃん。戦うのに勝とうとしない奴なんていないでしょ」
「いやまぁそうだけどよ。一応先生なんだぜ?大人だぜ?普通勝てると思わねぇだろ」
「歳は関係ないよ」
現にもう大人を何人も殺してるからな
「いや関係あんだろ!」
「でも結構いい勝負だったって聞いたわよ?」
「勝たなきゃ意味無いよ……」
リンダは慰めてくれてるつもりなのだろうがダメなんだ
戦いは結果が全てだ。
どんな理由も全てが終わった後には意味の無いものになる。
例えば歳が離れている、体格が違う、相手が卑怯な事をした、エトセトラエトセトラ……
それらの過程は全て結果に飲み込まれる。
だから僕は結果を残せるように強くならないといけないんだ




