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最終話

「魔王を倒しに行きましょう!」

 真宮寺さんが息を巻いて言い放った。

「居場所も知っている、戦力も整っている。今が好機ではありませんか!」

 格好いい。たとえ禿散らかしていても勇者は勇者か。

 それにフィルマが一つ頷いて、こちらも言い放った

「よし、行くか! 魔王退治!!」

 こうして、脈絡なく魔王退治が始まった。

 七人はエメの背中でも少し窮屈だ。落ちないようにマジックハンドの魔法で、全員を押さえつけている。

 と言ってもほんの数分の話だ。エメは以前と同じ様に集落のど真ん中に降りていく。

「え、もうついたのか?」

「ドラゴン凄いですねぇ」

 幸雄と梓が感想を告げる。気が付いたら着いていたくらいの反応だ。

 他の面々など言葉も出ない様子だ。

 エメから降りて各々武器を取り出す。エメはもう一度跳び上がり、高見の見物だ。

 その辺りから、奥の屋敷から魔王が出てくる。

「また貴様か! いったい何しに来た!」

「勇者たちの露払いをしに」

「なんだと!?」

 俺がそう言うと五人の勇者が前へと出る。

「っ! ゴウエン!」

「はっ、ただいま!」

「いえ行かせませんよ?」

 言った直後にぶん殴って気絶させる。

「ご、ゴウエンが一撃で!? く、くそっ」

 五対一の戦闘が始まったようだ。

「暗黒神流魔闘術、旋波」

 魔王の奴、取り巻きが居なくても強いな。そんなことを考えながら魔族たちをボルトスネークで無力化していく。雷魔法の適性が上がっているので効力は強まっている。頑丈そうな魔族たちなら後遺症も残らないだろう。

 さて、向こうではフィルマが大立ち回りをしている。八人を相手に一歩も退かない戦いぶりだ。というか剛体を使っているフィルマを相手によく頑張っていると言えるだろう。あ、二人倒れた。更に二人。もう持ちそうにないな。

 さてと、もう魔族は全員無力化したし、勇者たちと魔王の戦いを見物してるとしよう。それにしても、と思う。ティア様から首突っ込むような事じゃあない、って言われたのに全くの無視で首を突っ込んでしまった。我がことながら呆れてしまった。まぁ、特に後悔もしてないから別にいいのだが。

 ふと、魔王が魔力を纏った杖を一閃した、その直後、危険信号が頭を占める。気付いた時には音速の壁を盛大に突破し、衝撃波をまき散らしながらマッハ2の速度で間に入って盾を構えた。

「ゲヘナフレイム!!」

 視界が黒一色で包まれる。咄嗟のマジックウォールで後ろには影響ない筈だけど、この魔法目茶苦茶強力だから絶対とは言い難い。

 数秒続いていた炎も消え去り、あらためて周囲を見ると俺を軸に放射状に土が溶けて陽炎が立ち上っている。やっぱい凄い威力だったな。

「皆さんご無事ですか?」

 勇者たちに声を掛けると、カクカクと首を上下に振る。よかった、負傷の類はないようだ。

「むしろ、セイさんの方こそ、何ともないのですか?」

 困惑しきった声音で聞いてくる新谷さんに答える。

「私は女神様から炎の祝福を授かておりますので、火魔法の類が私を害することはありません。さ、それよりも続きをどうぞ」

 ミネラルウォーターの魔法で周囲の溶けた土を冷ましつつ距離をとった。

 いつの間にか大立ち回りを終えたフィルマが居たのでその隣に並ぶ。

「どう思う?」

 フィルマは腕を組んで問いかけてくる。

「どう、と言われましても、一筋縄じゃあ行かなかった相手でしょうね」

「そうだよな。さっきの黒い炎の魔法も、とんでもない熱量を持っていた」

 視線の先では、梓が斧槍を振り回して魔王を後退させている。

 そこに、刀を片手に新谷さんが迫る。魔王は魔法で新谷さんの影から鋭い棘をだし、牽制した。

 そこに更に幸雄が接近していた、魔王は咄嗟に腹パンで撃退るする。吹き飛んでゆくその様子はただの腹パンではない証拠だろう。流石に全スキル中一番LVが高いスキル、と言えよう。

 そこに真宮寺さんの魔法が飛んでくる。

「ドラゴンブレス、イフリートフレイム」

 魔法二種同時発動によって業火が発生する。それに対して魔王は。

「マイクロブラックホール」

 左手から小さな黒い玉を発生させ業火に向ける。

 すると炎はその小さな玉に吸い込まれていった。

「ディメンションカッター」

 その隙に静流ちゃんが左手を切断した。

「ぐおおぉぉっ」

 静流ちゃんの容赦ない追撃が迫る。腕の痛みで冷静に思考が出来ていない。

 良く練り込まれた魔練功を錫杖に纏わせ静流ちゃんの一撃は腹に一突き。顎に一閃、最後に練り上げられた魔力によって強化されたウォーターボムを叩き込んで連打が終わる。

 吹き飛んで行った魔王のからだは一本の木に叩き付けられた。

 そこへ新谷さんが刀を片手に、一言「斬り捨てご免」と言って首を断ち切る。

「セイ殿アイテムボックスに収納して下さい」

 新谷さんが首を持ってこちらに近づいてきた。

「分かりました」

 魔王の首と体をアイテムボックスに収納し、もうこの場で俺たちがやることは無い。

 さて帰ろうとしたら、既にエメは近くにおらず、ポータルを設置して帰ることになった。

 この場所にポータルを設置しても大丈夫かと心配になったが、特に困る事は無いだろう。




 サームナンの首都サームに帰って来た。これから法王との謁見を申し込み、許可されたらそのまま宮殿へ、そうでなければ宿で何日か過ごすことになった。

 魔王討伐の報であるから恐らく、待たされることも無いだろうと皆が思った。

 実際、直ぐに宮殿に入れたし。

「法皇様。魔王の首を打ち取ってまいりました」

 言葉に合わせ、魔王の首と体をアイテムボックスから取出す。

 法皇が不思議そうに見て来る。初対面だしな。

其方そなたは?」

「ホーリバス大陸三人目のランクS冒険者ですよ」

 フィルマが代わりに紹介してくれた

「おお、其方が戦女神様の使徒であったか!」

「ええ、お初にお目にかかります。セイ・ハンド名誉伯爵です、どうぞお見知り置きを」

 こういうのはキチンと役職を言っておいた方がいいと思い、正式な名乗りで自己紹介する。

「ほう、名誉伯爵とな? どこの国のじゃ?」

「シストワール王国です」

「なんと、シストワールの名誉伯爵とな」

「猊下、今はそれよりも魔王の首を・・・・・・」

 真宮寺さん軌道修正してくれた。

「おお、そうであったな。この首。晒した後は焼き捨てよう」

 傍らの机から、ちりーんとハンドベルを持ち上げ鳴らした。

「お呼びでしょうか」

 直ぐに三名ほどの男達が入ってきた。

「この亡骸なきがら、首は晒し、身体は今直ぐに焼き払え」

「はっ」

 持ちだされていく魔王の亡骸。

「さて、それでは私はこの辺で失礼しますね」

「「「え」」」

「それではごきげんよう」

 後ろから何やら叫んでいるが知った事か。俺は|神殿(日常)に帰るんだ。

 こうしてまた、のんべんだらりとした生活に戻る俺だった。

こんなチラシ裏な作品を今まで呼んでくださった皆さんには大変感謝しております。

最後にもう一度言わせてください、ありがとうございます。

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