10話
a さて、と。取りあえず50階層まで行ってみるとするか。
階段脇のポータルで50階層まで転移。
やはりというかなんというか、そこにも精緻な彫りこみをした扉があった。
「これは・・・・・・蛇か?」
『蛟という名で水を操ります。セイとは相性の良い魔物のはずですよ』
(そうなんですか?)
『ええ、戦ってみれば分かりますよ』
(それでは、いざ出陣)
『御武運を』
ティア様が乗ってくれた。ちょっと嬉しい。
扉の前に立ち、開いていくのを待つ。
とびらが開ききってから中に入ると、やはり体育館ぐらいの大きさがある部屋だった。
そしてその中にいて蜷局を巻いている大きなヘビがいた。全高が2メートル、全長に至っては100メートルはあるだろう。
「あなたが50階層のフロアマスターですか。出て来たばかりで悪いですけれど、また眠っていてもらいましょうか」
「キシャー」と警戒音を出している。
俺は構わず無造作に歩み寄ると、そこで。
「ギシャ―!」
蛟は体に纏うように水を大量に生み出した。そしてそれらの水を一斉にとばしてきた。。
成程。確かに相性は良いかもしれない。俺は久しぶりになる魔法名を唱えた。
「ダイブブレス、フロームーブ」
俺を襲った大量の水は球体になって浮いている。恐らくはそれで息の根を止めるつもりなのだろうが、その戦法は俺には通じない。
フロームーブで勢いよく水の玉から飛び出して斧を振りかぶり、そっ首斬り落としてくれよう、と意気込んでいたのだがそれはあっさりと躱される。
もっと速くないといけないのか。でも、水が邪魔だな。それなら・・・・・・
・・・・・・よし、これならどうだ? 行けそうだ、と思う。
「ギシャーッ」
今度はさっきよりも水の量が多い。倍近い、か。いや行けるはずだ。あの位の量なら一気にいける。
「フリーズ」
急に凍結しだした水にあわを食っている蛟。今だ――
俺は操練魔闘法の合一法を使って体内で魔力と気を混ぜ合わせて全身に循環させて衝撃波をまき散らしながら蛟に肉薄する。
「オーラスラッシュ」
眼前まで行き跳び上がって斧を振り上げて。下した。
「ギシャッ――」
綺麗に首を落とせた。途端、蛟が光の粒子になって消えていく。
さて、ドロップアイテムは何かな?
◆
<蛟の肉>
食べると水属性の魔法適正が上がる。レア。
◆
ドでかい肉の塊が五つ落ちていた。マジか。一抱えもある肉の塊が、ある意味壮観だった。これ、俺じゃなかったら運べないんじゃないか?
一先ずアイテムボックスに収納し、60階層へと移った。
60階層もまた扉に遮られていた。
精緻な彫りこみはドラゴンの子どもらしき三匹のドラゴンパピーだった。
無造作に扉に歩み寄る。と、またもや扉が天井へと釣り上がっていき、扉が開ききると、そこには案の定ドラゴンパピーが三匹いた。150センチくらいの大きさだ。
部屋へ入るや否や三匹揃って深く息を吸いこみ、炎を吐いた。炎の祝福がある俺には通じないが、ドラゴンパピー達は一生懸命に炎を吐いている。
多分、摂氏5000℃くらいあるんじゃないかな。確か、エメの話だとそこらへんが限界だって話だったし、普通なら剣も鎧も溶けるし骨も残らないんじゃないか? 俺の装備は全部神器だから平気だが。
可愛らしさに気を抜いたら最後。消し炭にされるんじゃなかろうか。
平然と近寄り、左から順に首を刎ねて終了。さて、ドロップアイテムは?
◆
<ドラゴンパピーの肉>
食べるとすべてのパラメーターが上がる。レア。
<ドラゴンパピーの角>
薬剤やポーションの素となる。レア。
<ドラゴンパピーの牙>
タリスマンなどに出来る素材の最高峰。レア。
◆
これはまた、全部がレアアイテムとはな。
取りあえず肉だけは食っておこう。パラメーターは大事だし。
俺はアイテムボックスからフライパンを取り出し、炎の祝福で温める。その間に、300gくらいありそうなドラゴンパピーの肉を塩胡椒してモミ込む。
フライパンには軽く油を垂らし、程よく温まった所で肉を入れる。途端、ジュワーっと言い音がして、香ばしいかおりが広がる。
片面を焼き、焦げ目がついた所でひっくり返した。そのまま火の様子を見てじっくりと焼き上げる。そう、ステーキだ。
「完成だ」
アイテムボックスから皿を取り出し、ナイフとフォークも取り出して、少し早めのランチといこう。幸いここは60階層のボス部屋、人も魔物も寄り付かない。思う存分味わおう。
速めの昼食を終えた俺は冒険者ギルドへ来ていた。
「どうでしたか、セイさん」
ギルドカードを提示しながら答える。
「30階層のサイクロプスも40階層のヒュドラも倒してきましたよ。50階層で蛟、60階層でドラゴンパピー三匹が出てきましたが特に問題はありませんでした。全て討伐済みです」
酒場の方が俄かにざわついたが、特に何もなかった。
「はい、はい、サイクロプス、ヒュドラ、蛟にドラゴンパピー三匹。確かに確認いたしました。それではこちらは討伐依頼の報酬です、金貨200枚あります」
「増額しているような気がするんですが?」
「いえ、50階層と60階層のフロアボスはセイさんにしか倒せませんので、むしろ少ないくらいです」
「あ、そちらも考慮していただけたんですか。ならありがたくいただいておきます」
金貨200枚をいただいてほくほく顔の俺は神殿に帰ることにした。
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御手洗 清 (セイ・ハンド)
年齢16 男 LV91 種族:人間
称号:忘れん坊 迷子 魔獣殺し 戦女神の寵児 戦女神の信徒 冒険神の信徒 三人目 雷龍 ドロウルの師匠 迷い人
特殊:記憶喪失 適応補正 清めの手水 戦神の加護 冒険神の加護 炎の祝福
魔眼:麻痺LV8 看破LV11 選別LV8 暗視LV7(神)
神器;ユスティアックス、ユスティアーマー、公翼の盾、清女の腕輪
スキル
攻撃補正LV45 被ダメージ軽減LV21 回避補正LV38 欠損再生LV1 盾殴りLV35 戦場闊歩LV43 第六感LV23 操練魔闘法LV31(神)気功波LV10 高速思考LV9 気配察知LV10
魔法適正
・水属性(高)・光属性(高)・雷属性(中)・無属性(激高)・影属性(高)・土属性(神)・火属性(中)・神聖魔法(神)
使い魔:コアトル、エメラルド
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