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9話

 朝の早い時間時間から、フィルマを見送りにジルタルの南門に所に居た。

「じゃあ、達者でな」

「ええ、道中お気を付けて」

 おりがとよ、と言いながら南門から出ていく。既に身分の証明は済んでいるらしく。門を出て、一度も振り返ること無く歩き去って行った。

 折角早起きしたし、このままギルドへ行ってみようと思う。

「賑わってるな」

 つい、ポロリと口にした独り言に返事があった。

「そりゃあな。今が一番人気ひとけの多い時間だからな」

「そうなのですか。普段は人の少ない時間にばかり出入りしているもので」

「おうよ、良い依頼は朝早くが勝負だからな」

「そうですか。じゃあ私も依頼を見て来るとしますか。貴方はいいのですか?」

「おりゃあ、ギルドと提携して残りもんや人気の無い依頼を受けているんだよ」

「成程。払いの悪い依頼も、達成すればギルドから手当て金が出る訳ですか」

「そゆこと。分かったならさっさと行った方がいいぞ」

「ええそうします。すみませんね、長々と」

「俺は構わないさ。俺はジョナサン機会があったら酒でも飲もうぜ」

「私はセイ・ハンドと申します。以後、お見知り置きを」

 言った途端に周囲のざわめきの質が変わったような気がする。

 まあ、そんなことを一々考えたくない。さっさと依頼書の張り出されている一角に進む。

 すると、真っ先に目に飛び込んで来た依頼。百年ぶりに現れたフロアボスを倒してほしい、という依頼だ。10階層と20階層は討伐済みだというが、30層、40層についてはまだ討伐されずに残っていた。

 因みに、30層のフロアマスターを倒してないのに、なぜ40層にもフロアボスがいると分かったというと。35層にポータルを設置している者たちからの情報らしい。丁度いいのでその依頼書を一枚ずつ二枚剥ぎ取りカウンターへ持って行く。

「この依頼を受けたいので手続きをお願いします」

「はい、承りました。この依頼は今日中にでもセイさんに指名依頼として処理する筈だった依頼ですので、そのまま指名依頼として扱っても宜しいでしょうか?」

「そうなんですか。私は構いませんよ、どうぞ御随意に」

「ありがとう御座います。できれば、50層や60槍でもフロアマスターの存在も確かめていただきたいのですが。どうでございましょうか?」

 やや不安げな様子の受付嬢だったが、これは俺も気になる。

「ええ、ついでに討伐してきますよ。70階層から先はまだ無理ですが」

「あ、はい。宜しくお願いします」

「では、早速行ってきます」

「は、はいっ御武運を!」

 受付嬢にエールを送られてギルドから出ていく。



 さて、じゃあ行くか。俺は早速30階層へポータルで転移した。階段の横に転移した俺は目の前にある光景に絶句した。

大きな一枚扉。そこに描かれた一つ目一本づのの巨人サイクロプス。大きな棍棒を持って振りかぶっている様子が緻密に、精緻に描かれていた。扉に近づくと扉がゆっくりと上にずれていき、扉が上がり切った所で部屋に入る。大きな部屋だ。学校の体育館ほどもある。

「ぐうぅ?」

 寝転がっていた、中に居たサイクロプスに目を合わせる。サイクロプスは慌てて起きて、そばに落ちていた棍棒を拾い上げた。

 暇だったのだろう。今のは見なかったことにしておこう。

「グゴォォオ!」

 叫び声をあげながら突っ込んでくるサイクロプス。大きさは4メートルってところか。

 俺は素早く操練魔闘法で体内に気を、体の表面と装備品には魔力を循環させていた。

「グラァァ」

 トップスピードになったサイクロプスだが、やはり遅い。

「お疲れ様」

 サイクロプスの肩の上に立ちそういった。もう決着はついている。首を斬断した。

光の粒子状になるサイクロプス。それに合わせて足場が消えていくので跳び下りる。

「次は40階層か」

 言いつつドロップアイテムが出現するのを待つ。

 戦果としては――


 ◆

<サイクロプスの角>

武具に加工することが主な用途。


<サイクロプスの肉>

食べると地属性の適性が上がる。レア

 ◆


――といったところだ。肉は孤児院で出そう。繰り返し与えていけば将来凄腕の魔法使いに成るかも知れない。

さあ、次は40階層だ。階段まで戻ってワープしよう。



 40階層。ここにも精緻な掘り込みのされた扉があった。どうやらヒュドラのようだな。そのあたりの情報は 聞いてこなかったし。

ともあれ、こうしていても仕方ない、さっきと同じ様に扉に近づくと、またもや扉が上にスライドしていく。


「「キシャーっ」」


 九本の首が一斉に鎌首をもたげる。と、息を吸いこむ動作をしたので、横っ飛びに躱した。気や魔力を練り上げたままにしておいて良かった。あやうく喰らう所だった。

ゴバアっと勢いよく、さっきまで俺が居た場所に九つの首が毒霧を吐いている。なかなかの巨体だ直径で4メートルはある。

 今の内に斧にフレイムエンチャントを掛ける。神話ではヒュドラの首は再生するから、断面を焼いていた。

 なら、同時にやったらいいじゃない。というのが理由でフレイムエンチャントを斧に掛けた。

 さらに、炎の祝福で炎の熱量は増していく。白熱した斧はまるで輝くように白に染まった。

 この時点で、漸くヒュドラが俺が居ないのに気がついた。

「遅いですよ。こちらの準備は整いました」

「ぎゅえぇぇぇえ」

 ヒュドラはゆったりと、悠然ともいえる足取りで近づこうとしている。

「だから遅いですって」

 言うなりヒュドラに肉薄。一瞬ヒュドラの首が俺を見失う。俺は容赦なくヒュドラの首を、草を刈るように無造作に刈った。三本ほど纏めて。

「ぐぎゃああぁぁぁ」

 ヒュドラが絶叫する。その間に更に三本、瞬く間に6本を失ったヒュドラは横倒しになり、暴れていた。

 素早く回り込み残りの3本も断とうとした時、毒霧を吐いた。だが慌てない。さっきは炎でも吐くのかと思ったから一応避けただけだ。毒なら清めの腕輪が浄化してくれる。

 そして思いだした。炎の祝福があるから炎も大丈夫だという事を。

 まあ何でもいい残りの3本も斬り終えた。

光の粒子に変わっていくヒュドラ。半分は地面に、もう半分は俺に流れ込んでくる。

 やがて光の粒子も無くなり、ドロップアイテムを見てみる。


  ◆

ヒュドラの毒

強力な毒薬一舐めで死に至る。

  ◆


 使い道の無い毒が壺に入った状態でドロップした。アイテムボックスの肥やしにするのがいいだろう。


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