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5話

最近、と言っても昨日からだが、奴隷商人がジルタルに来ている。それも複数――三人程だ。

 各孤児院同士で連絡を密にして子供たちを外に出さない様にと言う方針が決まった。


 のだが――


『セイ、町の北東で3人攫われました。急いでください』

(承知しました)

 何が起きているのか、と言うと。奴隷商が孤児じゃない、普通に街で遊んでいる民家の子どもを攫っているのだ。

 裏通りに入った所で人相の悪い二人の男がいた。

「くそ、あんましガキが居ねぇなあ」

 子ども三人が入った大きな頭陀袋を抱えながらつぶやく。

「それはそうでしょうね」

「! 誰だ! 出て来い!」

「言われずとも出てきますよ」

 そう言って二階屋根の上から飛び降りると、音も無く着地した。

「なっ、上からだと!」

「何モンだてめぇ! 何が目的だ!」

「私は戦女神の使徒です。目的はあなた方の捕縛です」

「ふざけんぼふぉっ」

「な、おmぼえっ」

 拳二振りで男たちの無力化をし、大きな袋の縛られた紐をほどく。

 そろりそろりと出て来た子たちに声を掛ける。

「怪我はありませんか?」

「しと様!」

「しと様が助けてくれたの?」

「しと様有難う御座います」

 三人とも無事な様だ。取りあえずは良かった。と、同時に自分の知名度が予想外に高いことを知った。

 のびている男たちを片手で一人ずつ担ぎ、子ども達に声を掛ける。

「一緒についてきて下さい、彼らが人攫いだと証言して欲しいのですが」

「「「はーい」」」

 うん、いい子たちだ。


「では、宜しくお願いします」

「ええ、後はこちらにお任せ下さい。この二人は犯罪奴隷として扱いますので」

「おや、奴隷狩りが奴隷になる、と。これはおもしろい」

「ははは、確かに面白いですね奴隷狩りが奴隷に・・・・・・」

 衛士の詰め所に男たちを連れていき衛士に引き渡すと、愉快そうに笑った。

 因みに、何で即、犯罪奴隷行きなのかと言えば、こいつらの仲間、かどうかは分からないが、町のあちこちで堂々と子どもを攫っていた者たちがいた為だ。取り調べも行っているだろうし、これで明日からは平凡な日々が訪れるだろう。

「それでは私はこの辺りでお暇します」

「ええ、ご協力感謝します」

 敬礼しながら見送られて神殿に戻ろうとしたその時――

『セイ、町の東南でまた人攫いです。人数は六人子供は二人です』

 瞬時に屋根に上り、そのまま屋根を駆ける。

――見つけた!

「そこまでだ悪党ども!」

 屋根から着地して指を突き付ける。

「ああ? 何だてめぇ」

「悪党に名乗る名は無い」

 即座にボルトスネークを発動、全員を無力化。大きめの頭陀袋から二人の子どもを救出。

「使徒さま、ありかとうございます」

「ありがとうございます」

 あれ、もしかして俺が思ってるより俺って知名度高いのかも知れない・・・・・・

 助けた子供が全員使徒様って呼ぶ。しかも知らない大人にあった時にするだろう怯えや混乱も無い。

 今はいいか。それよりもこの6人を運ばないといけないし。

「無属性魔法、ハンズ」

 不可視の手が6人の男を運ぶ。一人二本で計12本のハンズを使用。

 またもや衛士の詰め所に逆戻りした。


「ご協力、本当に有難う御座います」

 深々と頭を下げる衛士さんに「お礼はユスティア様にお願いします」と言っておいた。

(ティア様、これで人攫いは居なくなりますかねぇ?)

『ジルタルの衛士は優秀ですからね。今夜中に裏を取ってカルトスとレキュロは捕まるでしょうが、善良な奴隷商であるゼンゲスは捕まりませんね。

 まあ、人攫いなんかしない人物ですから、もう問題は無いでしょうね。後はゼンゲスの所で口減らしに売られた6人の子ども達を購入すれば今回の問題は全て完了ですね』

(では、ゼンゲスの所へ行ってみます)

『行ってらっしゃい』



「皆さん、今日は新しい友達を紹介いたします。皆さんからみて右から順に、カッソ、リネッツ、エリー、ミンミ、シムリー、パックの6人です。仲良くしてあげて下さい」

「「「はーい」」」

 下は6歳、上は10歳だ。パックが6歳、リネッツは8歳、エリーとミンミが9歳でカッソとシムリーが10歳だ。

 ゼンゲスの所で買ってきた6人で、もう奴隷契約は俺の無属性魔法で解除済みだ。

 便利だよな、無属性魔法。他に使える人見たこと無いけど。


 ともあれ、戦争さながらの夕食で既に溶け込んで居る姿を見てホッとした。何せ早く食べないと無くなってしまう。ここで手が出ないとなると、ほとんど何も食べられなくなる。まずは一安心だ。変に委縮とかしなくて本当に良かった。

 部屋は二階しか空いてないのでそこは我慢してもらうことになるけれど。



翌朝、衛士がやってきて、今回犯罪奴隷として売られた男たちの売値の10分の1が俺に支払われるらしい。八千ルピー、――銀貨八十枚だ。一人一万ルピーか、やっぱりこっちの世界は人の命が安いな。

 更に、今回の件で奴隷商人のカルトスとレキュロが捕まった。立役者である俺に報酬として二人の財産の一割が俺に支払われるらしい。その額なんと金貨三百枚。三百万ルピーだというから驚きだ。

 二人合わせて金貨三千枚もの資産があったというのだから驚きだ。奴隷商がそんなにも儲かるものだとは思えない。やっぱり裏では悪どい事をしていたのだろう。実際、今回も人攫いを企てて実行している訳だし。

 二人の処分は犯罪奴隷として鉱山送りになるらしい。空気の循環が悪く、粉塵爆発や天然ガスが漏れての爆死、中毒死もあり得る。

 どちらにせよ苦難と呼んでいい余生を送ることになった訳だ。恐らくは当然の報いだとは思うけれども。




 翌日、迷宮に潜って62階層まで攻略した。段々と力押しじゃあ行けなくなるかも、と思ったらそうでも無かった。

 知力向上のスキルを持ったモンスターが少ないのが理由だ。オーガもミノタウロスも基本的には、ただ、愚直に突進してくる手合いだ。簡単に首を落とせる。

 知力向上を持ってる場合は冷静に間合いを測ってくる。この場合はこっちから手を出した方が早い。二合、三合で隙を見せてくれる。

 超巨大魔石も122個になったし、二、三個ギルドで売るかな。

 ふと懐中時計で時間を見ると17時を回ってた。今日はこの位にしておこう。


「この魔石についてギルド長と話がしたい」

 そう言って超巨大魔石を見せる。

「わかりました。少々お待ち下さい」

 奥へ引っ込んでいったと思ったらすぐに帰って来た。不在なのか?

「では奥へどうぞ」

 あっさり通してくれた。まあ、話が早くて助かるけれど。

 ギルド員の後をついて行ってディアックさんの執務室へ。

「ギルド長、セイさんがお見えです」

「直ぐ通せ」

「はい、では私はこれで」

 後半は俺に向けてだ。遠慮なく入っていくとする。

「ディアックさん、お久しぶりです」

 入室しつつ、そう声を掛けてみる。

「なんじゃ、もう来ておったのか」

「ええ、気の利いた部下をお持ちで」

 ソファに座るとディアックさんも執務机からソファに座り直した。

「それで、今度は何をやらかしおった?」

 なぜそうなる。俺イコールトラブルってことか? 冗談じゃない。

「これです」

 言いつつ超巨大魔石をアイテムボックスから取り出す。

「なんじゃこれは・・・・・・

魔石、なのか? こんな代物どうやって――いや、迷宮か」

「ご明察。60階層から下はオーガとミノタウロスが大半なのですが、どちらを倒してもこの超巨大魔石がドロップしました」

「ムウ・・・・・・こりゃあおいそれと競りにも出せんな」

「昨日持って行ったら2500万ルピーで落札されましたよ。成金趣味のおじさんに」

「もう持って行ったのか!? しかし、2500万か・・・・・・納得の大きさじゃわい」

 ラグビーボールの2倍くらいの大きさだからなぁ。

「これ、ギルドで売ったら幾らぐらい出します?」

「正直、値がつけられん。ギルドでは売れないと思っていてくれ」

「そうですか、残念です」

 そっかー、むりかー。

「すまんのう。じゃが、時折競りに持って行くだけでも充分な稼ぎになるじゃろうて。お主ならワープポータルで直ぐに売りに行けるじゃろう?」

「そうですね。確かにその通りでしょう。2,3ヶ月に一回持ち込むことにします」

「そうじゃな、お主の事じゃ、その魔石も複数所持しているのじゃろう?」

「ええ、122個程あります」

「は? なんじゃと?」

「ですから122個ありますって」

「・・・・・・いやおかしいじゃろ。何で昨日の今日でそんなに手に入る?」

「元々50階層から下はモンスターを倒せば必ず魔石がドロップします。それに加えて、新しく増えた家族たちにも不自由なく暮らしてほしいですから。ちょっとばかり頑張ってみました。今は62階層まで到達できてます」

「いやおぬし、ドラゴンの一件で100億ルピー受け取ってるじゃろうが。もう働く意味がないではないか」

 呆れたような口調で言われた。だけど。

「人生何が起きるかなんてわかった物じゃあないですか。私は油断せず慢心せず働いて稼ぐ所存です」

「・・・・・・そうか。まあ、そう言うのであればこちらとしても助かる。お主の持ち込む巨大魔石は、もはやジルタルの名産品として認識されておるからのう。お主以外に迷宮の50階層を狩場にできる冒険者がおらんしの」

「もしかしたら、二人程、50階層に行けるかもしれない人たちを知ってますが」

「レンドとヤミーじゃろう? わしも実は期待しておるんじゃ」

「流石ギルド長、抜け目がないですね」

「割と有名じゃからのう、お主等。ランクS冒険者が唯一パーティーを組んだ二人、ということでな」

 成程そうだったのか。

「さて、あんまり仕事の邪魔をしては申し訳ありませんし、そろそろ帰ります」

「おお、そうか。気を使わせてすまんな。また何かあれば訪ねてくれ」

「ええ、それじゃあ。失礼します」

 その後俺は一階の買い取りカウンターで、ラグビーボール大の巨大魔石を10個売って神殿に帰った。

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