2話
ドロウルを鍛え始めて2週間が経った。
始めは泣き喚くは腰が引けていたりするはで難航したかなと思えたが、直ぐに対応して見せている。成程。ティア様が「素質がある」と言うだけの事はる。
座禅を組ませ、練気功と魔練功を自在に扱えるようにそれぞれを練り上げる修行もした。その都度、身体強化や高速移動にまわしている気の質が上がり、より少ない気での効率上昇に成功した。
「師匠! 今度の修業は何をっ?」
「そうですね、そろそろ私との模擬戦をしましょうか」
「おお! 師匠自らお相手下さるのですか! 光栄であります!」
なんだかキャラが変わっているような気もするが、気しない方向でいこう。
「それじゃあ掛かってきて下さい。反撃はしますからそのつもりで」
「はい! 承知いたしました」
迷宮の中で悠々と模擬戦を始める俺たち。
「疾風突き!」
「甘い。無暗にスキルに頼ってはいけません。もっと攻め立てて隙を作りだす気で掛かって来て下さい!」
「はい! ありがとうございます!」
そんなこんなで更に二週間後、一月の訓練が終わった
◆
・ドロウル 種族:人間 性別:男 年齢:23歳 LV:42
称号:双剣舞踊 戦女神の信徒 冒険神の信徒 お人好し セイの弟子
特殊:戦女神の加護 ギルディラン流剣術皆伝
魔眼:暗視(神) 鑑定(神)
神器:戦女神の大剣
スキル
爆裂斬LV13(神) 氷結斬LV12 疾風突LV12 高速移動LV9 身体強化LV12 魔法強化LV11 練気功LV8 魔練功LV10
魔法適正
・火属性(神) 。水属性(中) ・風属性(中)
◆
中々に仕上がったと思う。少なくとも他の4人が束になってかかっても、多少苦戦はするだろうが倒せるはずだ。
丁度一ヶ月後、ギルドに行くと併設された酒場の一角にディンクスたちが居た。
「久しぶりだな、皆」
ドロウルが近付いて声をかける。
「ドロウル! お前どこに居たんだ!? 街から消えたみたいに姿を見かけなかったし」
盗賊のナンツが疑問の声を発した。
「実はあの後直ぐにジルタルの迷宮内に転移してたんだ。そこで師匠からたっぷり扱かれてたんだよ」
「迷宮都市!? なんでまたそんな所に?」
疑問符を浮かべるディンクスに簡潔に答えるなら――
「適度な強敵が揃ってますし、戦闘経験は多いにこしたことも無いですからね。今のドロウルは地下40階層でも通用する猛者となりました。以前とは比べ物にならない程に強くなっています」
「ジルタルの迷宮の40階層っていやあランクA相当のエリアだって聞くぜ? たった一ヶ月でそこまでになるかよ」
「もともと彼は下地が出来ていたのです。その下地を活かして叩き上げただけの事。何ら不思議はありませんよ。今では遠近両方で戦いが出来る一端の魔法剣士となりました」
「よし、なら俺が確かめてやる! 訓練場に行くぞ。模擬戦だ」
「ああ、望むところだ」
ドロウルは不敵な笑みを浮かべディンクスの後についていく。もちろん、俺らも。
「どうなるのかが楽しみだな。以前の勝敗は五分五分だったが、さてどうなるか・・・・・・」
神官であるはずのビリアンが血の気の多い台詞をはくから少し驚いた。
両者向かい合って木製の双剣と槍を手に合図を待っているようだ。俺たちが来たことで両者の緊張感が高まっている。
「師匠。合図をお願いします」
弟子の頼み(と言っても俺の方が年下なんだけど)とあっては否やは無い。静かに両者の中間地点に進み、号令をかける。
「はじめっ」
ディンクスは先手必勝、とばかりにドロウルに向け槍を突き出して――
ドロウルは、その一瞬で槍を躱しざまに素早く近寄りディンクスの右手を木刀で打った。
「いっ・・・・・・つぅ~。マジかよ、いつ攻撃くらったのかサッパリ分からん」
ディンクスは表情を引き締め。もう一本頼む。と、そう言った。
二人が最初の開始位置まで下がり、もう一度号令をかけた。
「はじめっ」
今度はディンクスも無暗に間合いを詰めたりはしなかった。ドロウルの一挙手一投足に注意を傾けている。
だが今度はドロウルの方から間合いを詰めていった。
するすると滑るように移動し、気付いた時には槍の間合いの内側に入っている。慌てて距離を取ろうとするディンクスをあざ笑うかのように、木刀の双剣を巧みに扱い、ディンクスの槍の柄を右手首と逆手にした右の木剣で挟み、左の木剣でディンクスの頭をスコーンっと打ちドロウルの二連勝となった。
今のは、ドロウルが修めているギルディラン流剣術の技の一つだ確か啄み固めという技だ。スケルトン相手によく使っていたのを見ていた。
「くそっ、まだだ! まだやれるぞ!」
「そのあたりにしておいた方がいいのではありませんか? 確か、ランクアップ試験を受ける為にドロウルの帰還を待っていたのでは?」
熱くなっているディンクスの頭を冷やす様にそう言った。
「ぐっ・・・・・・た、確かにそうだが」
「模擬戦ならいつでも出来ますし、今も待っていてくれているギルドの方にも限界はあると思うのですが・・・・・・」
ダメ押しで、「一月前から待ってくれているギルドへの筋を通さない訳にはいけないでしょうという」言葉を付け加えた。
「ドロウルが帰って来たのなら確かにそうだな。試験を受けるのが一番初めにしなくてはいけない事だな」
ナンツが同意してくれた。どちらにせよ、|ティア様の御神託(俺の仕事)は終わった。久しぶりに神殿に帰れる。
「それでは、私はこの辺りで帰らせてもらいますね」
「はい、師匠! お世話になりました!」
ドロウルが深々と頭を下げた。やっぱりキャラが変わっている気がする。まあいいけども。
「「「「ありがとうございました」」」」
他の四人も深々と頭を下げてくる。
「感謝の気持ちは私にでは無くユスティア様にお願いしますね」
こうして、俺の初の外国暮らし(?)は終わりを告げた。が。
「この串焼き、タレのほうと塩焼きの方50本ずつ下さい」
「あいよぉ! まいどありぃっ!」
「この小麦粉20キロ分下さい」
「はいよぉ20kgまいどありぃ!」
・・・・・・食料の備蓄はもはや趣味と言ってもいいレベルかもしれない。この後は魚河岸に寄って魚も買ったのだった。




