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1話

「・・・・・・はい、つながりました。念のため一週間は安静にして下さいね」

  マチルダが柔らかく微笑むと、治癒の神聖魔法を掛けてもらっていた男の頬が朱に染まる。

「腕をつなげてもらっときながらなんだが、今これだけしか持ってねえんだ。すまねえが、また稼いで持ってくるからよ、今はこれで勘弁してくれ。

 そう言って男は自分の財布ごと金を渡す。が、マチルダは財布に入っていた金貨を、三枚中二枚だけ抜き取り財布を返した。

「・・・・・・へ?」

 不思議そうな、悪く言えば間抜け面をして、自分の財布を見る。

此処ここの神官長の方針なんです。ゆっくり静養しなくてはいけないのに、有り金全部はたいたんじゃ宿も満足に泊まれないでしょう? だから、人間でも、魔物でも、戦働きして返していただくことになっています。勿論もちろん利子なんて取りませんし、ある時に払っていただければそれで構いません」

「なんっ・・・・・・いいのか? 払いに来ないかもしれないぞ?」

 マチルダは微笑したまま答える。

「そうなれば、二度とこの神殿での回復の神聖魔法を受けられなくなりますから」

 痛手でしょう? それは。と答えて神官長――俺の所に来ると。

「ザイザルさん。男性で右腕をつなぎました。先ずは二万ルピーです」

 俺は無言で金貨を受け取り、教壇の引き出しから帳簿を取り出すと、開いたページの末尾に、ザイザル・男・腕をつないで百万ルピー・現在2万ルピー返済。と書き記す。

「では、頑張ってあと98万ルピー返済して下さいね」

 鎧越しにくぐもった声で告げる。

 だが、これが彼らの常識をぶっ飛ばす発言であるのは俺自身にも予測できた。

 100万ルピー。充分な大金だ普通の人なら払えない。だが――

「ちょっと待ってくれ! 腕をつないでもらってたった・・・100万ルピーってどういうことだ?」

 そう、冒険者にとっては100万ルピーと言うのは無茶さえしなければ、充分に払える金額なのだ。

 ダンジョンの宝箱から一獲千金が手に入ることも珍しくない。かく言う俺も四,五十万くらい入った宝箱なら幾つも見つけている。

「出世払い、とでも言いましょうか。稼げるようになったらまた返済に来てください。銀貨か金貨でお支払いして抱ければ有り難いですね。一度に払える金額ではないので、分割も受け付けています。というか、基本は分割払いですね」

「いや、そこじゃねぇよ。千切れた腕つないで貰って100万ルピーじゃあ安すぎるだろうが。おまけに利子は無しの出世払いだと? 欲がねぇにも程があるだろうが! 他の神殿は少なくとも1000万ルピーはとるぞっ」

「当神殿は金銭の支払いの代わりに戦女神ユスティア様への信仰を要求しております。治療費が安いのもユスティア様の、慈悲と心得て下さい。

戦えいさみし者。その武によって謝意をあらわせ。ユスティア様の言葉です」

「・・・・・・分かった。恩に着るぜ、ユスティア様」

「それでは、お大事に」

「ああ、ありがとうよ」


「マチルダ、腕を上げましたね。以前に比べて10分は早くなっていましたよ」

「ユスティア様への信仰で、着実に腕が上がっているのが自分でも分かるんです」

 マチルダは嬉しそうに語る。以前は30分ほど掛かっていた腕をつなぐという治療が、今回は20分足らずでつなげられるようになっていた。

『そんな女神より使徒への神託ですよ』

(久しぶりにきましたね、神託)

 ここしばらく無かった神託だ、重要なものかもしれない。因みに俺がこちらの世界に迷い込んでから約8か月が経とうとしている。

 外は雪が積もり、白い道となっている。神殿と孤児院は聖域と化しているので雪は積もらず蒸発していってる。

(それで、今回は何をすればいいのでしょう?)

『3日後の昼、隣国にあるソルラン共和国の首都、ソルランの冒険者ギルドに行って、起こるであろう肉体言語による諍いを魔法を使わずに、力ずくで鎮圧して欲しいのです』

(三日後の昼ですね。分かりました)

『喧嘩をしているうちの片方はドロウルと言うのですが、加護と神器を与えたら途端にそれらに任せた戦い方しかしなくなり、地力を引き出せずにそのままCランクになったのです。

このままでは折角のポテンシャルを引き出せずに終わりそうなので、一ヶ月ほどかけて、鍛え直してやってほしいのです』

(成程、要はユスティア様の顔に泥を塗るような男と言うことですね。お任せ下さい。戦女神の信徒ともあろうものが弱卒では話になりませんしね)

『何とか鍛えてやってください。本来ならランクAに匹敵する力を持っているので』

(承知)




 3日後、俺はまたエメの背中に乗っていた。

『このまま南に真っ直ぐ進めばソルランですよ』

(いつも道案内させてすいません、ティア様)

『いえこのぐらい。どうということも無いですよ。それより、くれぐれも頼みますよ?』

(もちろんです。立派な加護持ちに成長させてやります)

 話していたらソルランが見えて来た。

『それでは、見守らせてもらいますね』

(はい、ではまた)

「エメ、街道から離れた所に降ろしてくれ」

『承知』

 とだけ返事が帰って来た。こいつ、俺に似て来たな。



 ソルランに到着した俺は門衛に冒険者ギルドの場所を訊き、真っ直ぐに向かった。

 ギルドについてドアを開けたら、既に取っ組み合いの喧嘩をしいている最中だった。慌てて人垣を越えて喧嘩している二人の襟首をつかみ、シンバルの様に頭と頭をぶつけてやる。

「がっ」

「ぎっ」

「ギルドで暴れるな、迷惑だ」

 男たちは打ち付けた辺りを押さえて蹲っている。

 また襟首を掴んでずるずると引きずり併設されている酒場の適当な席に座らせると、パーティーメンバーらしき者たちが三人同じテーブルに座った。

 代表するように神官服の青年が口を開く。

「二人を止めていただいてありがとうございます。何が御馳走させてください」

「いえ、無用です。ここに来たのは戦女神ユスティア様の御神託があっての事なので」

「神託・・・・・・ですか? 見た所戦士にしか見えませんが・・・・・・」

「神官戦士です。神聖魔法も使えますよ」

「はあ、そうなんですか?」

「それで、何が原因ですか? さっきの喧嘩は」

「あ、はい。実は・・・・・・」


 簡単に言うとBランクへの昇格試験を受けるか受けないかで意見が割れてああなったらしい。パーティーリーダーが強硬に反対したため、揉めに揉めたらしい。

「さっきも言いましたが、私は戦女神ユスティア様の神託を受けている。ドロウル、貴方を鍛えろという内容だった。まだまだ伸びしろがあるのに地力を磨かない貴方を」

「俺を!? なんだよそれ、なんでそんなこと・・・・・・」

 後半は項垂れながらの言葉だった。つまり――

「自分でもわかっているんでしょう? 今の貴方はユスティア様の加護を受けるには相応しくない。ユスティア様は、一月かけて貴方を鍛え直せとの仰せでした」

「ああ。何となくは分かっていたよ。ユスティア様の顔に泥を塗るような戦い方だってのも」

「なら、否やは有りませんね。早速鍛え直しましょう。ですが――

とりあえず、速めの昼食を済ませてしまいましょうか」

 ただで席を使われては店の沽券にもかかわるだろう。俺たちは食事をした。

 食事が来るまでに軽い自己紹介も済ませた。槍使いのディンクス、盗賊のナンツ、神官のビリアン、魔法使いのビジェイ。因みに全員男だ。ドロウルを鍛えるのにも賛同を得られた。満場一致でドロウルを昔みたいな頼りがいのある男にしてくれと頼まれた。

 こちらも戦女神の使徒であることを明かすと、全員が納得の表情でドロウルにエールを送った。

 食後、直ぐにドロウルとジルタルへ転移した。

「し、師匠。ここはどこですか?」

「迷宮都市ジルタルの迷宮の地下30階層ですよ」

「ひいっ、迷宮!?」

「ビシバシしごいていきますよ?」

 ◆

・ドロウル 種族:人間 性別:男 年齢:23歳 LV:38

称号:双剣舞踊 戦女神の信徒 冒険神の信徒 お人好し

特殊:戦女神の加護 ギルディラン流剣術皆伝

魔眼:暗視(神) 鑑定(神)

神器:戦女神の大剣

スキル

爆裂斬LV8(神) 氷結斬LV7 疾風突LV9 高速移動LV4 身体強化LV3 魔法強化LV8 

魔法適正

・火属性(神) 。水属性(中) ・風属性(中)

 ◆

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