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6話

『ほう、私の右腕を切り落としましたか。流石は女神の使徒、やってくれますねぇ・・・・・・ですが、まだまだこれ位では戦意を喪失したりはしませんよ?』

むしろ戦意高揚しているな・・・・・・

一先ず距離をとろう、と思った時には遅かった。

「ぐっ」

 ドラゴンの尾が俺の体を吹き飛ばす。そのまま木々をなぎ倒しながら水平に飛び、10m程吹き飛んだところでバランスをとり、後ろに滑りながら足を地につけて勢いを殺した。咄嗟に盾をかざして後ろに跳んでたのでそこまでダメージはない。木にぶつかった位じゃ鎧はものともしない。ちょっとやそっとの衝撃なら平気だし。

 離れた間合いを縮めるようにゆっくりと歩み寄る。 

 再び向かい合う俺とドラゴン。

『それにしても恐ろしい切味の斧ですね、私の鱗をこうも容易たやす

切り裂くなんて。ましてや魔練気が恐ろしい程に研ぎ澄まされている・・・・・・』

 呟くような感じの思念を聞きつつ、俺は神聖魔法による速度や耐久力上昇などの支援魔法を発動させる。

「流石に手強いな。片腕落してもまだ元気とは」

『何を言うかと思えば、あなたなんでほぼ無傷ではありませんか』

「そりゃあ、脆弱な人の身だからな。一発でも直撃したら一巻の終わり、だろ?」

『その通り、なんでしょうけど、釈然としないのは何故でしょうね?』

「さて、な」

 言いつつ斧を構える。と、同時にドラゴンが息を大きく吸い込んだ。

 衝撃波を発生させながら距離を詰める。だがそうはさせじとドラゴンはブレスを吐く。それを回避しながら無防備な首を目がけて左――ドラゴンから見ると右――から襲い掛かる。

 しかし、そう上手くいくはずも無く、反転したドラゴンの左の爪で防がれ機会を逃す。しかし、瞬時に狙いを変え、背中の右翼を切り落とした。

『ぐっ、腕だけならず翼まで・・・・・・。早々に飛んでおけばよかったですね』

「そうなったらこちらも困り果てていただろうがな。いや、飛ぼうとする時の無防備な首を落とせたかも知れないな」

『成程。その可能性はありますね』

 またもや俺が斧を構えドラゴンが息を吸いこむ。

 一泊おいて吐き出される炎を気にも留めず歩いて近付く。

『な、なぜ平気なのです! 普通、人間は私の炎を恐れるというのに! 燃え落ちる様子など一切いっさい見当たらないっ』 

 焦るような言葉に俺は一言「祝福があるからな」と呟いた。

 丁度炎を吐ききった所で肉薄したので、至近距離からの斧と爪との応酬が始まった。

「ははは、参ったな。こんなに手強いなんて思ってもみなかった」

『それは私も同じです。たった一人の人間にこうも手傷を負わされるなんて』

 牙を躱し爪をいなし、尾の一撃を防ぐ。中々切り込める隙が無い。

 またもや息を大きく吸ったドラゴンはブレスをはいてくる。

今度はあえて待っ正面から突っ込んでいく。公翼の盾でブレスを防ぎながら接近していく。

『馬鹿な! 私のブレスを防ぐなんてっ。その盾は神器ですね!?』

 ブレスをはきながらも直接頭の中に声が響く。器用なことだ。

「正解だ、ついでに斧も鎧も神器だよ」

 そのままドラゴンのブレスを防ぎながら近付いていき、首を落とせる間合いまで接近した。

 そうしてブレスが途切れた一瞬で左腕を叩き斬った。

『・・・・・・何のつもりですか? 今、首を落とせたでしょう?』

 確かに、今、首を落とせた。だがそうしなかった、それは――

「同時に左腕の爪がこちらを貫いていたかもしれないだろ? 結構際どいタイミングさったろう? それに無駄な殺生はしたくない。俺たち、良い喧嘩友達になれると思わないか?」

『・・・・・・成程。そう言っていただけるのは喜ばしいですが。既に私は空を飛ぶこともできない有様です。これでは喧嘩友達としては失格です』

「繋げてやるよ、腕と翼。これでも神官戦士だからな神聖魔法は得意だし」

 言うが早いか最初に切り落とした右腕を持ち上げて切断面にあてる。

「アークヒール」

 魔法を発動する。と、腕がつながった。

『これは凄い――。流石は戦女神の使徒、と言った所でしょうか』

「これ位は朝飯前だよ」

 続けて左腕、翼と繋げていき、治療は終わる。

「これでよし。それじゃあ、って、そういえば名前聞いて無かったな。なんていうんだ、お前」

『名は無いですね。そもそも私たちには個体を識別する習慣は無いですから』

「なんだ名無しか。じゃあ俺が名前を付けてやるよ」

 そう言って俺は考えてみる。目の前の鮮やかな緑色の鱗を持つドラゴンの名前を。…・・・よし、これだ。

「お前の名前はエメラルドだ。普段は愛称でエメって呼ぶことにしよう」

『エメラルド、ですか。安直な気もしますが悪くないですね、名前があると言うのは』

「それじゃあエメ、お前が元々いた場所まで連れてってくれ。ワープポータルを設置するから。もともと、人里近くに現れたドラゴンをどうにかしてくれって依頼でここに来たんだし。悪いけど元の場所に戻ってもらう」

『フム。私は元々北の果てにある山脈に住んでいました。私の翼なら半日もかからないでしょう』

「じゃあ、試しにここにワープポータルを設置しておいて、エメも一緒にワープできるか試してみよう」

『成程。それが可能なら行き来が簡単になりますね』


 背中に乗せてもらって飛んだら、簡単に音速を越えたスピードで空を飛んだ。道理で、音速の攻撃に反応できる訳だ、と感心した。

その後、試してみた所エメも一緒にワープ可能だった。



「よくやった三人目! ドラゴンを退治するとは、流石ランクSじゃ!」

「退治と言っても喧嘩友達になっただけですけどね」

「はっはっは、ドラゴンが喧嘩友達とは剛毅なことですなぁ」

 王都のギルド長のフットリクスさんが肩をバシバシと叩いてくる。秘書のガイナルさんは俺を称賛しているようでいて、冷汗らしきものをかいている。きっとドラゴンと喧嘩する場所が不安に違いない。街道の近くなんかだったら余波で旅人たちに被害が出かねない。

「ガイナルさん、安心して下さい。今後ドラゴンと喧嘩する場合は今回と同じ、人気のない山麓でやりますんで」

「そ、そうですか。それは良かった」

 あれ? 今度はやや引き気味の反応だ。なんでだろう?

 まあいいや。それよりも・・・・・・

「報酬の件なんですが、どのくらいが相場何ですか?」

 そう切り出すと、二人は真剣な表情になった。

「まず、報告にあったドラゴンの大きさから間違いなく成体のドラゴン・・・・・・完全な成熟体だと言うことが分かっている。そうなると依頼報酬の相場は金貨百万枚が国とギルドが7:3の割合で支払うことになる。

 だが前例と比較しても、おそらくはむしろ安いくらいじゃ。昨日の夜にも言ったが、3メートル前後の個体ですらランクA冒険者が数十人単位で必要な程じゃ。それが7メートル前後にまで育っているのだからランクS冒険者程の存在が必要不可欠な事態といえるだろう」

「歴史書を紐解いてみても5メートル級のドラゴンの討伐など数件しかありませんでした。それらは全て、ランクS冒険者を複数集めてのものでした。これをソロで、となると金貨二百万枚でも不思議ではありません」

 フットリクスさんの説明を引き継ぐ様にガイナルさんが補足説明してくれた。

「それだけの額、直ぐに用意出来ないですよね?」

「はい。一週間程お待ちいただき、この王都でシントス王直々に謁見の間での受け渡しとなるでしょう」

 成程。国王自ら報酬を渡すのか。面倒そうだな。

「それじゃあ私は家に帰ります。お疲れ様でした」

 そう言ってきびすを返す。するとその背中に。

「明日になったらまた来てくれ。何日後になるのか伝える」

「分かりました」

 一言だけ返して今度こそギルド長室を出る。

 金貨百万枚、一千億ルピーの時点で一生遊んで暮らせる金額だな。これは働く必要性が無くなる。

 とは言え、迷宮探索は続けるつもりなのだから、魔石でまだまだ稼げる。うちのちび達にも充分な暮らしをさせてやることができる。頬が緩むのをこらえ、家路についた。


  ◆

御手洗 清 (セイ)

年齢16 男 LV72

称号:忘れん坊 迷子 魔獣殺し 戦女神の寵児 戦女神の信徒 冒険神の信徒

特殊:記憶喪失 適応補正 清めの手水 戦神の加護 冒険神の加護 炎の祝福

魔眼:麻痺LV5 看破LV7 選別LV4 暗視LV4(神)

スキル

攻撃補正LV37 被ダメージ軽減LV15 回避補正LV29 欠損再生LV1 盾殴りLV27 戦場闊歩LV36 第六感LV18 操練魔闘法LV20(神)

魔法適正

・水属性(高)・光属性(高)・雷属性(中)・無属性(激高)・影属性(高)・土属性(神)・火属性(中)

使い魔:コアトル、エメラルド

  ◆

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