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11話

 スニーキングリザードは体が大きく、三人乗っても大丈夫。なのだが・・・・・・

「・・・・・・」

 鞍が無いので俺の体の前にマチルダさん、後ろにレミリアさんが同乗している。

繰り返すが鞍が無い。ので、身体を密着させないとずり落ちてしまう。そうなると色々と柔らかい所が当たったり擦れたり押し付けられたりする訳だが・・・・・・

 以外にも二人はそれを、嫌がるどころか気にしてもいない素振そぶりだ。

 因みに、二人を連れていく事に関しては、ディアックさんからとっくに承諾を得ている。

 既に王都シストワールを発って五日が経過している。帰り道の半分までを消化している。今回は特に盗賊やモンスターに遭遇することも無く、皆、比較的にのんびりとした空気で帰りの途についている。

 帰りは急ぎではないが行きと同じ道筋をたどるらしい。

 夜の見張りは交代制だが、俺はその中から外された。何故かと聞くと、往路で活躍したからだと言う。

 紅蓮の面々に、「盗賊の20人や30人くらい、あんたらだって物の数じゃないだろう?」と言ったのだが、「だとしても行きで役に立ってなかったからな。このぐらいはさせてくれ」と言い返されたので、大人しくひっこんでおくことにした。

 マチルダとレミリア(呼び捨てでいいと言われた)には、買っておいたテントを使ってもらって俺はギルドが用意してくれたものを使っている。流石に同衾どうきんは出来ないし、一人用のつもりで買ったから三人は狭い。

 


 残りの五日も何事も無く無事に過ぎていった。

 迷宮都市に戻ってきた俺たちは、先ずはギルドに行き依頼を完遂した。俺はその場で金貨410枚を受け取り、退散した。俺以外の面子は一パーティーにつき金貨10枚だったようで、俺一人が大量に報酬を貰っていたようだった。

 ただ、最初からそういう契約だったらしく、文句は一切出てなかった。

 ギルドを出た俺とマチルダ、レミリアの二人は、三人でゴルゴット商会に向かった。依頼していた神殿と孤児院は完成しているだろうか? 

「失礼する」トン、トン、トンとドアをノックしてから開けて、ゴルゴット商会の屋内に入る。

と、正面のカウンターに居る受付嬢たちの中にセリナさんが居るのを見て真っ直ぐそちらに向かう。

「お久しぶりですセリナさん。依頼した神殿と孤児院はどうなってますか?」

「おかえりなさいませセイ様。神殿も孤児院も一昨日に竣工いたしました。家具類も指定通りに昨日運び込んでありますので、すぐにでもお使いいただけるように仕上がっております。只今案内の者を連れてまいります」

「いえ、場所は分かりますから、案内は必要ありません」

「分かりました。今回は良き商談をありがとうございました。また何か有りましたらゴルゴット商会をよろしくお願いいたします」

「こちらこそ。また何かあったらよろしくお願いします」

 そう言ってまた扉を潜り、表へ出た。



「これは凄いな・・・・・・」

 神殿は大きな門構えでその威容を誇っていた。

隣接した孤児院も大きな二階建てで。200人位簡単に生活できそうだ。

「先ずは・・・・・・と」

 アイテムボックスからレリーフを取り出し、入口の脇にある窪みにはめ込む。すると――

「おお……これは凄いな」思わず先程と同じ言葉を繰り返してしまう。

 神殿全体が淡く発光している。

「取りあえず中に入ろう」

 呆けていた二人を促し神殿内に入る。正面には人間大のティア様の神像があった。淡く発光している神像に思わず膝をついて祈りを捧げた。後ろの二人も同じ様に膝をついたのが分かる。

 この部屋の広さは大きめの体育館一つ分位ありそうだ。両脇に備え付けの長椅子に正面に教壇がある。その奥にティア様の神像がある。俺たちは教壇の前で膝をついている。

「さて、部屋に案内しよう。ついてきてくれ」

 俺は二人を伴って神像の両側にある通路のうち左を通り裏に回る。そこには更に奥へと続く道があり、左右に三つずつ部屋があった。奥には炊事場がある。

 俺は左の一番手前の部屋を指して「この部屋は俺が使わせてもらう」と言って部屋に入った。密かに買っておいた小型のティア様像を部屋の中にあった机の上に置いた。

 部屋はベッドが一つに机と椅子が一組あるだけの質素なものだ。広さは12畳といったところだろう。中々広い。

「ほら二人の荷物だ、好きな部屋を使うといい」

 アイテムボックスから二人の荷物を取り出し、渡す。

「では、私はセイ様の向かいの部屋を」とマチルダが、「ではその隣を私が」とレミリアが言った。

「孤児院の方だが、今はまだ人っ子一人いない。ここはスラムに近いから孤児も多い。二人にはそんな孤児たちを見つけ次第拾ってきて欲しい」

 もちろん、俺もこれから見つけ次第連れてくるつもりだ。今日の所は近場のスラムを探す。

「それじゃあ、俺はこれから孤児を集めに行ってくる」

「えっ、今からですか?」

 マチルダが驚いたように言う。確かに、もう6時だ。辺りは暗くなってきている。夜のスラムは危険だ。とはいえ、戦女神たるティア様に加護を授かっている身としては、たかがスラム。俺を倒したければドラゴンでも連れて来いと。

「今から、だ。夕食はまだ待っててくれ。行ってくる」

 言うが早いか直ぐに外へ出た俺は近辺から練り歩くのだった。


 翌日、朝の5時に起きた俺は、塩で味を付けた雑穀の粥とサラダ、サイコロステーキを32人分作っていた。

 場所は孤児院の厨房。大量に作る為の大鍋や火力の強いかまどなどが揃っていて量を作るのに適した作りと設備になっている。

 俺が起きたと同時に起きたマチルダとレミリアが手伝ってくれているけれど、大量の食事を用意するのは昨日も思ったけれど中々に大変だ。

 匂いに釣られて何人かが起き出してきた。もうじき6時だ、起きてきた子たちに皆を起こして呼びに行かせた。

 昨日は1時間で29人の孤児を拾ってきた。少ないと思って帰って来たがそんなことは無かった。29人を風呂に入れて、29人分の洗濯をして、29人分の食事を用意する。昨日は大童おおわらわだった。

 今朝も自分たちも含めて32人分の食事を用意している。食器などは食堂の棚に大量に用意されていたからなんとかなった。全て終えた時には11時過ぎだった。逆に、よく3時間で全部終わったものだと思った。かえの下着なんかは無かったので、みんなパンツ一丁だったけれど、孤児院の各部屋には毛布が用意されていたので風邪などの心配はいらなかった。

「皆、食事の前に戦女神ユスティア様に祈りを捧げなさい」

「「「「はーい」」」」

 子供たちが一斉に返事をする。全員、昨日洗濯した服を着ているため、多少は身なりが良くなっている。今日はゴルゴット商会に児童用の衣服を発注しに行こう。

ッポーン

 久しぶりにこの音を聞いた。信仰心が一定値まで上昇した時に聞こえる音だ。

『暫くぶりですね。今回は欲しがっていた土魔法を授けましょう』

(ありがとうございますティア様。もうこれ以上は上がらないかと思っていました)

『限度はありませんからね。理論上は際限なく上昇しますよ』

(それはまた凄い。この先もどこまで上がるか楽しみですね)

『そうですね。斧、使い魔、鎧、加護と既に五回以上も上昇していますから、直ぐに次とはいかないでしょうが。それでも確実に少しづつ累積していますので、そう遠くない未来に達することでしょうね』

 その言葉に元気づけられた俺は、ますます信仰を強めるのだった。

  ◆

御手洗 清 (セイ)

年齢16 男 LV65

称号:忘れん坊 迷子 魔獣殺し 戦女神の寵児 戦女神の信徒 冒険神の信徒

特殊:記憶喪失 適応補正 清めの手水 戦神の加護 冒険神の加護 炎の祝福

魔眼:麻痺LV4 看破LV5 選別LV3 暗視LV4(神)

スキル

攻撃補正LV31 被ダメージ軽減LV15 回避補正LV27 欠損再生LV1 盾殴りLV23 戦場闊歩LV30 第六感LV10 操練魔闘法LV17(神)

魔法適正

・水属性(高)・光属性(高)・雷属性(中)・無属性(激高)・影属性(高)・土属性(神)

使い魔:コアトル

 ◆


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