8話
大した話でもないのに投稿が遅くて申し訳ないかぎりです。
ゴルゴット商会を後にした俺は真っ直ぐに宿へ戻った。
宿のおかみさんに明後日から王都に行くことを告げる。宿代は半年分先に払ってあるから部屋をキープしといてくれるそうだ。
心苦しいが、一ヶ月後には新居(神殿と孤児院)に移り住むことを告げた。先払いしてある宿代は出ていくときに残りの日数分きっちり日割りで返してくれるそうだ。
次の日、干し肉やパン、串焼きなどを買ってはアイテムボックスに入れていく。一応、雑貨屋でテントも買ってあるし、虫よけの香も買った。飲み水は魔法で出せるし水筒だけを買った。
その後はまた迷宮で魔石を荒稼ぎしていた。場所は53階層。この日はちょっと毛色の違う魔物が出た。
オークだ。これまで見たことの無かったオークが現れたのだ。練度の高い練気功を使い、上層階とは一線を画す強さを持っているのは同じだけれどドロップアイテムが少し違った。
と言っても、魔石はドロップした。例のゴブリンと遜色ないのが。それ以外でオークのばら肉や肩ロース、豚トロなどがドロップしたのだ。
ティア様曰く、ばら肉や肩ロースはともかく豚トロがドロップするのは稀であるそうだ。
その割に、42匹狩って、16個もドロップした。非常食として、これらの肉は売らないでおこう。ティア様が言うには美味らしいし。
宿に帰って夕飯を食べ、ゆっくり風呂に漬かって早めにベッドに入った。明日はいよいよ王都に出発だ。
明朝、予定の時間の三十分前にギルドへ顔を出した。既に南門の前に集まっているとの事だったのでそちらへ向かう。
「おう、来たなセイ」
ギルド長であるディアックさん自らが王都まで出向くようだ。滅多に無いことだろう。この迷宮都市ジルタルを離れる事なんて何十年ぶりの事に違いない。
「おはようございます、ディアックさん。」
「おう、おはよう。道中は宜しく頼むぞ?」
「ええ。微力を尽くしますよ。我が戦女神様に誓って」
「そいつは頼もしいのう」
随伴するのは全部で二十三名で、内俺を含めた六人がランクA冒険者らしい。後はBランクが十二人、ギルド員がディアックさんを含めて五人らしい。今初めて知った。
まあ、昨日はギルドに寄っていないので当然と言えば当然かも知れない。
ともかく、一通り冒険者連中に挨拶して回っとこう。
「おはようございます。ランクA冒険者のセイです、どうぞ宜しく」
「君が噂の使徒様か、本当に全身鎧なんだな。俺はダル。Aランクパーティー紅蓮のリーダーだ。宜しくな」
「俺はカイレン、Bランクパーティー荒鷲隊のリーダーだ。宜しく」
紅蓮のパーティーメンバーが五人、荒鷲隊のパーティーメンバーは一二人だ。
なんでも、荒鷲隊は馬車の護衛依頼をよく請け負うらしく勝手知ったる、と言う感じだ。今回は急ぐので間で村に寄る事は無いらしい。
Aランクパーティー紅蓮は迷宮を40階層まで探索している凄腕だ。40階層から先には進んでないらしいが。
当たり障りないことを話していたら集合の号令がかかった。
「少々早いが全員揃ったので出発する。では出発!」
各々宛がわれた馬や騎獣に乗っていく。
俺に宛がわれたのはスニ―キングリザードという調教された魔物だ。体高2メートル、全長5メートルのでっかいトカゲだ。
鞍がつけられたそのスニリザだが、その名の通り隠密行動に適していて、積載重量もかなりのもの。全身鎧の俺が乗ってもスイスイ進む。まあ、念のため女神斧はアイテムボックスに入れておいた――忘れそうになるけれど持っていて重さを感じないのは俺だけで、本体はかなりの重量がある――し、重さに関しては問題無いだろう。
そんなこんなで、出発と相成った。
道行は順調で、既に半分の五日間を消化した。残りの五日間も何事も無ければいいのだが・・・・・・
そう思ったのがフラグになったのか、七日目の昼頃に盗賊が現れた。合計三十人の大所帯だった。
「おとなしく積み荷を渡しな。そうすりゃ命だけは助けてやる」
との事だったが・・・・・・。
『セイ、外道の輩たちに天誅をくだしなさい』とのティア様の仰せに従い軽く蹴散らしてやった。
具体的にはボルトスネークという魔法の雷でできた蛇を十匹ほど盗賊たちに向けて放っただけだ。自由にコントロール出来るので、全ての盗賊を感電させて行動不能にした。
競りの日に間に合わなくちゃいけないし、若干急ぎぎみだったのでさくっと全員殺して埋めた。賞金首も居なかったらしいので特に反対意見は出なかった。
人を、それも無抵抗の人間を殺したのは初めてだったが、特に感じるものは無かった。確か、前の世界では殺人はタブーだった筈だが、今の俺には関係無いな。神のお告げでもあったし、責任はティア様が負ってくれるし。
公明正大なる我が戦女神様は非道や外道を嫌う。野盗の類は問答無用で切り捨てるのが教義だ。
そして盗賊三十人分の武器と防具はちゃっかり俺のアイテムボックスの中だ。
因みに、魔法一発で三十人を無力化した俺はランクA冒険者の面目躍如といったところか、皆に感心された。この程度の雑魚が何人集まろうが俺にとっては物の数ではない。賞賛を受けるのは面映い思いだが、旅の準備を全て任せきりにした身としては漸く役に立てたと思うばかりだ。
そんなこんなで大したイベントも無く王都へとたどり着いた。
門から伸びてる順番待ちの列に並び、ゆっくりと進むにまかせる。やがて順番がきてそれぞれ身分証を門番の兵士たちに見せる。
「はい、結構です。お通りください」
全員問題無く門を通過した。最初に宿屋へ向かうらしいが二三人の大所帯だ、流石に事前に部屋を予約してあったらしく、銀のランプ亭という大きな宿に泊まることになった。
部屋の鍵を受け取った後は荒鷲隊とギルド員二名が留守番。俺と紅蓮の面々はディアックさんたちと積み荷の護衛だ。競りの会場迄馬車を囲んで歩く。
流石に王都。活気があるし街並みも綺麗だ。高くて大きな建物も多く、この国の要衝ということが実感できる。
程無く、競りの会場についた。積み荷を渡し、競りに登録する。番号札みたいな割符を受け取り、手続きを完了させる。
と、ディアックさんが近寄ってきて「お主も魔石を競りに出してはどうじゃ?」と言われた。
俺は少し悩んだが、
「そうですね、そうします」と言ってアイテムボックスからラグビーボール大の魔石を五つ取り出して出品登録をし、割符を受け取った。
競りは明日と明後日の二日間行われる。俺の魔石はギルドのと一緒に明後日の最後に回された。目玉商品として扱われるようだ。
その為、明日一日は休暇として自由にして良いそうだ。好きに観光しろと言われた。
丁度いいから、明日はティア様を祀っている本殿に行くことにした。




