6話
評価して下さった方々、ありがとうございます。一人でも読んで下さる方が居るのであれば、駄文を投稿させていただきます。
52階層。なんてことは無い、やっぱり50階層や51階層と同じ。レベルの高い魔物が出て、ドでかい魔石をドロップして。
代り映えと言えばフルアーマーアントというちょっとかっこいい魔物が出る様になたくらいだ。何ともスタイリッシュな外見をしている。
そんな訳で、早くも53階層への階段を探している訳なのだが・・・・・・
いざ探すとなると中々見つからない。もういいからさくっと53階層に降りてしまいたいというのに。もうこの時点で、当面の目標は60階層到達だな、という思いだった。何階層まであるのか知らんけども。
あれ? 何か首筋がちりちりするぞ? 何か嫌な予感――
「グガ?」
通路の先から曲がってきた相手に硬直した。人? いや人じゃない、角がある。
看破で――!?
ハーフオーガ? なんだこの強さ、この間のドラゴニュートに匹敵するんじゃないか?
俺と同じスキルを持ってて戦場闊歩がLV21、欠損再生がLV31だと!?
と、驚いていると。
「ニンゲン、、オヤジノ、カタキ。ニンゲン、コロス」
何か知らんが向こうからのヘイト値がMAXらしく襲い掛かって来た。
「コア、さがってろ!」
――速い! よく練られた気が全身をくまなく流れている。そしてその錬気功は肉体自身の防御力を上げに上げている。あれ程練られた気、強度は鋼に等しいのではないだろうか。
ここまでの練度の練気功は自分を除けば初めてだ。幅5メートルはある壁の両端を交互に飛び交い接近してくる。
(焦るな俺。やることはいつもと変わらない)
練り上げた大量の気を全身に、練り上げた大量の魔力を鎧や斧、盾に。高速で循環する気と魔力を制御し、襲い来るハーフオーガの斧を冷静に盾で防ぎ、その横っ腹にミドルキックを喰らわしてやる。
ドゴンッと大きな音とともにハーフオーガが壁に突っ込んでいった。しかし――
ごとり、と壁の破片を押しのけながら、平然と立ち上がるハーフオーガ。相当にタフなのだろう、看破で見たスキルには堅体というものもあった。
先程から麻痺の魔眼を使っているのだが、まるで効果が無いし。こりゃあ肉弾戦は避けた方がいいかもしれない。
「アイスマシンガン」
凍てついた弾丸が無数に放たれていく。
然し、避けるそぶりすら見せずに全弾喰らっていた。氷の弾丸は、全て表皮で防がれている。これはいよいよ切り札の出番かもしれない。
「ニンゲン、ツヨイ。デモオレ、モットツヨイ」
「いいや、俺の方が強いさ」
そこは反論しておかないとな。戦女神の使徒として、戦闘で後れを取る訳にはいかないし。
あらためて観察すると、ハーフオーガは腰にボロ布を巻いている以外は全裸だった。右手には素人目で見ても業物だとわかる斧を持っている。
そしてその全身には練り上げられた気が循環しており、体表が淡く光っている。肌は褐色で額からは二本、頭の後ろにも二本の角が生えていた。寝る時に邪魔になりそうだ。
黄色の瞳は瞳孔が縦になっており、口には鋭い牙が生えている。全身は分厚い筋肉に覆われており巌の様な肉体だ。
と、そこまで観察した所で声を掛けられる。
「ググ。オマエ、ツヨイ、ミトメル。デモオレ、マケナイ。オヤジノカタキ、ウツ」
会話が可能ならどうにかならないか? と思いこちらからも声を掛けてみる事にした。
「待ってくれ、俺はお前のオヤジを知らない。ここに来たのも初めてだ」
自分には害意が無いと何とか説得を試みる。
「カンケイナイ。ニンゲン、ゼンブ、テキ。コロス」
が、やっぱり何故かヘイト値がMAXの様子。交渉は決裂、戦闘続行だ。
斧と盾を構えなおし、向こうの出方を窺う。ハーフオーガってことはオーガと人間のハーフって事だよな? 多分。そうなった経緯は何となく分かる。どういう流れで、どうなってハーフオーガなんて存在が産まれたのかは、何となく。
だからどうと言うことでもないが、相手が半分とはいえ、魔物なのは確かだ。それも、ふりかかる火の粉であり、かつその火の粉は脅威。ならば戦うに否やは無い。我が偉大なる戦女神ユスティア様に捧ぐ一戦としよう。
対ドラゴニュート戦の時の様に音速の連撃で仕留めてやる。
わざわざ言うことも無かったが、なんとは無しに言ってしまった。
「いくぞ」
口をついた言葉も置き去りに、音速の領域に突入した。
だというのに――
「グギギ」
躱された、首を刈り取るつもりの一撃は驚異的な反射神経で避けられ、斧は左腕を切断するにとどまった
だが――
「逃がさない」
更に音速の一撃をみまう。今度は斧を盾にされたが、盾になった斧を破壊出来た。
「グオッ」
切り落とされたはずの左腕が再生し始めている。なんて速度だ、改めて恐ろしい魔物なのだと思い知らされる。
「グギギ、ク、ラエ」
ハーフオーガの右手の平から気が閃光の様に放射された。
神器の公翼の盾をかざし、防御フィールドをタワーシールド状にして防いだ。
が、押される。足が石畳の上を滑っていく。気の放射が終わる頃には、俺の体は3メートル程後ろに下がっていた。通路にはブーツのこすれた跡が残されている。
あらためて前を見る。ハーフオーガの左腕がみるみるうちに再生していく。断面から骨が、肉が、盛り上がっていき左手の手指を形作る。
これが欠損再生LV31の力か、と慄いていると。
「ギギ、ニンゲン、ツヨイ。マエノヤツヨリモ、ツヨイ。」
前の奴? もしかして俺の先輩か?
「マエノヤツラ、ニゲタ。デモオマエ、ニゲナイ。ヒトリデモ、タタカッテイル」
「魔物が怖くて冒険者なんぞやってられるか。アホらしい」
「オレニ、オクノテ、ツカワセタ、ヤツ、ハジメテ。キコウハ、フセイダ、ヤツモ、ハジメテ」
気功波? さっきの技の名前か。同名のスキルも持っているようだ。LVは16みたいだが脅威だな。
「デモモウオシマイ。オレ、ノゼンリョクデ、ショウメツサセル」
そう言ってハーフオーガが両手を前にそろえる。
まずいかもしれない。さっきのを両手でやられたら単純に威力が二倍になる。ハッタリでなけりゃ両手の其々から気功波を出せるんだろう。
俺は慌てて合一法で気と魔力を混ぜ合わせ練り上げる。間に合うか――
「ギギ、サラバダ、ニンゲン」
――間に合った!
「それはこっちの台詞だ」
今度は音速を遥かに超えて距離を詰めた。そして――
左肩から右の脇腹にかけて断ち切った。
「ギィッ!?」
「お別れだ、ハーフオーガ。安らかに眠れ」
崩れ落ちる様に倒れ伏すハーフオーガ。その目は驚愕に染まっていた。だが――
「ギギギ、クラエ」
分断された筈の体――両手から気功波を放ってきた。
「くそっ、食らって堪るか――」
盾を掲げてまたもや地面を滑りながら防ぐ。凄い圧力だ、盾が吹き飛ばされそうなくらいに!
「ギ、ニンゲン――」
5秒ほど耐えた後、その言葉を最後に気功波は途切れ、光の粒子になっていくハーフオーガ。やはり人間よりも魔物よりの存在だったらしい。死体が残る事はなさそうだ。
それにしても恐ろしい相手だった。最後の攻撃だって、練り上げた気で分断された体をつなごうと思えば出来たに違いない。最後の最後に攻撃することを選んでくれてよかった。
『お見事でした、セイ』
「ティア様。ありがとうございます。50階層の試練が無かったら、さっきはやられていたかもしれません」
『それはよかった。先代がクリアできなかった試練も、先代が逃げ帰った相手も、どちらも討ち果たした貴方には神器を一つ授けましょう』
その声と同時に右手首が輝き、腕輪が現れた。血のように赤い宝玉が象嵌されており、全体的に赤めの色合いをしている。
『この腕輪は装着者が状態異常になることを防いでくれる効果があります。銘は清女の腕輪です』
「また、もの凄い効果ですね。有り難く使わせていただきます」
『これまでの功績から言って、決して過分ではないでしょう。貴方の御蔭で信徒が増えているのも確かですし。』
そうなのか、と他人事のように考える。特に勧誘している訳で無し、実感が無い。
とりま、疲れたので宿に戻って休むとしよう。と、その前に。ハーフオーガのドロップアイテムを回収しよう。
ドロップアイテムは二つの小さな宝珠だった。飴玉くらいのサイズだ。
『その二つは飲み込めば魔力と気の保有量が跳ね上がるアイテムです。今直ぐに飲み込むのをお勧めしますよ』
との事なので二つとも丸呑みした。途端に湧き上がってくる気と魔力。今までの約5割増し程迄魔力と気の体内保有量が上昇した。
『ますますチートに磨きがかかりましたね』
女神様が言わんでください。とは言わないでおいた。
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御手洗 清 (セイ)
年齢16 男 LV63
称号:忘れん坊 迷子 魔獣殺し 戦女神の寵児 戦女神の信徒 冒険神の信徒
特殊:記憶喪失 適応補正 清めの手水 戦神の加護 冒険神の加護 炎の祝福
魔眼:麻痺LV4 看破LV5 選別LV3 暗視LV4(神)
スキル
攻撃補正LV28 被ダメージ軽減LV15 回避補正LV25 欠損再生LV1 盾殴りLV21 戦場闊歩LV29 第六感LV10 操練魔闘法LV16(神)
魔法適正
・水属性(高)・光属性(高)・雷属性(中)・無属性(激高)・影属性(高)
使い魔:コアトル
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