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5話

「よっし! ブラックロック10個目だ!」

『案外直ぐに集まりましたね。それではアイテムボックスの中のブラックロックとまとめて床に置いてください』

 その言葉に従い、集めたブラックっロックを床に置く。

 すると、鎧とブラックロックが光り輝き、宙に浮いたブラックロックが鎧に溶ける様に吸収されていった。

 そうして光が収まると、鈍色にびいろだった鎧が漆黒になっていた。

 造形もどことなくシャープになり、重量も軽くなっているようだ。

(ありがとうございます、ティア様)

『いえいえ、これからも活躍して下さいね?』

(もちろんですよ。ティア様の信仰を集めてみせます!)

『あら、頼もしい』

 ◆

 アイテムボックスから取り出した懐中時計を見ると、夕方の5時前だった。

 宿の食事は6時以降の9時迄だから、まだ時間がある。もう少しだけ探索を続けることにしよう。

 取りあえずコアと一緒に50階層をぶらつく。今日一日の印象だと51階層に降りても問題なさそうだ。明日は51階層に降りてみよう。

 既にポータルは設置してあるし、今から階段を探す必要は無い。と、思っていたら49階層への階段を見つけた。

 上に昇る気は無いのでスルーだ。

 その後はゴブリン2匹とブラックロックゴーレム3体を倒した所で6時前になったので、そこで終了にした。

 ◆

「買い取りを頼む」

 ギルドの中、カウンターでブラックロックを三つと魔石を二つだけとり出した。

「かしこまりました。・・・・・・これは!?」

 鑑定の魔眼持ちの人のカウンターを選んで持って行ったが、なにやら様子がおかしい。

「少々お待ち下さい」

 慌てた様子で席をはなれた。昨日と同じだ。多分またギルド長が出てくるだろう。そう思って待っていると、やはり奥からギルド長が出て来た。

「セイ、またお前か。今度はブラックロックじゃと? 約百年ぶりの持ち込みじゃわい」

 百年ってことはティア様の僕の先輩が最後ってことだな。丁度百年くらい前に活躍していたそうだし。

「幾らで買い取ってくれる?」

「昨日と同じ、ひとつ金貨100枚じゃ。合計500枚。それ以上は出せん。ブラックロック製の武具自体は珍しいが、それでも市場に出回っとるからな。」

 ブラックロックも金貨100枚か。これも高額だな。

「分かった、それでいい。買い取ってくれ」

 特にごねる理由も無いので了承する。500枚でも充分な大金だ。

 金を受け取った後は直ぐに宿へ戻った。二日で金貨1000枚。数年くらいなら何もせずに暮らせる額だ。

 迷宮に潜る理由が減ってしまった。これ以上稼いでも使いきれないかも知れない。それでもティア様の信者を増やす為にという大きな理由がある為、活躍せねばと思う。

 ただ、これからは金銭は二の次でいいだろう。これからは護衛や採集などの依頼を受ける事も視野に入れよう。信者を増やすことを目標にするんだ。

 こうなってくると、百年前に先輩様が52階層で探索を辞めた理由がよく分かる。必要なくなってしまったのだろう。金銭が。

 稼いでも仕方ない。そう思ったのだろう。俺も今同じ様にそれほど金が必要なくなった。

 などと考えていたら宿についた。最近じゃ折角宿の中庭に設置させてもらったポータルも使っていない。折角使わせてもらってるのに勿体無いことだ。

 鎧が変わったから、宿に入った時に新しい客と間違えられた。兜を脱いだら気付いてもらえたけれど。全身鎧を着ている人は珍しくないが、黒い全身鎧を装備している人間は見たことが無い。目立つだろう事は自明の理、だ。

 そう考えながら宿の自室で鎧をアイテムボックスに直接転移させて脱いだ。以前見たランクB冒険者の魔法を参考に改良したアイテムボックスは使い勝手が良い。

 それにしても、一月後にヤミーとレンドが戻ってきたら何て言おう。折角修行して戻ってきてくれても、もう迷宮に潜る理由があまりない。

 だが、名声を高めて信仰を集める為に、最深到達階層を更新するのも良いかもしれない。それも視野に入れておこう。

 考えながら、パンとシチューの夕食を済ませ自室に戻った。

 とりあえず、明日は51階層に挑戦しよう。そう思い早々に寝床に横たわった。

 ◆

 只今絶賛51階層を探索中。

 50階層と出現する魔物は全く同じ、強めのゴブリンやオーガばかりだ。正直に言うと飽きてくる。代り映えのしない魔物ばかりだし、簡単に倒せるし。

 操練魔闘法もLV15になったし、もっと手強い敵が出てこないものかとすらおもう。すると――

「お」

 丁度良く、52階層への階段を発見した。

 51階層もつまらないから52階層に降りてしまうか。

 そう、思った。思って、しまった。この先も大した変化はないだろうと。そう思ってしまった。

 それは油断。まぎれも無い落ち度。しかしまだ俺は、そのことに気付いていなかった。

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