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4話

「買い取りを頼む」

 ゴトン、とギルドの買い取りカウンターの上に昨日のゴブリンの魔石を一つだけ載せた。

 魔石はアイテムボックスから右手に直接転移させたので、カウンターの向こうにいるギルド員のお兄さんは完全に硬直している。

 内心ニヤニヤしながら平静を装って催促する。

「早くしてくれないかな? 後ろにも待ってる人がい居るんだし」

 と、俺は三つある買い取りカウンターのうち、自分がの後ろに並んでいる人たちを親指で指す。

「はは、は、はいっ! 少々お待ちください!」

 ギルド員のお兄さんが慌てて魔石を持って引っ込んでしまった。

 ・・・・・・どうしよう。いつもはその場で査定してくれるのに。俺は待ってればいいんだろうか?

 暫くしてギルド員のお兄さんが戻ってきた。精悍な顔つきのじいさんと一緒に。

「おぬしがこれを持ってきたのか?」

 キリっとした表情で爺さんが訊いてくる。ので、頷く。

「宝箱でも見つけよったか?」

 と訊いてくるので素直に答えた。

「50階層に居たゴブリンを倒したら手に入った。魔練気も使いこなす強敵だったよ」

「「ゴブリン!?」」

 周りが一斉に叫んだ。うるさいなあ。

「疑うんならカードの履歴を見ればいいだろう。直近はゴブリン五体しか倒してない」

 言いながらギルド証を手渡すと、直ぐにそれを装置にセットするギルド員のお兄さん。こりゃ信じてないな。

「ほ、本当です。最新の討伐記録は昨日、ゴブリン五体のみです」

「だから、そう言ってるだろう?」

 言いながら同じくラグビーボールみたいな魔石を残り四つ取り出した。

「「・・・・・・」」

 周囲の人間が無言で見守る中、値段交渉を始める。

「それで、幾らで買い取ってくれるんだ? この魔石」

 精悍な顔つきの白髪の爺さんを見て言う。十中八九この人がこのギルドのマスターだろう。一体いくらの値をつけるか。

「・・・・・・・金貨100枚でどうじゃ?」

 100枚!? こちらの予想を越えて来た、一つあたり金貨20枚換算か。

「オーケー、売った。金貨100枚! 二言は無いな?」

 思わず念を押してしまう。

「ふんっ、当然じゃわい。今金を用意してくるから待っとれ!」

 金貨100枚だってよ、凄い値がついたもんだな。いや、あれだけの大きさの魔石だ、200枚でも採算は取れるだろうな。

 等々、周りの皆が口々に言う。

「待たせたの。買い取り額の金貨500枚・・・・・・じゃ」

 ずしゃあ、と音を立てる大きな革袋。というか500枚?

 五つで金貨100枚かと思ったら、一つにつき金貨100枚!?

「・・・・・・どうも」

 呆けた顔で金を受け取りアイテムボックスに転送する。周りの取り巻きも言葉が無い様子だ。

わし)はこのギルドのギルドマスターじゃ。ディアックという。宜しくのう」

「ランクA冒険者のセイです。こちらこそ宜しく」

 握手を交わして友好状態が保ててるし、金貨500枚はけっして無茶な額じゃないのだと分かる。

 それ程希少なのだろうこの魔石たちが。どうしよう。明日から毎日持って来たら価値が下がって買い取り額も下がるのだろうか?

 50階層でコンスタントに手に入ったらどうしよう。もう金貨500枚なんていう大金を手にした俺にとっては稼ぎなんぞもう必要ないかもしれないが、もしコンスタントに手に入るなら普段は備蓄して、時々思い出したように売ろう。

 そうすれば価格崩壊なんて起きないだろうし、気兼ねなく迷宮に潜れそうだ。

「それじゃあ俺はこれで」

 目的は果たしたしもう出よう。

「うむ、また良い品を持ってきとくれよ」

 ギルドマスターに送り出されて俺は神殿に向かう

 ◆

 いつも通り神殿での祈りを済ませ、ポータルで50階層まで転移する。

 相変わらずの石造りの通路に出た。

「きゅー」

 コアが久しぶりに甲冑の、というより着衣の中から出てくる。

「手伝ってくれるのか、コア?」

「きゅ~♪」

 どうやら手伝ってくれるらしい。コアのサポートがあれば昨日のゴブリンぐらいなら楽勝で勝てるだろう。

 石造りの通路を進み探索を開始する。油断なく曲がり角などを通りながら、敵との遭遇を待つ。

 幾つ目かの角を曲がった所で小部屋に出た。小部屋から通路は左右にある。正面は壁だ。その壁の前に、居た。

 ゴブリンが三匹。昨日と同じ、高レベルのゴブリンだ。こちらに背を向けて何かをしている。何やら剣や斧を布で拭いている。手入れだろうか?

 早速コアが光線ブレスで薙ぎ払った。一網打尽。哀れゴブリン達は敵の存在にも気付かずに一瞬で光の粒子に変わっていく。そして、やはり昨日と同様に大きな魔石を残していた。

 これで金貨300枚か。濡れ手に粟だな。

「きゅ~」

「よしよし、偉いぞコア」

 頭を擦りつけてくるコアを撫でる。パーティー組まなくても十分にやっていけるな。しかも50階層なのに。

 流石はランクA魔獣、最高峰なだけはある。

 その後も順調に探索は進み、51階層への階段を見つけたときには魔石は23個も集まっていた。

 一応51階層に一度下りてワープポータルを設置しておく。

 そういえば、ティア様が言うにはこの世界の普通の人はポータルを幾つも設置することは出来ないらしい。多くて五か所、少なければ二か所だそうだ。二か所しか設置できない人は、迷宮に転移するたびにポータルの設置を一々解除して、帰る時にもう一度設置しているらしい。

 面倒そうだが、それでも一気に地上まで転移できるのは便利らしく、重宝されているらしい。

 対して、俺はというと。今現在は40階層から50階層にかけて一つずつの十一か所と宿屋の一か所で合計十二か所も設置している。

 階段の位置も時間経過で変化するため、一々設置しておいた。この先も、一々設置していくつもりだ。

 この迷宮は下に行く程に強いゴブリンが出てくるが、出現する魔物はゴブリンだけではない。40階層以降に出現する魔物のドロップアイテムは収集依頼が殆どない。

 供給が無いからだ。需要はさて置き、供給が無ければ依頼は減っていく。30代の階層の需要さえ少ないのに40代の階層では需要も供給も止まってしまっている。

 そこで俺が40代の階層の依頼を一手に引き受ければ名声は高まり、ユスティア様の偉大なるを知らしめる事が出来る。俄然、やる気にもなる。

 同時に、前人未到の52階層から下の階層へ進出し、更に名声を高める。そうして、ユスティア様の信仰を集めるつもりだ。

 ブラックロックゴーレムという魔物を蹴散らしながら思いを新たにした。

 ドロップアイテムのブラックロックという名の黒い岩の塊は何に使うのだろうか?

『それは金属と同じ様に鋳潰して武具に加工できるものです。重さは鉄より軽く硬度は鋼鉄よりもはるかに高い為、加工は難しいですが強力な装備になるでしょう』

(成程。鉱石みたいなものなんですね)

『10個集めたらそれで鎧を強化してあげますよ?』

(分かりました! 10個集めます)

『操練魔闘法のLVが15になったお祝いです』

(え?!)

 慌ててステータスを見て見ると、確かに操練魔闘法のLVが15になっていた。

  ◆

御手洗 清 (セイ)

年齢16 男 LV59

称号:忘れん坊 迷子 魔獣殺し 戦女神の寵児 戦女神の信徒 冒険神の信徒

特殊:記憶喪失 適応補正 清めの手水 戦神の加護 冒険神の加護 炎の祝福

魔眼:麻痺LV4 看破LV5 選別LV3 暗視LV4(神)

スキル

攻撃補正LV26 被ダメージ軽減LV13 回避補正LV22 欠損再生LV1 盾殴りLV19 戦場闊歩LV25 第六感LV9 操練魔闘法LV15(神)

魔法適正

・水属性(高)・光属性(高)・雷属性(中)・無属性(激高)・影属性(高)

使い魔:コアトル

 ◆


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