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8話

「え・・・・・・」

 俺は混乱していた。パーティーを組んでいない事は誰にも言ってない。勿論、ギルド員にもだ。

 それなのにソロで戦っていたのがなぜばれたのか。悪目立ちしないように黙ってたのに・・・・・・

「何で、ソロだってばれたんだ? これだけの量だ、普通だったらパーティーでの戦果だと思うんじゃないか? 空間収納が使えるから換金を任されてるとか、普通ならそう思うんじゃないか?」

 困惑しながら訪ねる。すると、返ってきた答えは――

「ギルドカードの読み取り装置には一人ソロで倒した魔物と、誰かと協力して倒した魔物が別の覧で表示されますので。

 これは、パーティーを組んでなくてもギルド証に表示されますので、血潮マネキ計八匹の協力討伐などの情報と、オーガやハイオーガ、ダークオーガの群れや、複数のトロルとソロで戦って倒した情報とは別の覧で確認できるんですよ。

 ですので、セイさんが迷宮都市に訪れた日から今までにもソロでトンデモない数の魔物を狩っていたのは把握しておりました。」

 ですが、と続けて受付嬢はこう言った

「同じような戦果を挙げる方は他にもいますので。何より戦女神さまの紋章と斧の印証が、あなたが普通ではないと示しています。よって、ランクAの冒険者の称号に恥じない力を持っていると判断いたしました。

副ギルド長にも事前に相談してありますから、『ランクAの魔物を蹴散らせるようならギルドランクもランクAに上げても良い』、と。普通はパーティーを組んで倒すような魔物をソロで討伐している訳ですから戦闘能力がお墨付きの証たる斧の印証も取り消す必要は無いと判断されております」

「今回も、トロル十二匹、グレートオーガ五匹、ブルードレイク八匹という、ソロではありえない程の戦果を収めております。久方ぶりの一級品の実力者だとギルド内でも期待が高まっておりますよ」

 マシンガンの様に話し続けるギルド嬢に辟易してきた。もう、なんでもいいから帰って寝たい。だが、まあ、ティア様への信心を集めるには目立つこともしなくちゃいけないだろうし、そう考えれば別に悪くない状況かもしれない。

「そうですか。ですが全ての戦果は、我が戦女神様に捧ぐもの。ギルドの為ではありません」

 一応、意趣返しのつもりにそれだけは言っておいた。のだが――

「構いませんとも。ドロップアイテムによって結果的にギルドは潤い、都市の市場は賑わい経済も潤うのですから。迷宮都市以外の都市からの買い付け額は迷宮都市内の流通の約2倍強ですから。

 トロルの脂身なんて限られた量しか流通しませんし、高値が付きますね」

 あっさりとそう答えられた。

 ◆

 神殿でティア様とついでにグライジョル様に祈りを捧げた後、ポータルで38階層まで転移した。

 そのままあてども無くぶらつく。襲い掛かってくる魔獣をテキトーになぎ倒し、先へと進んでいく。

 早いとこ40階層まで行ってポータルを設置してふて寝したい。

 ガーゴイルの群れを突っ切りデュラハンを真っ二つにして迷宮蜘蛛メイズスパイダーにフリーズボムをはなって氷づけにして砕く。

 残ったガーゴイルに最近覚えたアイスマシンガンを掃射する。二、三発毎に一体を倒せてる。

 ガーゴイルの硬そうな体を難なく貫通し、ドでかい風穴をあけている。

 扱い易く、誤射の心配も少なく済みそうだ。制御にばかり意識が向いてちゃ、仲間を誤射しかねない。手当たり次第にハチの巣にしてしまう。

 そう思いながらガーゴイルの掃討を終えた俺は、ドロップアイテムを拾ってその場を後にした。蜘蛛の糸やら大剣やら、ガーコイルのは小さな魔石だった。

 暫く探索していると、漸く下りの階段を見つけたので39階層に下りていく。

 それまでは薄っすら光る石壁の通路だったのに、急に明るさが増した。天井に強い光を放つ石が等間隔にならんでいる。

 薄暗い上層階に比べて明るい下層。いや、中層かな? 階層的には。

 この変化が何を示しているのか。攻略が簡単になった訳ではない。ふるい落としの段階を終え、純粋に強い者たちに試練を与える為だ。

 純粋な強さのみを測る為の場がここから先の階層だ。まあ、全部ティア様からの受け売りだが。

 ◆

 明るいせいか、魔物との遭遇エンカウント率も上がった気がする。階段を見つけるのに随分とかかった。

 ともかく、やっとのことで40階層に到着した。

 階段の横にポータルを設置して、さてもう帰ろうかなと思った時に鎧を着用したゴブリンに遭遇した。

 なぜゴブリン? と思いながらも看破を使ってみる。

 ◇

 種族:ゴブリン 年齢:1歳 LV48

 神の試練の為に生み出されたゴブリン、基礎能力が高く魔法も使う。

 また、研鑽も行うため年月を経るごとに強くなることも多い。

 ◇

 成程、質が高いのか。中階層では苦戦もあるかもしれないな。

 そう思いながら腰の斧ではなくアイテムボックスからユスティアックスを取り出した。

「ぎぎいっ!」

 ゴブリンは片手剣を鞘から抜き放ちながら、驚くことに練気功を使った。ゴブリンのスペックは高く、一瞬で間合いを詰めてきた。が。

 次の瞬間には鎧ごと真っ二つになっていた。直ぐに光の粒子になっていく、ドロップアイテムは片手剣のようだ。

「うん、このぐらいならどうってこと無いな」

 強くなってもゴブリンであれば遅れはとらない。さて、目的の40階層にポータル設置も完了したし、今日はもう宿に戻ろう。

 ◆

 ギルドで戦利品ドロップアイテムの清算をして金貨12枚ほどを懐に収め、帰途に就く。

 まだ昼過ぎだし腹も減ったから、屋台でも冷やかそうと思って屋台通りまでやってきた。まだまだこの時間帯は賑わっているようで、人混みもしてる。人波に逆らって粒胡椒を利かせた肉の串焼きを5本ほどかって、アイテムボックスにしまう。

 また人波に逆らって、今度は包み焼きのピザの様なものを三つ買った。

「まいどありぃ」

 店主の声を聴きながら宿へと戻る。

 宿に戻って早速、自室で堪能した肉の串の味が忘れられなくなってしまった。本当は三本だけ食べて二本はとってくつもりだったのが全部食べてしまった。

 包み焼は二つ残っている。溶けたチーズが絶品だったが、今回は肉串に軍配があがった。

『セイ、本日はもう迷宮に潜らないのですか?』

(明日は初のパーティーでの迷宮攻略ですからね。疲れを残さない為にも休んでおきます)

『そうですか。50階層に私からの試練を用意しておきました。強敵ですが頑張ってくださいね』

(いきなり爆弾発言投下しないで下さいよっ)

 これは50階層には自分一人で先に行っておかないとな。俺の試練にあの二人を巻き込むことは出来ないし。

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