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3話

 宝箱を見て思ったことがある。アイテムボックスの魔法のことだ。

ボックスと名のつくものに対し、漠然とした空間という概念はそぐわないだろう。

 それならば、と考え付いたのが、宝物が入った宝箱であり、その宝箱が幾つも置いてある宝物庫だった。

 効果は覿面。体中に感じていた重圧は無くなり、身が軽くなった思いだ。事実、軽くなっているわけだが。

  ◆

 暫くの間、ティア様に教えてもらったランクCやランクBの人間が主に狩場としているとされる場所を一人でうろついていたが、どの魔獣の攻撃も鎧でしっかり防げる。鎧には傷一つない。

 ただ、壁役として雇ってもらうには、火を吐く魔獣や魔法を使う魔物の面に対する攻撃が防ぎきれないというネックがあった。

 そもそも、壁役をこなそうというのに盾を持っていないのはおかしな話だった。

 小さな丸盾といえど、口の中に突っ込む位のつもりの至近距離であれば炎の拡散を防げるし、直撃を喰らう身としても、正直、自分一人なら神器の鎧と魔練気でどうとでもなる。

 バックラ―とタワーシールドでも一つずつ買っておくかなどと考えながらリザードスライムの群れを蹴散らしていく俺。

 その名の通りトカゲの姿をした人間大のスライムで、看破によるとランクCの強力な魔物だということだ。

 今は左手の浄化のメイスと右手で放つインパルスの魔法で体積の大部分を吹き飛ばされ、20匹ばかりいたリザードスライムは既にそのほとんどを淡い光に変えていっている。

 ふと、暗視を使わずに見たら、暗がりを照らす美しい光景になっているのではなかろか、という考えがよぎった。

 残りのリザードスライムを片付け終えた俺は、思いつきを実行する。

 薄暗い通路の中を淡い光の半分が俺の方に流れてくる。残りは湧き上がる様に宙を舞いつつ一つの流れとなり、通路の石畳に集まり溶ける様に、沁みる様に徐々に消えていった。

 強化されているらしい俺の感覚には近辺に何の気配も感じないが、念のため直ぐに暗視の魔眼を再び発動しておく。

 暗がりに散りばめられる幻想的であろう光見たさに暗視の魔眼を解除するなんて、俺ぐらいなものだろう。普通はそんな不用心な真似はしない。普通は。

(ティア様、そろそろ引き上げようかと思うんですが、人気のない方角ってどっちですか?)

 ドロップアイテムの核石(スライム系統の魔物の主なドロップアイテム。要は純度の高い魔石)を革袋に拾いアイテムボックスに入れ終わった俺は、ティア様に心の中でそう訊ねた。

 以前パイクビートルトいう魔物を乱獲した時は怒られたが、今回はそんな心配はいらない。迷宮ダンジョンには生態系など関係ない。

『左後ろにある通路を進んで直ぐに右折すれば出口付近までは誰とも会わずに済みますよ』

(ありがとうございます、ティア様)

 女神を便利使いするなど、もってのほかかもしれない。けれど、迷宮の地図すら買い忘れた俺にとっては、ティア様だけが頼りだ。

 例え、さして大きくない部屋の中にスライムリザードの群れがいた原因がティア様の恩寵とその称号のせいだとしても。

 戦を司る女神の寵愛。そう考えれば戦いに縁があるのは仕方あるまい。

そのおかげで強くもなっているのだし、感謝こそすれ疎んじる事もありえない。

先程の戦闘で雷属性の魔法を覚えたし、信仰は深まるばかりだ。

『スタンガンにショックパルスですか。あまり強力とは言えませんね』

(ティア様、心やステータスを勝手に読まないで下さいよ・・・・・・)

『よいではありませんか、減るものでもないでしょう?』

(そりゃ減りませんけれど。考えてることが全部筒抜けなのはちょっと・・・・・・)

『よいではありませんか、隠し立てしないといけない事など無いでしょう?

それに、何もかもが筒抜けな訳ではありませんし』

 なんてことを心中で話しながらでかいサソリやらホブゴブリンを蹴散らしつつドロップアイテムのサソリの心臓(赤い色で純度の高い魔石)や粗末な長剣を拾いつつ出口へと向かう。

 大分進んだ、もうこのあたりにまでくれば強い魔物も出ない。出口にたどり着くまでにどうにかティア様を説得しようと躍起になる俺なのだった。

 ◆

 迷宮を出た俺はギルドの依頼を見ていた。

 アビンソン村(この世界で最初にたどり着いた村)の様に、壁の左右で依頼の難易度が違うようだ。南側がD、E、F、Gの依頼書、北側がC、B、Aと、ランク別に依頼書が貼ってある。柱も両側に一本ずつ立っており、ランクフリーの依頼が貼ってある。

 流石迷宮都市。色々な人間がいるし、一癖も二癖もありそうな奴らばかりだ。

 依頼書を虱潰しに眺めていると北側のCランク依頼にリザードスライムの核石の収集依頼があったのでその依頼書を、Dランク依頼にサソリの心臓の収集依頼があったのでその依頼書も。二枚の依頼書をもって受付嬢のもとへと向かった。

 本日の収益は、魔石類が、核石一つ11000ルピー×20個で合計220000ルピー、プラス蠍の心臓が一つ8000ルピー×6個で48000ルピーの合計268000ルピー。

 その他のドロップ品がまとめて10000ルピーほど。

 所持金が約384000ルピーなので合計金額は660000ルピー超になる。金貨66枚だ。

 およそ、Cランクの冒険者がパーティーを組んで稼ぎ出すであろう金額が俺一人の懐に入った訳だ。顔がにやけてしまう。

なんでも、大蠍も、リザードスライムも、レアな魔物なのだそうだ。それが、一度に20匹も現れるなんて、とは受付嬢の言葉だ。

 受付嬢は、それ以外は特に不振がっているそぶりも無い。俺がパーティーを組んでて、代表して換金に来ていると思っているに違いない。

 この数を俺が一人で、とは思わないよな。普通なら。

 何せDランクならDランクの、BランクならBランクの冒険者は大前提としてパーティーを組む。そうでないなら、ソロでは一つ下のランクの魔物と戦うのが一般的なのだ。索敵、戦闘、荷物運び等、とてもではないが一人でこなすのは大変だ。

 ゆくゆくはパーティーを組んで迷宮に潜りたいものだ。複数人の方が安心できる。一人だと行き届かない所も、複数人ならカバーしあえるはずだ。

 まあ、現状一人で戦えてるわけだけれども。

 事実として、ソロで迷宮に潜る人間は多い。神々から加護や能力を授かっていれば不可能ではないし、他者との関係でのイザコザを嫌ってソロで居る者も多い。

 取りあえず宿に帰ろう。今日の稼ぎは上々だ。


御手洗 清 (セイ)

年齢16 男 LV28

称号:忘れん坊 迷子 魔獣殺し 戦女神の寵児 戦女神の信徒 冒険神の信徒

 特殊:記憶喪失 適応補正 清めの手水 戦神の加護

 魔眼:麻痺LV3 看破LV5 選別LV2 暗視LV3(神)

スキル

攻撃補正LV8 被ダメージ軽減LV3 回避補正LV5 欠損再生LV1 盾殴りLV1 戦場闊歩LV6 第六感LV2 操練魔闘法LV4(神)

魔法適正

・水属性(高)・光属性(高)・雷属性(中)・無属性(激高)・影属性(高)

使い魔:コアトル


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