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バスター・プレイヤーズ  作者: 16104
プレモンMB
9/30

第十一部

こちらも2です。

ご迷惑おかけしました。

「大丈夫。キリ君。」


キリヒコは朧気な意識の中その声を聞いた。


そして、ゆっくり目を覚ます。


目の前には心配そうな顔で見つめるソウサクの姿。キリヒコは少し感傷的な表情で。


「ごめん。疲れてたみたいだ。少し寝てた。」


と。お茶を濁した。




ソウサクとクラスの皆のはからいにより、キリヒコは一足早く帰宅した。


実際の所、体には何の異常もないのだが。皆の余りの心配そうな顔に嫌とは言えなかった。


布団にくるまりながらキリヒコはポケットに入れた携帯を手に取る。


そして、画面にプレモンMBメインカードを翳した。


目を開けるとそこに広がるのは辺り一面、何もない無の世界。


ゼロが起き上がろうと地に手をつこうと動いた時、その声が聞こえてきた。


『ゼロ様、どうかしましたか?ゲーム終了から間もないような気がしますが……。』


「ちょっと確認したいことがあったんだ。サブカードじゃ出来ないだろ。」


『そうですね。あれはただのゲーム入場のパスですからね。』


首をコクコクと動かしながら納得のポーズを取る自称ゲームキャラの少女ミイナ。ゼロは最初、その仕草にドキリとしたこともあるが慣れてしまえばただのウザイポーズでしかない。


「さっそくで悪いんだが、このプレモンMBにランキングのようなものがあればすぐ出してくれないか?」


『ランキングですか?でも……そんなのありましたっけ……。あれ?あ、もしかしたらあれかも!』


一人言を呟きながらミイナは自身の前方に展開したディスプレイを操作する。


答えは割と早く知ることができた。


『えー、結論から言うとそれは多分、イベントバトルの順位ですね。これを見て下さい。』


こちらに向けられたディスプレイにゼロは視線を移した。


『月一回程の割合でやっているイベントです。ルールは簡単、勝利して上位ランクを目指すです。』


「やっぱりこれも……。」


『はい。負けたら死のデスバトルです。……ですが、強制参加ではありません。』


「どういうことだ?」


プレモンMBというゲームは基本、何から何まで強制参加だと考えていたゼロにはこの事実は疑問の残る点だった。


『通常とは違い、これはイベントとして行われるモノだからです。ですが、その分だけレアなカードを入手することが出来ます。』


「……レアカードって、サモンカードとかか?」


このゲームでは聞き慣れないその言葉にゼロは真剣な眼差しで、ミイナを見つめた。


その視線に気付いたのかミイナは少し体をモジモジとさせながらそれでも意を決したように呟く。


『いえ、言うなれば限定カードのようなものです。このイベントでしか手に入らないカード。全てのプレイヤーが使うことができ、レベル等の条件もない。まさに使い勝手のいいカードです。』


イベントで出されるカードはまだ初心者である人には打って付けのカードといえる。何故なら単体でのポテンシャルが高く需要があるからだ。


「なるほど、強くなりたい奴だけ参加する訳か。」


『勘違いなされては困りますので先に申し上げておきますが、イベントはこれだけではありませんので注意して下さいね。』




必要な情報も手に入れたのでキリヒコは現実の世界へ戻っていた。


目を開いてしばらくしない内にキリヒコは睡魔に襲われベットから一歩も動けないような状態となった。


現実の世界とゲームの世界は感覚的には繋がっているので身体的にはそこまで活動していなくても精神的には身体の倍は疲労している。


時刻は6時頃と少し早めだが、疲れを取るには睡眠が一番なのは確かなので、夜ご飯は適当に食べるようにしてとと頭の片隅に思いやりながらキリヒコはそのまま眠りについた。




「ふぁー」


あくびをしながらまだ脳の寝ている体を動かし、いつもの通学路をキリヒコは自転車で駆けていた。


なんとあれから一度も起きることなく熟睡していた。起きたのは7時過ぎなので13時間以上眠っていた計算になる。


なのでこのあくびも疲れて眠いからではなく。寝過ぎて辛い方のあくびだ。


辺りの学生もちらほらと眠いオーラを放っている輩が多い。


その中に見知った顔があった。


「おはよ!トウキ。」


「おう。こんな時間に会うなんて珍しいな。」


トウキの所属する部活はバスケ部である。


内のバスケ部は名の知れた強豪らしく、県外からバスケをしにこの高校を受験する人は少なくないらしい。


その中でも、1年の頃から数十というライバル達を押しのけ、ベンチ入りを果たし。2年からはレギュラーとして出る機会が増えたらしい。


レギュラー争いは激しく、朝練漬けの日々をトウキはおくっていた。


なので、そんなトウキがこの時間に登校しているのは珍しい事なのだ。


「珍しいのはお前だろ?どうしたゲームでもやりすぎたか?」


トウキの顔が一瞬だけ曇ったような気がしたが、すぐにいつもの顔に戻り。


「まあな。て、やべ!俺、今日、日直か?じゃあなキリ!またあとでな!」


とだけ残し、学校へもうスピードで駆け出していく。


適当にそんなトウキの背中に手を振り、キリヒコは自分のペースのまま、まだ遠い学校を目指した。





キリヒコは今、グラウンドで姿勢を正して突っ立っていた。


だが、別にキリヒコが何をしたという訳ではない。何故ならキリヒコ含む全校生徒が今グラウンドで列をなしているからである。


今朝、教室に着くとコールサインが鳴り国語の教師から臨時の全校朝会があるのでグラウンドに集合するようにと伝達があったのだ。


クラス中で「まじかよ。」という声が飛び交ったが、クラス委員長の指示でみんな渋々グラウンドへ向かった。


そして今、前方の演台には凜とした目鼻立ちの黒髪ロングヘアの女生徒。生徒会長である3年生の長恵理香〈ひさしえりか〉先輩が注意事項の報告を何点か話していた。


掻い摘んで説明すると飲酒をした生徒が見つかって、それについて全生徒も気を付けるようにという呼び掛けだった。


挨拶を終えると恵理香先輩は生徒会メンバーが立っている方へ歩いていった。


次に生活指導の教師が演台に上がり話し始める。


まだ、しばらく全校朝会は終わらないなと少し視線を下げかみ殺すようにあくびをしたキリヒコだったが、次の大出力の音がキリヒコの脳を覚醒させた。


ピリリリリィィイーーー!!


今、こんな音を全生徒、全教師が聴けばすぐに指導室へ呼ばれるレベルの大事となったであろう。しかし、このベルの音は普通の人には聞こえない。


ある特定のゲーム利用者しか聞こえないメロディーなのである。


素早くポケットに現れたカードを掴むと次に懐に潜ませた携帯を器用に操作して認証を行おうとしたのだが、ベルとは別のエコーの掛かった渋い男性のような声がキリヒコの耳に届いた。


『緊急クエストを開始します。』


一瞬、キリヒコの手が止まった。なおも教師の演説は続いているが、キリヒコの耳には届いていない。


『皆様、このゲームでは多忙な時間を有する場合が御座いますのでどうか安全な所へ移動なされて下さい。なお、認証は結構ですのでお早い行動をお願いいたします。制限時間は10秒です。』


キリヒコは努めて慎重に辺りを見回した。どこを見ても生徒生徒生徒。抜け出せるような道はない。


仮にもし抜け出せても教師に見つかれば理由を訊かれること間違いなしだ。


こちらにはそんな時間の余裕はなかった。


━━━覚悟を決めるしかない。


一呼吸置き、キリヒコは胸を張り眼を閉じた。堂々とそこに畳づむ姿は見る人によればさぞ、勇ましく見えたであろう。


━━━どんな危険でも、俺は生き延びてみせる。そのために今まで強くなったんだ。


一秒一秒が自分の寿命を削っているように感じた。


意味もなく湧き出る汗や苦しくなる程、動機が増した胸を意識することなくキリヒコはただ、カウントを待った。


そして、カウントがゼロとなり……


『ゲームスタートです。』


ゼロ初の緊急クエストが始まった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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