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バスター・プレイヤーズ  作者: 16104
プレモンMB
8/30

第十部

こちらも2に投稿していたモノです。

ご迷惑おかけしました。

ゴリっという音が聞こえた。


ポン!


ナメクジのすぐそばにいたプレイヤーは既にその姿を消失している。


ゼロはその一部始終を観ていることしか出来なかった。


人が潰されていくシーンなどトラウマ物である。このシーンをもしチホが観ていたら悲鳴をあげていたに違いない。


だが、あのプレイヤーがどれほど強い人間かは理解できた。


普通の人ならあそこで喚き、足掻いていただろう。しかし、彼は違った。少しずつ確実に潰れていっても痛みによる悲鳴をあげることなくただ死を受け入れていた。


ゼロ自身はそれが出来ないであろうと理解する。


だからこそ、ゼロはより一層強く思う。


━━━生きたい━━━


と。


ゼロは考える。あのナメクジの弱点は?どうすれば倒せるのかと。


模索しているとナメクジの元へ向かうもう一つの影を見つけた。


そのプレイヤーは片手に細身の剣を持った状態でカードをスキャンした。


『skillカード!!』


細剣が緑のオーラを纏い、また剣、本体が発光している。


剣を両手に持ち直し、その剣を振るった。


三つに別れた斬撃がナメクジ本体へ直撃した。


衝撃はナメクジの体をなぞるように切り傷をつける。


━━━なんつー破壊力だ。


電撃を浴びてもビクともしなかったのに今の奴の斬撃は効いていた。


やはりこのゲームにも相性のようなモノがあるのだろうか。


しかし、ナメクジの進行は止まらない。何故そこまで斬られて動けるのかと不思議なぐらいだ。


しかも傷口が徐々に回復している。


さらに確証はないがナメクジの体が、最初に見つけた時よりも肥大しているように思う。


ゼロはまず、さっきのプレイヤーの方へ向かった。相手が友好的かは知らないが、この敵にはプレイヤー同士、力を合わせることが重要であると考えたからである。


向こうも同じことを考えたのかこちらに視線を向けると早足で近付いてきた。


「キミ。武器を持たずに来たって事は話し合いが目的よね?」


「はい。俺はゼロっていいます。」


武器は走る前にそこらに捨てた。相手に少しでも敵として認識されないためだ。


相手は色からして草属性らしい。さらに見た目で女性であることが分かった。


「私はエリカ。で、早速、本題なんだけど。キミ、このゲーム初心者じゃないよね。」


「はい。場数も踏んでます。」


「実力はどうであれ闘えるならいいわ。」


「それでエリカさん。あの敵をどう観ますか?あなたの率直な意見を訊きたいです。」


エリカは少し考える様子を見せてから


「私の見解では、弱点は斬撃。さらに打撃系の攻撃はあまり効果がないっていうのと……アイツ知らないけどどんどん大きくなってる……。」


エリカの意見にゼロは頷き


「やっぱり大きくなってますよね。ということはあのモンスターって━━━。」


「そうね。多分、次第に大きくなっていって私達を踏み潰すとかでしょうね。」


確かにそれなら攻撃を全くしてこないのも頷けるし、あの小さなナメクジの正体もなんとなく分かった。


ようはあの小さなナメクジは足止め。まさに定番のザコモンスターだ。


「で、俺、思うんですけど、あのナメクジにはおそらく核のような物があるのではないかと。そうすればあの斬撃を喰らっても倒れなかった理由も頷けますし。」


「核…か……。私、そういうモンスターと闘ったことがないから何とも言えないわね。」


「でも、あれだけデカいとどこに核があるかなんて。」


「いえ、それなら何とかなると思うわ。でも、攻撃を加える人がいないと。」


「それ、俺にやらせて下さい。ポイントはエリカさんのモノでいいので。」


「ふふ、キミ面白いわね。でも、そういうことこのゲームで簡単に言うものじゃないわよ。」


「す、すみません。」


「いえ、キミみたいな事を言う人が珍しくてね。いつもはポイントの話題は出さないで早い者勝ちが基本だから。でも、このゲームのポイントはそれだけ重要視されてるってこと。ポイントに頓着のない人ならいいけど、ポイントにピリピリしてる人からは信頼を失ってしまう。そしたら即バトルの可能性も捨てられないわ。」


「なるほど。」


「経験はあるようだけど。個人で闘ってたって丸分かりね。そういう所も気をつけなさい。」


「はい。」


━━━あれ?なんで俺、注意受けてんの?


「まぁ、ポイントの話はいいわ。キミを信用してみる。協力してくれる?」


「はい。宜しくお願いします。」




ゼロは走った。向かう先には緑色の壁が立ちふさがっている。


ゼロの後ろからはエリカがついて来ていた。そして、これは作戦でもある。


「じゃあ手はず通りに……。」


「……はい。」


ゼロはとにかく真っ直ぐ走った。エリカはその動きを止め右手に既に持っていた2枚のカードの内一つをスキャンする。


『summonカード!!!』


ゼロは確かにその音声を聴いた。走っている最中に後ろを向くのは危ないが興味の方が先に立つ。


エリカの足元から緑の魔法陣のようなものが展開された。


ゼロは経験から危険な雰囲気をかもし出す陣に震えた。ゾッとするような気持ちがゼロの心を打つ。


まず、出現したのは青い水晶玉。


さらにそれを囲うように木の根が徐々に絡み合っていった。


根は伸び続け、その全長はナメクジと同等の大きさになる。


見た目は人の形を模しているのか上半身と思われる部分は三つの根が絡み合って出来た腕と円柱状に出来た胴体。


顔とおぼしき部分には先ほどの青水晶が煌めいている。


下半身には顔の水晶の倍以上の青水晶が茨のように尖った根に護られていた。


ゼロがサモンカードを見るのは初めてではない。前の戦闘でもサモンカードで呼び出したモンスターが敵に大ダメージを与えていたのを覚えている。


そして、サモンカードで喚ばれたモンスターこそ、そのプレイヤーの姿そのものであり、力の根源でもある。


「クイーンフォレスト!」


エリカがそう叫ぶとクイーンフォレストと呼ばれた木人はその細い両腕をナメクジの方へ向けた。


「やれ!!」


クイーンフォレストからの返答は行動として出された。


指先もとい根先が爆発的な勢いで伸びていく。


数秒もしない内にゼロの頭上を越えていった根は、ナメクジに突き刺さると縦横無尽に根を張り巡らせ始めた。


ナメクジの体から根が弾け出る。


そしてゼロは気付いた。ナメクジの下腹部辺りに少し色が違う部分が現れたことを。


その姿もナメクジであった。ただし、今までのと違い白い。


エリカの言っていた見つけることは可能とはこのことだったのだ。


「ゼロ!やって!ポイントはどうでもいいから早く!」


エリカは距離の離れたゼロにも聞こえる程、大きな声で叫んだ。


サモンカードの有効時間は3分間。つまり、あの白いナメクジを拘束する時間も限られているということだ。


しかも、エリカがあの場を離れないということは相当に精密な力を使っていることが伺える。


「はい!」


ゼロは刀を構えた。


━━━力なんていらねー。とにかくコイツを奴に刺せれば。


ゼロは全力の跳躍をした。


このゲームでは人の運動能力が通常の3倍上がる。つまり、超人的なジャンプ力を持っている訳なのだが……。


もう少しというところで跳躍が終了した。あとはただ落下を待つだけである。


しかし、ゼロは諦めることなく素早く持っていた刀を逆手に持ち直した。


そして、体をエビのように剃り上げる。


「くらえーーー!!!」


腕のバネを充分にいかした投擲が白いナメクジへ真っ直ぐに飛んでいく。


ゼロは決まったと重力のまま落下しながらその拳を握り締めた。


しかし、刀がナメクジに被弾することはなかった。


後方から放たれた炎球が刀を弾く。


ゼロは受け身を取って地面に着地した。


さらにすぐさま横への回避行動を取る。


そこへまた先ほどの炎球が撃ち込まれた。


ゼロは正面を向く。そこにいたのはゼロの宿敵とも呼べる相手。


「……テラー。」


「……。」


怒気を含んだ声のゼロに対して、テラーは無言を貫いている。


テラーは装備を固めていた。武骨な両脚の装備に丈夫そうな胴体。武器は以前も視たあの拳から突き出た三本のナイフ。


今回は籠手を囲うように炎が纏っていた。


ゼロは動けなかった。それは相手に臆しているのではなく。現状がよくない状態だからである。


相手はフル装備、比べてゼロは武器も持っていない生身の状態である。


しかも、相手のスキルカードは遠距離タイプだ。こちらがカードを引く素振りを見せればすぐに攻撃を仕掛けてくるだろう。


しかし、相手も動けない。何故なら少しの隙を見せればゼロがカードをドローし、逆転する可能性が無いわけではないからである。


息を呑む隙もないただ立ち尽くすだけの均衡状態が続く。


そして、その均衡はゼロでもテラーでも無く、第三者によって崩された。


ピシッ!


そんな音が聞こえた。


すると間もない内にゼロとテラーの間に木の破片のようなものが落ちてきた。


ゼロもテラーも頭上を見上げる。


そこにはボロボロと崩れていく根の姿が……。


そう。それはナメクジを拘束していたクイーンフォレストの腕、ゼロの知らない内に3分が過ぎていたのだ。


━━━まずい!


ゼロはカードを抜き去った。


案の定、敵の炎球がゼロ目掛けて放たれた。しかし、根に翻弄されたテラーの攻撃はワンテンポ遅く……。


ゼロにスキャンの余裕を与えた。


無数の炎弾がゼロに被弾していく、業火となって燃え尽くす前方をテラーは興味なさげに後ろを向いて逃げの体制を取った。


「待てよ!」


「……。」


テラーはどこから聞こえた声に動きを止めた。


「お前だけ逃がすなんてしねーぞ。」


声は業火の中から聞こえてきた。人が灰になるであろうレベルの炎撃を受けてゼロが生きている筈はない。しかし、声はある筈のない所から放たれている。


湿った大地が業火を沈静していく。


そして、テラーは初めて驚愕した。


そこに立っていたのは無傷のゼロの姿。火傷一つ負ってはいなかった。


テラーは拳を構えた。既にスキルカードの効力は切れていて今の所、テラーの武器は拳から生えた三本のナイフだけ。


対するゼロは武器を持っていない。有るのは首から垂れ下がるボロ雑巾のようなマントだけ。


二人の視線が交差した。


次の瞬間、ゼロが先に動いた。体を丸め手をマントに掛け肩からのタックルのような体制である。


テラーは動かなかった。相手の動きを見極め拳を叩き込む体制。


ゼロとテラーの距離がお互いの射程距離に侵入した。


テラーの右拳がタックルをしてくるゼロの丁度、死角になる位置に打ち込んだ。


これが決まればゼロは死ぬ。絶命は免れない。


しかし、そうはならなかった。理由はナイフと自分の間に挟むように軌道をずらしたマント。


確かにテラーはゼロの死角を貫いた筈だった。


ゼロも衝撃により少しよろめいた様子だ。


そう。刺さらずによろめいた。


ゼロは相手が次の行動を取る前に地面を這うような体制を取って相手の足をすくい上げ転倒させる。


そのまま出口へと去っていくゼロの姿をテラーは眺めていた。




「エリカさん。スミマセン!」


頭を下げゼロは謝罪の言葉を述べた。


「あれは仕方ないよ。奇襲、しかも後ろからだもんね。私でも生き残れたかどうか……。てゆうかよく生きて帰れたって尊敬してるよ。」


エリカはゼロを責めることはせず、次の手を考えていたようで……。


「クイーンフォレストが退却してしまった時点で新しい作戦練ったんだけど……。ちょっと生存確率が低くなるかもだけど……。やってみる?」


「はい。やらせて下さい!」


「うーんでも本当に危険そうなんだけどなー。うーん。」


エリカはゼロに解を求めていたが、心の中では相当やりたくない作戦らしかった。


「大丈夫です!俺を信じて下さい!」


「いや、作戦って言っても作戦じゃないんだよねー。ただ私達が生き残れるかどうか━━━。」


エリカは話しを途中で切り上げると言葉を続けた。


「よかった……。」


ゼロはその言葉の意味を理解できなかったが次の瞬間に知ることとなった。


「あれ、見て。」


エリカの指差す方向にゼロも視線を向ける。


そこには白い男が立っていた。


片手に西洋の剣を携え、堂々とその地を踏み締めている。防具は着けていない。生身のままだ。


距離が遠く見えずらいが男はカードをスキャンさせるともう片方の手にこれまた西洋系の大剣を出現させた。


さらにもう一枚、手に持っていたらしいカードをスキャンさせると今度は両手の剣を宙へとほおった。


「何やってんだ?」


「視てれば分かるわ。あれがこのゲーム第三位とされるプレイヤーよ。」


宙を舞う剣はその姿を粒子状に変換させ天へと登っていく。


変化は起こった。




ナメクジはその体の修復を既に終え、再び進行していた。そこはもうあの狭い崖では無く、広い岩の大地である。


広い場所から見るとナメクジというよりもスライムに近いものに見える。


さらにその姿は肥大していた。太く大きくなっていくモンスターの姿はまさに圧巻の一言。


その周りには遠くからモンスターの様子を伺うプレイヤー達の姿。自らは動かず現状の収集を他人に任せようとする連中である。


その中の一人にチホはいた。彼女はゼロの安否を心配しているが、未だに彼の行方を知らない。


時折、ボードを見て確認するがゼロはゲームオーバーになってはいないようだ。


チホは安堵の溜め息を漏らしつつも決してナメクジから目を逸らさなかった。


きっと彼なら何とかしてくれる。そう信じて……。


変化は起こった。




上空から突然、100mはあろうかという巨大な剣がナメクジにダイレクトに直撃したからである。


ナメクジの呻くような声が聞こえた。しかし、絶命までは至っていない。


ナメクジは完全に巨剣によってその動きを縫い止められていた。


そして、その巨剣に近づこうとしている者の姿が。


そいつは横幅の広い大型の剣の上にのり、柄の部分から照射されているブースターの力によってまるでエアーボードのように宙を推進していた。


男は男に不釣り合いなほど大型の巨剣に手を添える。


たった一人で何が出来るんだと周りから非難の目を向けられるが男は全く気付いていない。


だが、周りが一同にどよめいた。


ゆっくりと持ち上がる巨剣。もちろんそれを支えているのはその白い男の腕だけだ。


剣は上段に構えられた。両手で挟むように持っているその柄からも男と剣の余りの不釣り合い差が分かる。そもそも何故あの剣を持ち上げられるのか分からない。


剣がナメクジに向けて振るわれた。しかし、これは振るうというよりも叩き付ける方に近い。


だが、効果は抜群だった。ナメクジの体が真っ二つになった。そう文字通り真っ二つにだ。


男は剣を素早く上段に構え直す。そして叩き付ける。これの繰り返しである。


ドゴッドゴッ!という爆音もあまりに残酷とも言える光景にプレイヤー全員の意識へ入ってくることはなかった。


ミンチのようにすり潰されるまで男の攻撃は続いた。




「あれが、ハクよ。覚えておいた方がいいわ。これからあなたが生き延びるということはあんな化け物と闘っていくということ。」


アナウンスのように討伐者とその他もろもろの説明がディスプレイから流れ始めた。


「今日は勉強になりました。エリカさん。また、会えますかね?」


「それはどういう意味かしらね?」


「深い意味は無いですよ。俺なりの誓いのようなものです。」


エリカはホーと感心したように頷くと細剣をくるっとこちらに向けてきた。


「その時は敵でもいいならね。」


少しイタズラっぽい喋り方で返してくる。


ゼロは今の彼女は微笑を浮かべているだろうと解釈し、


「それでもです。」


ゼロも微笑で返した。


ゼロとエリカはそこで光に包まれた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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