表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

糸ようじに関する戯言

作者: 良田めま

 糸ようじ、毎日やるの面倒だけど、必ず自分のためになる。



 私は現在、三ヶ月に一度歯の定期メンテナンスに通っている。気になるのは、虫歯の予防というよりも歯周病の予防だ。虫歯は全て治療済みであり、虫歯になりそうなところは歯科衛生士さんが教えてくれるからである。私はただ歯の磨き残しと歯垢除去の際の痛みを警戒すればよい。現状を変える必要なんてないのだ。

 ――そう思っていた。

 メンテナンス前の歯磨きで、うっかり糸ようじ使うのを忘れるまでは。


 この時、私はまあいっかと思った。

「歯はしっかり磨いたし。いつも磨いた率80パーセント越えてるし。今回も大丈夫じゃろう」

 と。


 結果は50パーセントちょい。

 糸ようじを欠いたことが大いに影響しているのは明らかであった。



 庶民の歯を一生懸命メンテナンスしてくださる歯科衛生士さん。彼女たち(私が通う歯医者には女性歯科衛生士さんしかいないのだ)は言う。


「デンタルフロス、毎日してくださいね」


 それに対する私の返答はこうだ。


「はい」


 嘘である。いや、嘘を言っているつもりはない。ただ、毎日やるのは面倒くさくて忘れがちなだけだ。次回メンテナンスまでの三ヶ月の間、一週間に一度くらいしか思い出さないだけなのだ。


 だが今回は違った。

 磨き残し率50パーセント弱。その結果は、完全に油断していた私にとって途轍もない衝撃であった。

 ゆえに頑張った。三ヶ月の間、一日しか欠かさず。

 そして――。


「歯周ポケット、前回6mmだったところが4mmになってます。いい調子ですよ!」


 わぁ…………!

 すごい! 糸ようじすごい!



 結論:歯周ポケットが6mmだったところが4mmになったから、毎日糸ようじには効果がある。



 だが、ちょっと待ってほしい。

 後出しのようで申し訳ないが、実は糸ようじを頑張る裏でもう一つ変えた習慣があったのだ。

 それは歯磨き粉である。


 以前の私は、ドラッグストアで200円以下のお手頃歯磨き粉を使っていた。理由は特にない。強いて言えば、「歯磨き粉なんか何使っても同じやろ」と考えていたからだろうか。2000円する高濃度フッ素には興味がなかった。

 しかし、ふとした気の迷いでいつも使っているのとは別の、ちょいお高めの商品を手に取ってみたのだ。さすがに効果の分からないものに2000円は出せないが、スーパーの特売品税込み700円弱くらいであれば……。


 そして約二ヶ月間、新歯磨き粉を使用したのち、6mm→4mmの劇的ビフォーアフターを得た。

 これは、歯磨き粉の変更が結果になんら作用していないとは言い切れないのではないだろうか?

 歯周ポケットの改善は、毎日糸ようじのおかげとは限らないのではないだろうか?


 再び油断する私。

 そんな私の心の中に、声が響いた……ような気がした。



 馬鹿言うんじゃねえ。

 毎日コツコツ糸ようじやるより、ただ歯磨き粉変えるだけの方が楽だからンな屁理屈こねてるんだろうが。

 舐めてんじゃねえぞ、この怠け者が。

 大体、歯磨き粉に頼るなんざ他人任せにするのと全く変わらないだろうがよ。世の中努力したヤツだけが掴めるモンがあるんだよ。善事だろうと悪事だろうと。

 何に価値を感じるかはテメェ次第だ。だけどよ、自分がやってきた努力くらい認めてやれよ。

 お前は頑張った。毎日コツコツ頑張ったんだよ。一日除いてな(ここ大事)。だからよォ――この調子で、これからも頑張れよ。



 ――そうだ。

 とても小さなことだが、私は習慣を変えることに成功したのだ。そのことを忘れ、慢心する日々に戻るところだった。

 危ない、危ない。

 ありがとう、心の声。

 私は二度と糸ようじを手放さない。



 結論:歯周ポケットが6mmだったところが4mmになったから、毎日糸ようじにはやっぱり効果がある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ