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『転生先は赤字惑星の貧乏貴族。でも幸運(LUCK)で古代AIと許嫁をゲットしたので、軍事オタクの知識で最強領地経営はじめます』  作者: とびぃ


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9-3 始まりの咆哮

ゴゴゴゴゴ……!

アレスの、意識が、爆発的に、拡張された。

彼の、視覚は、もはや、『アルゴS』の、艦橋ブリッジだけを、見てはいなかった。

ロストシップ『プロメテウス』、その、数キロに、及ぶ、巨体の、あらゆる、センサー。

その、全てが、アレスの、「目」と、なった。

三百六十度、全天球の、宇宙空間。

迫りくる、帝国艦隊の、一隻、一隻の、データ。

そして、耳元に、響く、力強く、そして、懐かしい、あの、『相棒』の、声。

<<——戦闘AI『アルゴス』、オンライン。全システム、グリーン>>

<<……マスター、アレス。あなたの、思考コマンドと、完全に、同期シンクロしました>>

それは、もはや、旧式の、OSでも、狂った、AIでもない。

アレスの、軍事オタクの、『知識』。

ヘルムートの、『夢』。

そして、『プロメテウス』の、恐るべき、『戦闘データベース』。

その、三つが、融合して、生まれた、全く、新しい、『相棒』だった。

アレスは、玉座に、深く、座り直し、その、拡張された、意識の、中で、命じた。

(……これが、俺の、船だ)

「——ロストシップ『プロメテウス』、起動!」

アレスの、肉声が、ブリッジに、響き渡る。

「戦闘AIアルゴス、戦闘用意!」

<<御意アイ・マスター>>

その、瞬間。

ドッキング・ベイに、繋がれていた、係留アームが、爆発するように、吹き飛んだ。

黒い、巨艦『プロメテウス』が、数万年の、眠りから、ついに、目覚めた。

「——な……!?」

帝国艦隊、旗艦。

レーヴェンが、その、灰色の、瞳を、初めて、わずかに、見開いた。

「……目標、起動! ……ドックから、離脱します!」

「何を、している! 撃ち落とせ!」

レーヴェンの、怒号が、飛ぶ。

ドックの、崩れた、外壁から、姿を、現そうとする、『プロメテウス』の、巨体。

そこは、帝国艦隊が、集中砲火を、浴びせる、絶好の、キルゾーン、だった。

「——坊や! 無茶だ! あの、あなから、出た、瞬間、蜂の巣だぞ!」

レナが、叫ぶ。

「——遅い」

アレスは、神経接続シンクロした、意識の、中で、冷たく、笑った。

「——アルゴス。……『慣性制御イナーシャ・コントロール』、リミッター、解除。……この、ドックから、『真上』に、跳ぶ」

<<……了解。……重力制御グラビティ・コントロール、最大>>

帝国艦隊の、オペレーターが、絶叫した。

「——そ、総督閣下! 目標ターゲットが……。……き、消えました!」

「なに!?」

『プロメテウス』は、ドックの、出口キルゾーンに、のろのろと、姿を、現さなかった。

数キロに、及ぶ、その、巨体は、まるで、戦闘機ファイターのように、ドックの、崩れた、天井を、『直角』に、突き破り、帝国艦隊の、包囲網の、遥か、『真上』に、一瞬で、躍り出ていた。

「……ば、馬鹿な……!?」

「あんな、巨艦が……! あの、機動うごきは……!?」

帝国軍の、硬直した、戦術マニュアルには、存在しない、三次元機動。

それは、ミミが、魔改造カスタムした、『アルゴS』の、エンジン特性を、遥かに、凌駕する、旧文明の、神の、領域だった。

「——アレス様……。す、すごい……」

シエラが、全天球スクリーンに、映し出された、眼下の、帝国艦隊の、群れを、見下ろし、息を、のむ。

「……フフ。……ハハハハ! 最高だ! 最高じゃないか、坊や!」

レナは、エースパイロットとして、その、あり得ない、機動性能に、歓喜の、声を、上げていた。

「——全艦、慌てるな!」

レーヴェンの、冷徹な、声が、混乱する、帝国艦隊を、引き締める。

「……所詮は、一隻! ……包囲陣形を、再構築! ……あの、化け物を、囲んで、叩き潰せ!」

「……フン。お役所仕事マニュアルどおりが」

アレスは、その、愚直な、までの、帝国軍の、動きを、鼻で、笑った。

(……戦力比は、圧倒的に、不利。……だが、こっちには、前世まえの、知識ちしきと、最強の、AIアルゴスが、いる)

(……そして、何より……)

アレスは、玉座の、アームレストを、撫でた。

(……この、『プロメテウス』の、力が、ある)

(……だが、ここで、帝国ホンシャの、正規艦隊と、全面戦争ドンパチを、始めるのは、悪手だ)

アレスの、サラリーマンとしての、冷静な、判断が、働く。

(……バルツァーとは、訳が、違う。……ここで、レーヴェンを、本気で、叩き潰せば、俺は、『銀河系、最大の、反逆者』として、帝国、全軍を、敵に、回す)

(……それは、ダメだ。……俺の、目的は、『領地経営プロジェクト』の、成功だ)

(……必要なのは、『勝利』じゃない。『交渉ネゴシエーション』の、テーブルに、着かせるための、『恫喝どうかつ』だ)

アレスは、決断した。

「——アルゴス」

<<はい、マスター>>

「……メイン・キャノン。……『荷電粒子砲かでんりゅうしほう』。……エネルギー、充填じゅうてん、30パーセント」

「……え!?」

ガンツが、息を、のんだ。

「アレス様! 使う、おつもりか! あの、伝説の……!」

「ああ。だが、狙うのは、敵艦じゃない」

アレスは、帝国艦隊が、必死に、再構築しようとしている、包囲網の、『ど真ん中』……何もない、虚空の、一点を、ポイントした。

「——ターゲット、あそこの、空間座標、一点」

「……これは、『警告射撃けいこくしゃげき』だ」

<<……了解。……縮退炉しゅくたいろより、エネルギー、直結。……荷電粒子砲、充填、30パーセント、完了>>

『プロメテウス』の、艦首かんしゅ……その、巨大な、中央ブロックが、まるで、花が、開くかのように、展開していく。

その、奥から、姿を、現したのは、まばゆい、ほどの、エネルギーが、渦巻く、巨大な、砲口だった。

「——な……!? 敵艦、艦首に、高エネルギー反応!」

「——総督閣下! 計測不能アンノウン! あんな、数値、見たことが、ありません!」

帝国艦隊が、パニックに、陥る。

レーヴェンも、さすがに、その、圧倒的な、エネルギーの、奔流に、顔を、こわばらせた。

「……全艦、回避……!」

「——撃て(ファイア)」

アレスの、命令と、同時。

『プロメテウス』は、その、始まりの、咆哮ほうこうを、放った。

——音は、なかった。

ただ、純白の、「光」が、宇宙空間を、切り裂いた。

それは、ビームではなかった。

「空間」そのものを、焼き尽くしながら、突き進む、「神の槍」だった。

槍は、アレスが、指定した、包囲網の、中心点に、寸分違すんぶんたがわず、着弾した。

次の、瞬間。

着弾した、「虚無なにもない」空間が、爆発した。

いや、それは、「爆発」という、生易しい、ものでは、なかった。

空間が、歪み、そこから、二次的な、衝撃波ショックウェイブが、嵐のように、周囲の、帝国艦隊に、襲いかかった。

「——ぎゃああああ!」

「——シールド、消失! 全システム、ダウン!」

「——だめだ! ふねの、制御コントロールが、効かない!」

帝国艦隊は、地獄の、様相を、呈した。

『プロメテウス』の、荷電粒子砲は、直撃した、艦船こそ、一隻も、いなかった。

だが、その、着弾の、余波だけで、レーヴェンが、誇る、中央艦隊の、先遣隊せんけんたい、数十隻が、全ての、電子機器を、焼かれ、シールドを、剥ぎ取られ、戦闘不能な、ただの、「鉄の、棺桶」へと、変貌させられていたのだ。

たった、一撃。

それも、わざと、狙いを、外した、「警告射撃」で、ある。

「…………」

「…………」

『アルゴス』の、ブリッジは、静まり返っていた。

「……うそ、だろ……」

レナが、その、Sクラスの、プライドも、何もかも、忘れて、呆然と、呟いた。

「……あ、あの、帝国の、正規艦隊を……。……お遊びで、無力化、しやがった……」

「……これが……。これが、『ロストシップ』……」

ガンツは、わなわなと、震えていた。

軍人としての、常識が、完全に、破壊された、瞬間だった。

「——アルゴス」

アレスは、静かに、命じた。

「……帝国艦隊、旗艦。……レーヴェン総督に、通信を」

<<……了解>>

帝国艦隊、旗艦。

予備電源バッテリーだけで、かろうじて、機能している、緊急モニターに、あの、十歳の、少年の、姿が、映し出された。

レーヴェンは、その、純白の、制服を、乱すことなく、椅子に、座っていた。

だが、その、灰色の、瞳は、初めて、抑えきれない、「怒り」と、それ以上の、「恐怖」に、揺らめいていた。

『——ゲルハルト・フォン・レーヴェン総督』

アレスの、冷静な、声が、響く。

『……これが、俺の、答えだ』

『……俺たちは、反逆者じゃない。……だが、不当な、搾取も、圧政も、受け入れる、つもりは、ない』

『……あんたの、包囲網は、今、この、瞬間、破綻した。……シュテルン星系への、不当な、経済封鎖を、即刻、解除するよう、要求する』

アレスは、そこで、言葉を、区切った。

『……次の、一撃は、外さない。……賢明な、判断を、期待する』

「……小僧……っ!」

レーヴェンが、屈辱に、歯ぎしりする。

アレスは、それ以上、何も、言わなかった。

ただ、通信を、一方的に、切断した。

「——アルゴス。……ウロボロス・ゲートの、座標だ。……シュテルン星系へ、帰還する」

<<……了解。……『プロメテウス』、空間転移ワープシステム、起動。……シュテルン星系へ、ジャンプします>>

黒い、巨艦『プロメテウス』は、レーヴェンが、開発した、帝国式の、ワープとは、全く、異なる、原理の、空間ゲートを、その場で、開き、その、中へと、静かに、消えていった。

残されたのは、半壊し、沈黙した、帝国艦隊。

そして、その、中央で、屈辱に、震える、鉄血総督、ゲルハルト・フォン・レーヴェン、ただ、一人。

「……アレス・フォン・シュテルン……!」

その、名を、レーヴェンは、生涯、忘れることのない、最大の、敵として、その、魂に、刻み付けた。

「……必ず、……必ず、貴様を、帝国の、名の下に、裁く……!」

一方、アレスたちは、無事、シュテルン星系への、帰還を、果たした。

絶体絶命の、デスマーチは、終わり、アレスは、最強の、『矛』と、『盾』を、手に入れた。

だが、銀河帝国セントラルという、あまりにも、巨大な、組織との、本格的な、対立は、今、まさに、始まろうとしていた。

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