表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『転生先は赤字惑星の貧乏貴族。でも幸運(LUCK)で古代AIと許嫁をゲットしたので、軍事オタクの知識で最強領地経営はじめます』  作者: とびぃ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/35

7-2 圧政的総督の「呼び出し」

新総督、ゲルハルト・フォン・レーヴェン(以下、レーヴェン)の着任は、迅速かつ、圧倒的だった。

彼は、シュテルン星系に隣接する、帝国直轄の中立宇宙ステーション『レグルス・プライム』に、新たな総督府を設置。

その際、彼が引き連れてきた帝国中央艦隊セントラル・フリートは、巡洋艦クルーザー十隻、駆逐艦デストロイヤー三十隻以上という、辺境の全貴族の艦隊を束ねても、まるで比較にならない、絶望的な規模の戦力だった。

「……これが、帝国ホンシャの、『本気』……」

『アルゴス』のドックで、遠巻きにその大艦隊の威容を観測していたレナが、さすがに、その獰猛な笑みを消し、真顔で呟いていた。

「……アタシがいた、中央艦隊の、一個分艦隊まるごと、だ。……冗談じゃない。辺境の総督に着任するのに、こんな戦力、あり得ないよ」

「……つまり、それだけ、我ら(アレス様)が、危険視されている、ということですな」

ガンツも、老練な軍人として、その戦力差に、冷や汗を禁じ得なかった。

その、絶望的な戦力が到着した、わずか数時間後。

シュテルン領主館の戦略司令室に、レーヴェン総督からの、簡潔な「命令」が届いた。

『——シュテルン男爵、アレス・フォン・シュテルン。及び、筆頭秘書官シエラ。両名は、24時間以内に、総督府レグルス・プライムに出頭し、新総督への着任の挨拶・・を行え。……これは、帝国中央の、正式な『命令』である』

「……呼び出し、ですわね」

シエラが、青い顔で、その命令書を握りしめる。

「……これは、罠でしょうか?」

「罠、以前の問題だ」

アレスは、冷静に頭を振った。

(……サラリーマンが、本社ホンシャ役員レーヴェンからの『面談依頼よびだし』を、断れるわけがない)

(……断った瞬間、『反逆』とみなされ、あの、バカげた大艦隊が、攻め込んでくる。……詰みだ)

「……行くしかない」

アレスの決断に、司令室が、緊張に包まれる。

「ゼクス」

「はっ!」

「護衛は、お前一人でいい。……帝国やつらに、俺たちの戦力(手の内)を、見せる必要はない」

「御意」

「ガンツ、レナ、ミミ。……俺とシエラが留守の間、領地の最大警戒レベルを維持。……万が一、俺が戻らなかった場合は……」

アレスは、言葉を区切った。

「……どうするニャ!? アレス(だんなさま)!」

ミミが、泣きそうな声を上げる。

「……ヘスティア。プランBを、実行しろ」

「……プランB……?」

シエラが、アレスを見上げる。

アレスは、シエラの肩に、そっと手を置いた。

「……お前たちだけでも、生き残れ。……『ウロボロス・ゲート』を使って、ドレイクの協力コネで、この星系から、脱出するんだ」

「「「……っ!」」」

「そ、そんな……! アレス様を見捨ててなど……!」

シエラが、叫ぶ。

「これは、命令だ」

アレスは、冷たく言い放った。

「……AIヘスティアの存在がバレれば、俺たちは、どうせ『反逆者』だ。……だが、俺が『監査よびだし』で、時間を稼いでいる間に、お前たちが逃げ切れる可能性は、ゼロじゃない」

アレスは、アンドロイド体のヘスティアに向き直った。

「……ヘスティア。お前は、絶対に、帝国に渡すな。……お前は、この星の、未来きぼうだ。……シエラたちを、必ず、守れ」

「…………」

ヘスティアは、その、完璧な美貌を、わずかに、伏せた。

<<……管理者アドミニストレーター様。……あなたの、生還確率を、最優先する、プランCを、推奨します>>

「……却下だ。……行くぞ、シエラ、ゼクス」

十歳の少年は、自分一人の犠牲で、仲間プロジェクト・メンバー全員を救おうとする、前世のサラリーマンとしての「覚悟」を、決めていた。

……中立ステーション『レグルス・プライム』、総督府。

アレス、シエラ、ゼクスの三人は、その、あまりにも、きらびやかで、冷たい、権力の象徴の前に、立っていた。

護衛のゼクスは、その異様な(獣人としての)外見から、武装解除の上、「ペット(・・・)は、控え室で待て」と、屈辱的な扱いを受け、隔離された。

アレスとシエラは、たった二人で、その、巨大な執務室の扉の前に、立たされた。

「……シュテルン男爵、アレス・フォン・シュテルン。入ります」

アレスが、十歳とは思えぬ、堂々とした声で、入室を告げる。

重い扉が開き、その先に、待っていたのは、冷徹なまでの、静寂だった。

部屋の、一番奥。巨大な黒曜石オブシディアンの執務机の向こう側に、一人の男が、背を向けて、立っていた。

ゲルハルト・フォン・レーヴェン。

その、帝国軍の、純白の制服は、塵一つなく、まるで、彼自身が、人間ではなく、冷たい「法」そのものであるかのように、威圧感を放っていた。

「……来たか。シュテルン家の、『神童』とやら」

レーヴェンは、ゆっくりと、振り返った。

歳の頃は、四十代か。

彫刻のように整った顔。

だが、その、灰色の瞳は、一切の感情を映さず、まるで、爬虫類のように、冷え切っていた。

「……ほう。噂通りの、小僧だ」

レーヴェンは、アレスを、まるで、顕微鏡で、虫けらを、観察するかのように、値踏みした。

「……新総督、ゲルハルト・フォン・レーヴェン閣下。この度のご着任、心より、お慶び申し上げます」

アレスは、帝国貴族として、完璧な、最敬礼をとった。

シエラも、緊張に震えながら、それに続く。

「……フン。貴族ごっこは、結構」

レーヴェンは、机の上の、一つのデータ端末を、指で、弾いた。

「……単刀直入に、聞こう。男爵」

「……はい」

「貴様の領地は、この、数ヶ月で、異常なまでの、経済成長を、遂げている。……負債は、完済。あまつさえ、隣の貴族バルツァーを、艦隊戦で、打ち破り、その、領地まで、奪い取った」

「……決闘は、帝国法に則った、正当なものです」

アレスが、冷静に、答える。

「——正当、だと?」

レーヴェンの、声の、温度が、さらに、数度、下がった。

「……辺境の、秩序を、著しく、乱した、その、行為が、か?」

彼は、アレスの、目を、真っ直ぐに、射抜いた。

「……貴様。何か、使ったな?」

「……と、仰いますと?」

「——『禁忌タブー』の、力だ」

レーヴェンの、灰色の瞳が、憎悪に、ギラついた。

「……AIだ。……貴様、旧文明エンシェントの、忌まわしき、AIを、再起動させただろう」

「「……っ!」」

アレスとシエラの、背筋に、氷の、杭が、打ち込まれたかのような、衝撃が、走った。

(……バレてる……!?)

(……いや、カマだ! ヘスティアは、完璧に、隠蔽ステルスされているはず!)

アレスは、必死に、ポーカーフェイスを、維持した。

「……総督閣下。……ご冗談を。AIは、帝国法における、最大の、禁忌。……そのようなもの、この、シュテルン星系に、存在するはずも、ありません」

「……ほう? では、あの、フリゲート三隻で、十二隻の艦隊を、壊滅させた、『神がかりの戦術』は、どう、説明する?」

「……それは、我が軍事顧問ガンツの、老練な、指揮と……」

「——そして、『幸運』、か?」

レーヴェンが、アレスの、言葉を、遮った。

アレスは、息を、飲んだ。

(……まずい。こいつ、俺の【LUCK:EX】の、噂まで、掴んでやがる……!)

「……フン。どちらにせよ、貴様が、この、辺境星域の、『秩序』を、乱した、危険分子であることに、変わりはない」

レーヴェンは、本題に、入った。

彼は、一枚の、電子契約書を、アレスの、目の前に、提示した。

「……帝国中央セントラルは、決定した。……当宙域の、防衛体制の、抜本的な、見直しを、行う」

「……その、防衛費を、賄うため、貴様の、シュテルン星系に対し」

「——『辺境星系安全保障税』を、課す」

「……税率……?」

シエラが、かすれた、声を、出す。

レーヴェンは、その、灰色の、瞳を、一切、揺らがせることなく、宣告した。

「——貴様の、領地の、全収入の、九十パーセント(・・・・・)だ」

「「…………っ!」」

それは、税金、ではなかった。

「強奪」であり、実質的な、死刑宣告、だった。

「……そ、そのような……! 法外な……!」

シエラが、思わず、抗議の、声を、上げる。

レーヴェンは、シエラを、虫けらを、見るような、目で、一瞥した。

「……黙れ、小娘。……これは、『交渉』ではない」

彼は、アレスを、見据えた。

「——『命令』だ。……帝国中央セントラルの、な」

「……もし、これを、拒否すれば……?」

アレスは、かろうじて、声を、絞り出した。

「……その瞬間、貴様を、『帝国への反逆者』として、断定する」

レーヴェンは、窓の外……彼が、引き連れてきた、圧倒的な、大艦隊を、指さした。

「——あの、大艦隊が、貴様の、その、『神童』の、メッキごと、その、赤子(赤字)惑星を、宇宙の、塵に、変えるだろう」

アレスは、唇を、噛みしめた。

あまりにも、圧倒的な、力の、差。

あまりにも、理不尽な、官僚主義の、暴力。

前世の、サラリーマンとして、幾度も、味わってきた、「本社ホンシャ決定ムチャぶり」の、最悪の、形だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ