表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/11

生き霊、再降臨ーーーーー"宵闇の中、白き花は散るー"(後夜)





「…………ハッ!!」



目を覚ました瞬間、鼻をついたのは湿った木と埃の匂い。

そこは、古びた見知らぬ部屋だった。




身体が妙に重い。

息が浅く、喉がカラカラに渇いている。



ふと

隣に温もりを感じ、

まさか……





と思ってそっと見ると、


「すぅ………すぅ………」




と、

穏やかに寝息を立て、

一糸纏わぬ姿で寝ている夕顔がいた。




「ちくしょうまたこれかよ!!」





また、やってしまったらしいーー

ただ、今回はいつもと少し違っていた。





いつもなら、朝の雀がチュンチュン鳴いてるのに──




蝋燭一本の灯りが頼りの室内。

外は、息を呑むような漆黒の闇だった。



電気も街灯もない平安の夜は、

現代では考えられないほど暗い。




雨の音が、いつの間にか止んでいた。


外からは虫の声も風の音さえもしない。


世界そのものが、呼吸を止めてしまったようだった。





俺はゆっくりと起き上がった。


だが、体が重い。違う、重いんじゃない。


自分の体なのに、まるで誰かのものみたいな感覚。




手を動かしても、足を動かしても、

どこか一拍遅れてついてくるような、

薄い膜越しの感覚がある。




(……なんだよ、これ)




脳が現実を処理しきれてない。

隣で眠る夕顔の寝顔をもう一度見る。




(本当に……俺、やったのか?)




でも、記憶がない。

触れたはずの感触も、交わした言葉も、

すべてが霧に包まれたように思い出せない。





「…源氏様…?」






夕顔が目を覚まし、微笑んだ。




その笑顔に、なんかホッとして、泣きそうになる。





「夕顔たん、俺ーーー」



ギィィ……と、古い木が軋むような音が、どこからか聞こえた。




部屋の戸は閉まっている。



風も、ない。

じゃあ今の音は――




(……何か、来た…?)





俺は、息をのんだ。





そのときだった。






「………………源氏の……君……」





背筋が凍った。



声がした。


だが、それは――夕顔の声じゃない。




もっと、低く、ねっとりと絡みつくような、女の声。


そして、その声には――怨念があった。






「何故じゃ………なぜその女と交合うたのじゃ……?」




ズリッ




何かが、床の上を引きずるような音がした。



「……許さぬ………あの女ーーー」




フッ…と


蝋燭が、突然消えた。


次の瞬間、部屋は闇に沈む。




(まずい……これはまずい!!)




叫ぼうとしたそのとき、

夕顔の体がぴくんと跳ねた。




「う……うぅ……やめて……やめて……っ!!」




もがくように身をよじる。

汗なのか、涙なのか、頬を伝っている。




「やめろ……夕顔から離れろ…!」




声にならない叫び。

体が動かない。

まるで何かに無理矢理体を縛りつけられているようなーー



──ズズ……ズズズ……



黒い影のような者の細くて長い腕が、

夕顔の首を絞める。



やばいやばいやばいやばい…!!







「やめ、てくれ…!」





俺はなんとか手を伸ばそうとするが、体が動かない。


「う……ぐ……っ……」




なぜだ、なぜ俺は動けない

くそっ、助けたいのに……!




「……これで分かったであろう…?運命に抗うことはかなわぬ…」



あの“声”が、再び頭の奥に響いた。

お前は誰なんだよ!!



「…げんじ、さま…たす、け…」




夕顔が、震える手をこちらに伸ばしたー

その瞬間。



ドクン。



夕顔の目が一度大きく見開かれた。


こちらに伸ばした手が、だらりと垂れる。


瞳から、光が…消えていた。



──しん……と、世界が静まる。


風も、音も、気配も、すべてが止まった。


まるで、最初から何もなかったみたいに。




そして。


「……夕顔?」




嘘だろーーー?


ゆっくりと、手を伸ばして彼女の頬に触れる。


でも。


冷たい。


あまりにも、冷たかった。




──後夜、完。





え…?この話ってホラーでしたっけ…?

ギャグハーレムじゃなかったの…?

てか夕顔たん、本当に死んじゃったのッ…!?


次回、またしてもシリアスなのか!?それともギャグが復活するのか!?

誰にもわからない!筆者にもわからないッ!!

とにかく、見届けてくれッッ!!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ