表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/19

第十二章:見えない線


「……ナギサ・ミナさん、欠席……?」


朝の出席確認で、担任の声が少しだけ引っかかった。

昨日まで普通にいたはずのミナが、名簿上からも消えていた。先生が小さく眉をひそめ、パソコンを操作する音が妙に大きく響いた。


「……出席番号が、ありませんね……?」


教室内がざわつき始める。アオイは机の下で拳を握りしめた。

ミナはもう、"ここにいない"ことにされたのだ。


(ほんとうに……消された?)


隣の席でナツキが小さくつぶやいた。「へんなの、ね」

笑っているが、その目は揺れていなかった。



---


放課後、ヒロは資料室の端末を前にデータを確認していた。

“ミナ”の記録がシステムから削除されていること。

昨日までは確かに存在していた出席記録が、今日の時点で空白になっていること。


(これが……“操作”か)


彼は教室内の異常や、生徒たちの変化を監視する役目を持っている。

といっても、下っ端の自分に与えられる情報は限られている。

“何か”が起きている、そう感じても、それ以上に踏み込むことはできない。


(ただの消去じゃない……記憶の改ざんも含まれてる……)


ヒロは、ある生徒に目を向けていた。ナツキだ。

彼女はこの数週間、妙にアオイと距離が近い。

(アオイに影響を与えてる……それとも……偶然?)


ヒロはナツキを“監視対象の一人”としてマークしていた。明るく、社交的で、成績も問題ない。ただの生徒――

……のはずだった。



---


その夜、ヒロは一人、学校の屋上にいた。

冷たい風が吹く中、耳に通信が入る。


> 「観測範囲内に異常なし。引き続き対象群の動向を監視せよ」




「了解」


ヒロは答える。けれどその目は、組織の意図を読みきれないもどかしさを宿していた。


(“カラフル”という言葉を耳にしたのは、つい最近だ……何かの隠語か? それとも……)


正体の見えない“何か”が、確実にこの学園内に存在している。

その中心にいるのは、アオイ。

だが彼女を囲む人間たち――ミナ、ナツキ、そして他の生徒たちもまた、ただの“クラスメイト”ではない可能性がある。


(……何が始まってるんだ)


ヒロの胸に、じわじわと疑念と不安が広がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ