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序章 ―空は、青いのか?―
「空って、ほんとうに青いのかな」
その言葉が、口からこぼれた瞬間、自分でもびっくりした。
なぜって、空は青いに決まっている。誰だってそう見えるし、そう教わってきた。
なのに、今日の空は――ほんの少し、違って見えた。
放課後の教室。
ひとりで窓辺に立ち、私は見上げる。誰もいない静けさのなか、夕方の空がゆっくりと色を変えていく。
けれどその青は、まるで上から塗りつぶしたみたいに“完璧すぎて”不自然だった。
(なんだろう、この感じ……)
胸の奥がそわそわする。言葉にできない違和感。
まるで、自分の目の奥で“何か”がざわめいているような――。
「アオイー、帰ろう!」
友達の声がして、私は慌てて振り返った。
「うん、ごめん!行こう!」
空は、青い。
それが“常識”だ。
でも、私はもう、疑い始めていた。