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帰結

「ちなみにこれは君への告白とかじゃないからね」


「わ、分かってますよそんなこと!」


 顔が赤くなってしまった。一応この人を異性として認識していた自分に、驚いた。


「男の子にも似たような問答をした結果、どこからか勝手に同人誌が売り出されたんだよね。買ったけど。五百円で」


「聞いてません!!」


 先生はクスリと微笑を浮かべた。はじめて笑顔を見れたんじゃないだろうか。


「じゃ、今日の授業はここまで。飲み過ぎには気をつけて。愛してるよ、みんな」


 聞いてる方が恥ずかしくなるような台詞を口にして、先生はひらひらと手を振り出ていった。去り際に「たまには、実家に帰りなよ」って呟いていた気がする。


 ちなみに授業時間はまだ十分に残っていたが、本人は勝手に早退したらしい。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 翌週。私は同じ曜日の同じ時間に、同じ教室にいた。死ぬほど恥ずかしくて、来たくなんてなかったのに、出席してしまった。


「あれ?」


 教壇に立っていたのは全く知らないの人物だった。眼鏡をかけ、よれのないスーツに身を包んだ白髪の男性。典型的な大学教授の姿だ。


「あの……前回授業をされた先生は?」


 私は思わず駆け寄り、そんな質問をしていた。いや本当にどうしてか分からないけど。


「ああ、彼はあのときだけの代理だよ。今は他の大学……いや、違う国に行ってるだろうね。日に焼けたジーンズを履いて、縫い目だらけのバックパックを背負って」


「い、今どこに!?」


「それが把握できてないんだ。神出鬼没なんだよ」


「『君たちと会える明日を何よりも楽しみしてる』って言ったくせに……」


 本当の指導教授は「ははは、無責任だよね」と笑みを浮かべていた。


「常に自己を極限に追い込み、人の根源は何かと問い続けているんだ、彼は。きっといつまでも帰結しないだろうけど」


「……はあ、どうしようもない人」


 私はクスリと笑った。あの人は間違いなく社会不適合者だ。長所はあるけれど、欠陥だらけ。それでも私にとっては特別で、生き続けて欲しいと願える人だった。


 もしかすると、人間なんてそんなものでいいと身をもって教えてくれたのかもしれない。いや、それは考えすぎだろう、多分。


 


 


 


 ……実は数年後、奇妙な縁で私は彼の助手になる。

 けれど、それはまた別の話だ。

本作をお読みいただき、ありがとうございました。

これで完結ですが、もしかすると続編を執筆するかもしれません。

ご感想などいただけましたら、とても嬉しいです。


改めまして最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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