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証明

※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 それは十年くらい前の出来事。小学生の私は一人で登校中だった。ゴーストタウンと化した町を歩いていると、ふと視界の端に異様なものが映った。


「大丈夫!?」


 一人の老人が、まるで力尽きたかのように道端に倒れていた。私は駆け寄り、声をかけた。


「おお……また気を失っとったわい」


 慌ててスマートフォンを取り出した。両親が「何かあったときのために」と持たせてくれたものだった。震える指で119を押し、耳に当てる。


 必死に状況を伝えようとしたが、説明は辿々しかった。それでも救急隊の人は落ち着いていて、周囲に見える建物の情報を聞き取り、どうにか居場所を特定してもらえた。


「もうすぐ救急車が来るよ!」


「もう大丈夫じゃ。お前さん学校に行く途中じゃろ?」


 おじいさんは、私の口が開きっぱなしのランドセルを見つめていた。


「一緒にいるよ! 心配だもの」


「……そうか」


 二人で偶然見つけた古びたベンチに座り、並んで座った。後から聞いたけれど、この人は何度も外で倒れていたらしい。もう長くはないと、本人も悟っていた。


「長生きはしてみるもんだ。こんなに親切な子供に出会えるなんて」


 けれど、そんな先の短さも感じさせないほどに、朗らかな笑みを浮かべてくれた。


「言い過ぎだよ」


「言い過ぎなもんか。儂は嫁に先立たれ、息子夫婦と孫も全員事故で亡くしたんじゃ」


「!!」


 しばらく静寂が流れた。やがて、おじいさんはそっと顔を上げ、空を仰いで呟き始めた。


「孤独な死に損ないだったが……」


 おじいさんはゆっくりと私の方へ顔を向けた。そっと手を伸ばし、私の頭を撫でる。


「ありがとうな、生かしてくれて。生まれてきてくれて」


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 今そんな記憶が蘇った。何かが息を吹き返すかのように。


「私は、特別になれるん……ですよね? 誰かから生きてほしいと願ってもらえる人間になれますよね?」


 涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、必死に問いかけた。


「ああ。僕にはそれを否定する確たる証拠は何もない」


 再び目と目が合う。二人の間で言葉では表せないものが、重なった気がした。


「ゆえに証明終了だ。君が、君たちが特別ではないことの証明はできない」


 それは本当に証明だったのだろうか。感情的で、経験に基づく主観的もので、体を成していない気がした。でも……私にとっては何よりも美しく、何よりも輝かしい証明だった。


 だから立ち上がってしまった。そして、間の抜けたような拍手をパチ、パチと打ち鳴らした。手を叩いたのは私だけ。でもそんなことは関係ない。だって私は特別なのだから。

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