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近くの彼女は遠い人  作者: へーまる
第1章 僕と高校生
11/14

準備期間

10話までは半分、登場人物の紹介要素も強かったのですが、これからは本格的にお話が進んでいきます。優斗達をこれからもよろしくお願いします。

飯田さんと連絡先を交換した日の夜、夕食と入浴を済ませ、自分の部屋のベッドでくつろいでいるとさっそく飯田さんから連絡が来た。


『飯田渚です!さっそく送ってみた!』




おそらく、よろしくお願いしますの意味が込められた文と一緒に可愛らしい子猫のスタンプが送られてきた。




『小林ですよろしく!』


僕も挨拶と一緒に猫のスタンプで返すことにした。


『スタンプかわいい笑小林くんそういうの使うんだ』


『飯田さんが使ってたから似てるの返そうと思って』


『なるほどね〜。真似されたわけか笑』


『ところで飯田さんは行きたい場所とかあるの?』


『そうだな〜ベタに遊園地とか?』


『飯田さんがいいなら僕は全然大丈夫だよ』


『ほんと?でもちょっと緊張しちゃうな〜笑』


『じゃあ別のところにする?』


『ううん!遊園地行きたい!』


『了解!』




飯田さんとの初めてのお出かけは、まさかの遊園地になった。男女で遊園地はもはやデートなのではないかと感じるが、飯田さんの性格からしてそこまで深くは考えてないのだろう。そんなことより僕が心配しているのは当日の服装についてだ。前にスーパーで飯田さんを見た時の服装を見るに、おそらく相当ファッションセンスがある。いくら相手が僕だとはいえ、女性は異性とのお出かけはそれなりに力を入れてオシャレをするものだと母親から聞かされている。僕自身、極端に服装に無頓着な訳ではないが、正直多少背伸びしないと彼女の隣を歩くのは失礼に感じてしまう。当日までに服を新調する必要がありそうだ。


しかし、高校生の男子が女子と二人で遊園地に出かけるとなるとどんな服装が最適なのだろうか。僕にはその心得がない。しばらく考えていると僕は一つの解決策を思いつき、すぐにスマートフォンを開いた。







「ところで誰と付き合ったんだ?」


「いやいや!付き合ってないよ」



土曜日の正午、僕は慎介に服を選んで貰うために買い物に来ていた。飯田さんと遊園地に行くことが決まった時に、慎介にコーディネートをお願いしていたのだ。慎介は昔からオシャレで、今も彼女がいるので女の子と出かけるときの服装を聞くには最適だと考えたのだ。



「じゃあなんでまた突然『服を選んで欲しい』なんて連絡してきたんだよ」


「今度出かけるから服が欲しかったんだよ」


「女の子と?」


「飯田さんと遊園地行く」


「飯田さんって優斗の隣の席の子だよな?いつからそんなに仲良くなったんだよ」


「隣の席だと話す機会も多いんだよ。クラスの係も一緒だし」


「まず係が一緒なのが一番謎だけどな」


「仕方ないだろ。他に誰もいなかったんだから」


慎介は終始笑いながら僕をからかっていた。前の出来事から僕たちは以前よりも距離がぐっと縮まり、こうして二人で出かけることも増えた。こんなにも居心地の良い場所を与えてくれた慎介には感謝してもしきれない。


「それで優斗は飯田さんのことが好きなの?」


「いやいや!まだそんな感じじゃ」


「まだってことはなる可能性はあるんだな」


「もう勘弁してくれ」


慎介はさっきよりも大きく笑いながら僕の反応を楽しんでいた。


「それで優斗はどんな服が着たいんだ?」


「それが全く見当がついてない」


「ま、まあだからわざわざ俺と休みの日に服を買いに来てるんだもんな」


慎介はさっきの大きな笑顔とは違う困ったような苦笑いをしていた。


「まあわかった。とりあえずついてきてくれ」


「頼もしいよ」


僕たちは何ヶ所か店を回り、僕は無事に服を揃えることができた。その後、今日のお礼に慎介にご飯をご馳走することになり、彼の大好物の唐揚げを食べに来ていた。


「うんまああああ」


「めちゃくちゃ美味しいねこれ」


「ほんと最高だよこれ。ありがとうな優斗」


「いやいやこちらこそ。一日付き合ってもらっちゃって」


「あーそういえばなんだけど、服を俺が選んだこと飯田さんに言うなよ」


「え、どうして?」


「飯田さんは優斗と遊園地に行くわけだからな。普段着がダサいので友達に選んでもらいましたってなんかあれだろ」


「ま、まあ高校生としてどうかと思うよ」


「まあそういうことだ。約束な」


「うんわかったありがとう」


慎介は僕と話しながらも物凄いスピードで唐揚げを口に入れており、もう半分以上がお皿の上から無くなっていた。


「ところでいつ行くんだよ」


「来週の日曜日」


「あーその日俺と凛子も遊園地の近くのカフェ行くからもしかしたら会うかもな」


「恥ずかしいのでできるだけ会いたくないです、、、」


「照れんなよー。まあさすがに二人が手繋いで歩いてたりしてたらそっとしといてやるけどな」


「いやいや、、、」


今日の慎介はなんだか楽しそうだ。おそらくこういう話が好きなのだろう。彼が楽しんでくれるのは何よりだが、その対象が僕でなければ僕自身ももっと楽しめたのかもしれない。


「楽しんでこいよ」


「ありがとう。楽しんでくるよ」


僕たちは食事をとったあと真っ直ぐそれぞれの家に帰った。








『日曜日なんだけど九時に駅に集合でもいい?』


家に帰ると、飯田さんから連絡が来ていた。日曜日の集合時間についての連絡だ。


『うん大丈夫だよ』


『ありがと!また学校でね!』


当日のプランや、その他の細かいことについては学校でいつでも話せるので特に焦って決める必要もないだろう。まだ一週間もあるので、日曜日のことも含め、それまでに飯田さんともう少し仲良くなっておこうと考えながら僕は眠りについた。




「日曜日夜ご飯とかどうする?」



遊園地が二日後に迫った金曜日の放課後、僕たちは徐々に慣れつつある図書係の業務をこなしていた。僕は利用者が誰もいないタイミングを見計らって飯田さんに聞いた。




「んー。せっかく海の方に行くなら、海鮮とか食べたいんだよね」


「じゃあ食べて帰るってことでいいかな?」


「そうだね!そうしよ!食べるところは私が探しておくね」


「何から何まで任せちゃってごめんね。ありがとう」


「私が遊びたいって言ったんだし当たり前だよー」


「当日も晴れそうで良かったね」


「だよね!私、すごい楽しみにしてるから安心した」


内心、出かける相手が僕ということに勝手に不安を感じていた。だけどこんなにも楽しみにしてくれていたんだとわかって凄く嬉しかった。


それを聞いて、僕もさらに日曜日が待ち遠しくなった。

今回のお話は、遊園地に行くことになった優斗の直前までの期間の物語です。実際どこかに遊びに行く時は、楽しみにしている当日までの時間が一番楽しかったりしますよね。


それって自分の中で、当日の最高の形を想像してるからじゃないかなと自分は思います。


実際に起こりうる最高の出来事を考えながら過ぎる時間はやっぱり楽しいんですもんね。


だけど自分は期待しすぎて、「あれ?思ったのと違う」となるのが嫌なので、どんな予定もあまり楽しみにしないようにしています。そう考えるようになってからは、当日、思ったより楽しかったと思うことが多くなりました。


でもやっぱり楽しみにしていろいろ考えてる時間ってすごく楽しいですから一長一短ですね。


というわけで、優斗と飯田さんの遊園地当日が、果たしてどんな風になるのか楽しみにしていてください。11話も読んでくださりありがとうございました。

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