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「さあ、入って」
七月先輩に通された隠し扉の向こうは、想像よりも見慣れた構造をしていた。ごく一般的な日本の住宅そのままのつくりだ。
玄関を上がって、フローリングの廊下を進んだ先に、カーテン越しの灯りが漏れていた。
内装は今となっては古い世代のものだったけれど、清潔感が保たれており、外光が入り込まないため夜みたいに薄暗い以外は、小家族で暮らすのに不都合がなさそうに見えた。
大所帯では窮屈な廊下にみんなで列をなし、その先頭で深呼吸するⅣさんを応援した。
けれどもそこでⅣさんがフリーズし、ピクリとも動かなくなった。
先輩はぼんやりとした表情を置き去りに、先にカーテンを潜って向こうの部屋へ消えてしまう。
「ほら、勇気出しなよ」
こんなの年上のお姉さんにかける言葉じゃないよねと、自分でも混乱してしまう。
魔女Ⅳは怖がっていた。
果敢にダアトに立ち向かった彼女にも、たった一つ恐れるものがある。このカーテンの先に待ち受けるのは、いつかの彼女が負った、一番深い心の傷そのものなのだから。
「ほら、さっさと行く。うしろ、詰まってんだからよ」
最後尾の九凪君からの不平の声。こういう空気が苦手なのか、いつもの皮肉もなく、困った顔をしたままだ。
「行こう?」
僕も彼女の肩を押す。
そうして銀髪の魔女はカーテンを潜る。不安に手を引かれ、僕もあとに続いた。




