1
チャイムが鳴って、ようやく僕は浅い眠りから揺り戻された。
スマホが示した時刻は午後三時。硬い机に押し付けたままだった肘がちょっと痛む。口元を手の甲で拭いながら周囲をうかがえば、以前とはちょっと違うけど、いつもの教室の風景だった。
昨日は何だか興奮してよく眠れなかった。だからなのか、今日は朝からやたらと睡魔が襲ってくる。
僕たちの町を襲ったあの理想郷現出から明けて、今日で二回目の金曜日。学校では未だに散らかった校舎の後片付けに明け暮れるばかりで、臨時的に再開された授業もごく一部だけだった。
今日はいつにも増してクラスメートの姿が少なかった。持ち主が戻らなくなった席を眺め見て、自分の首筋に消えなくなった、まるで首枷みたいな傷が疼いた気がした。
それでも窓の外の風景は、少しずつだけど変わり始めている。
イ界から堕ちた万魔殿は、駅前一帯を押し潰してうず高い瓦礫の山になった。あの辺りは立ち入りが厳しく制限されているから、この町も都市としての意味を大きく変えないとこれからやっていけなくなるだろう。
あれからずっと答えが見つからないことがある。
あの時、迫り来る円卓騎士に囲まれた僕がどうして万魔殿から生還できたのか。
最期にある少女に僕の心からの勇気を見せて、強く想いを馳せた。そしたら記憶が途切れて、その次が病院のベッドの上だった。
呪いと奇跡の間に相関関係があるというのが、魔術のセオリーらしい。
ならあの時は、呪われた僕に奇跡が舞い降りてくれたのだろう。
世界はそういう風にできているのだと納得することにした。




