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 円筒型の巨塔内部は完全に空洞となっていて、外壁内側に沿って果てしなく続く階段を下ると基底部へと至る。さながら裏返しの、螺旋の塔だ。

 目測にして一〇〇メートルほどの直径を持つ円筒――その中心を、光の筋道が一直線に通り抜けていた。空洞内に共鳴する胎動めいた音。階段からは距離があるが、迂闊にあの光柱に触れれば、人体など瞬時に燃え尽きてしまいそうなほどのエネルギーの奔流だった。

 そしてこの塔内部には、魔法原理で浮かぶ一種の浮遊庭園が点在していた。

 浮遊庭園の一つに、今や残存二名となり果てたダアトが片翼――〈迅雷のアバトラ〉が襲来者到達を待ち侘び、無心に仁王立ちしている。

 この男、ダアトのイデオロギーに同調するでもなく、相棒として行動を共にするインディゴへの友情ないし仁義があるわけでもない。

 ただ一つ、彼には道理があった。

 ダアトの始祖――異端者フレガが禁忌を冒してまで渇望していたという〝魔法が実現された未来〟を己の目で見届けて、そして確かめたかったのである。人は、魔法という本当の〝奇跡〟を得ても尚、原始の世界より連綿として継承し続けてきた〝呪い〟の連鎖を克服できないのか、と。


「フ……それも綺麗事か」


 誰に聞かせるでもなくほくそ笑み、そして顔を上げる。ジャケット内の鞘から二本のサバイバルナイフを抜き、両腕に構えた。

 ここから先に行かせるべきでない、襲来者の到着だ。

 襲来者は、名を宇佐美瑛斗と言う。ごく最近まで魔術師ではない、ただの一般学生だったと聞いていた。

 だが最上階側から螺旋階段を駆け下りてきたこの少年は、自身が以前に対面していた筈の彼とは、あからさまに容姿が違っていた。

 髪の色、奇妙な仮面、そして肩から生えた禍々しい二本腕に大刀。どう見ても悪魔めいた出で立ちはまともではない。

 そもそも、始原魔導器の手助けもなく、如何にしてこの万魔殿まで辿り着けたのかも不明だった。

 だとしても、理想郷現出が始まったこの世界で、幻想は現実と知るべし。

 始原魔導器エンタングル・クォーツが魔女たちを媒介してイ界の魔力を吸い上げ、この万魔殿そのものを錬成した。ならば別の始原魔導器や魔女に相当する贄さえ揃えられれば、原理的に同規模の奇跡が起こせるのもまた道理。

 宇佐美瑛斗がこちらを視認し、異形の腕が大刀を正眼に構え――そして吼えた。

 アバトラも応戦すべく、ナイフをかち合わせる。相手が己の半分ほどしか齢を重ねていない少年だとしても、それを斃すことで一億の子らを救える奇跡が起こるのなら、呪詛も甘受しよう。

 アバトラは自らが悪であろう、この世界の呪いであることを演じきろうと決心していた。


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