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 僕が眠ってる間に九凪君が遁走して、協会関係者から有用な情報まで聞き出してくれていた。さすが協会若手きっての成長株、情報収集の手際のよさに感服した。


「いいか宇佐美。まず魔術結社ダアトの片割れ、青のスーツ男だ。通称インディゴ。奴の正体は真っ当な魔術師じゃねえ、ガチのテロリストだ。各国のテロ組織に広報役として関わってきた、魔術師とは別の意味で裏世界の住人だった」


「言われてみれば、あんまり魔術師っぽくはなかったよね。魔術よりも銃を使いこなしてるみたいだったし」


「ああ、以前見たとおり、奴自身は戦闘系の魔術師じゃない。だから魔術で対抗さえできれれば、こっちにだって勝算はある」


「問題は、何度か耳にした〈始原魔導器〉ってアイテムだよね」


「インディゴはその始原魔導器、エンタングル・クォーツってやつを扱う知識があるみたいだが、正直そいつで何ができるのか、こっちにゃまったく読めねえ。今わかってるのは、そいつの使用にとんでもない量の魔力を消費するらしい、ってことくらいだ」


「……あいつらがその始原魔導器を何かの大規模な儀式に使うつもりなら、僕みたいなザコ相手には安易に使えないんじゃないかな」


 例の〈魔女狩り〉って巨大ファンタズマも、あくまで対魔女戦用だと仮定して。


「それに僕は一度、ダアトが生み出したデカいファンタズマと戦って、一応は倒した実戦経験がある。空想魔術さえ発動できれば、こっちに勝てないシロモノじゃない」


 九凪君は目で応じるが、問題は片割れの巨漢の方だ。


「それよりヤバそうなのがインディゴの相棒の、アバトラって巨漢だ。アバトラは欧州各国で何人もの魔女の護衛役を務めてきた、武闘派魔術師だ。正直、奴は強え。協会の魔術師を何人も送り込まねえと勝ち目はないかもしんねえ」


「――でも、今はその作戦が使えない」


「ああ、そうだ。残念だが、いまだに俺ら魔術師はイ界に入れなくなったまんまだ」


 クソッ、と本当に悔しそうな声をして、九凪君の拳がベッドを突く。


「つまり、エソライズムエンジンを持つ僕だけが最後の切り札だってことなんだね」


 指で首筋をなぞる。そこに宿された魔導器が、今もどこかにいる魔女Vの強い力を感じさせてくれている。


「宇佐美、お前ひとりに無謀な作戦を任せるなんて、本音じゃ俺は反対だ。だが、お前ひとりでダアトをブッ潰すってんじゃなくて、ただあの七月絵穹を助け出すだけの作戦なら、達成不可能とは言えねえ」


 そう言って腰を上げた九凪君が、僕に私物の服とか鞄とかを押しつけてきた。


「それに俺らは運がいい。情勢が味方してくれた」


「……情勢?? それって、どういうこと?」


「ダアトの幹部が欧州で逮捕されたらしい。結果として今回の事件はインディゴとアバトラの独走――ダアトにとって体のいい尻尾切りで決着がついた、ってことだ」


 最初は彼の言った意味を計りかねたけれど、


「要するに、俺らの敵は残りたった二人、ってこった!」


 それはすぐ先に光明が見えそうな知らせだった。


「なら、七月先輩や囚われの(フォース)さんたちを救出する勝機が見えたも同然じゃない!」


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