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「よし、では取引と行こうか」


 インディゴの無粋な声が、一時の幻想を断ち切った。


「ただ、オレはこうも言った。貴様を信用しない、と」


 それが合図だったかのように、天窓が内側から弾け飛んだ。

 雨粒に交じるガラス片とともに下層階から戻ってきたのは、あの巨漢だ。僕のせいで油断が生まれていたのか。二メートル近くありそうな巨体で先輩を背後から羽交い絞めにすると、大きくて厳つい手が口を塞ぐ。

 インディゴが上空に三発、威嚇発砲した。

 先輩を捕えた巨漢が地面を蹴る。屋上の給水タンクをいくつも踏み潰して、最後に落下防止フェンスを飛び越えて落ちていった。


「先輩っ――――」


 何なんだよこの胸騒ぎ。胸が痛くて息が詰まりそう。

 フェンスの金網に飛びついて見下ろす。すると、巨漢が物理法則を無視した軌道でゆっくりと落下していくのが見えた。

 落下先に空間の歪みのみたいな穴が口を開けている。すぐに巨漢は先輩ごとそれに飲み込まれ、最初からそこに存在しなかったかのように消えてなくなった。


「我はッ――――!!」


 我は黒き逆徒――神叢木刹刃。そう唱えながら、僕も屋上のフェンスを飛び越えた。


 


 結果として、僕には七月絵穹を取り戻すことができなかった。

 先輩が最後に託してくれた、たった一つだけのエソライズムエンジン。

 絶対に奇跡を起してみせる。そう願って差し伸べた手も彼女には届かなかった。

 七月絵穹が教えてくれた魔術の基礎にあった、〝呪い〟が〝奇跡〟になるって法則を思い出す。

 〝奇跡〟とは〝呪い〟を代償にして起こり、そして奇跡の結果である未来は、さらなる呪いを生む。循環する奇跡と呪いのサイクル。

 だったら、この世界の未来は永劫に呪われ続けなければならないのだろうか。

 そんなくだらないことを、目前に迫り来るアスファルトを眺めながら考えていた。


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