表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/67

11

 もう互いの声も聞こえない。目が眩んで何も見えない。

 なのに、意識が途絶える直前、誰かに手を握られたような気がした。


【―――――――――――だいじょうぶ?】


 それが不思議と暖かくて、この〝僕〟は――――。


【平気よ、深呼吸して? そう、落ち着いてね。不安なんて気のせい。あなたのお話はハッピーエンドになったんだから。あとはゆっくり、自分のこと思いだすだけでいいの】


 そんな声が聞こえた。どこか聞き覚えのある小さな女の子の声だ。

 真っ白に飲まれた記憶の奔流が、さながら劇場で映画が始まる瞬間のように闇へと還る。

 これはただの夢。

 でも頬に添えられたその手に触れ、確かに彼女の体温を感じたんだ。


「えっ…………」


 僕の口から、思わずため息がこぼれた。


「きみは……だあれ……?」


 〝彼女〟の姿を見たのは初めてだ。僕の頬に小さな手を添えたまま、心配げな視線でじっとこっちを見つめていた。

 妖精さん? 喩えるならまさに、そんな雰囲気をした女の子だった。

 生え始めが銀、先っぽは燃え盛る朱――そんな複雑なグラデーションに染まる髪の毛は、地べたまで届くほどの長さだ。

 そのいく房かが、女の子の痩せた肩から滑り落ちて、くるくると巻いた毛先が僕の鼻先をくすぐったかと思えば、宝石色の瞳がまん丸く見開かれる。

 驚いた口を慌ててふさいで、途端に妖精さんは僕から後ずさってしまった。

 誰なんだろうこの子?

 見た感じ十歳そこそこのあどけない顔つきだけど、こんな女児との繋がりなんて僕にはない。

 そもそもこの子ってどう見ても妖精としか思えないほどの美人さん――完全に異国の人の顔つきをしてるから、言葉が通じてるのかも怪しい。

 そしたら慌てた妖精さん、両手で口元で隠したまま「おお、神よ(OMG!)」みたいな顔して。そうして真っ黒なワンピースの裾を翻して、再び闇に溶けてしまった。

 なるほど、この子ってもしかしたらエンジンの妖精なのかも。だって息づかいから、あのとき「イマージュを見せて」って問いかけてきた声の主だってわかったから。

 そっか、彼女が僕を認め、祝福してくれたんだ。

 だったらこれは、やっぱり夢なんかじゃない。

 そんな刹那に垣間見た夢の先に、僕が降り立つべき未来がずっと待ちわびている――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ