表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夕陽から飛び出して来い   作者: 木畑行雲
第二章 太陽の都からやってきた!?
9/65

第二章

 上空の薄い雲を見ていると、スーツ姿の若者とすれ違った。コツコツと忙しなく靴を鳴らし、バス停に向かっているようだ。

 その人が去った所は、おしゃれな整髪料の香りが漂っていて、晶は反射的に振り返り、匂いを嗅いだ。

 このいい香りはなんだ。追いかけて、何をつけてるのか聞き出したいぐらいだ。晶は残り香を脳裏に焼き付けようと、一生懸命に空気を吸った。しかし、何秒かすると何の匂いもしなくなって、跡形もなく消えた。

 

 晶が立ち止まっていると、犬は痺れを切らして進もうと引っ張った。家々で日陰になったアスファルトの道で、犬の爪音が響く。

 

 無いものに後ろ髪を引かれながら、晶はとぼとぼ歩いた。

 車や行き交う人が増えてきて、晶はハッとした。いつしか朝陽も強くなっている。

 

 「帰ろう」と言って先に小走りすると、犬はあっという間に晶を追い抜かして先頭を切った。グイグイ腕を引っ張られる晶は、なんだか小癪だなと思うのだった。


 ひとまず犬を庭に放し、窓から掛け時計を見た。七時十五分。晶は真っ青になって、玄関へ駆けて行った。

 玄関のドアをまた無頓着に閉めて、リビングのドアも放って閉めた。そして水道の水をゴーゴーと出してコップを一気に溢れ返すと、こぼしながら飲んだ。


「朝から何してるの」

ダイニングのドアを開けるなり、ボサボサの頭で、晶の父は言う。

「犬の散歩してたら遅くなっちゃったの。早く学校に行かなきゃ」

 晶は、またコップをゴーゴーと水道ですすいだ。

「水が飛び散るからやめなさい。学校って、今日は土曜日だよ?」

晶の父は、目をショボショボさせて言った。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ