第一章
「条件というのは何のことですか、私が何かしましたか」
晶は伺いながらも疲れが隠せず、脚をXに交差させて立ち直した。どこかに腰掛けたかったのだが、もうすぐ行くと自分の家なので近づけさせない為にも進めなかった。しかし、地面であぐらをかきたいぐらいへとへとで、小鬼の話もろくに入ってはこない。
「すいませんが、どこか座れる所で話しませんか」
「そうじゃな、では帰るとするか、わしもくたびれたわ」
晶はまた黙って、立ち尽くした。どうしたらいいのか分からず、その上じっくり考えていられない程疲れている。泣きたくなっていた。疲労困憊した思考から浮かんでくる弱気が晶を苦しめる。その上、異星から来た者によるプレッシャーで気分はもう袋の鼠だ。
だって、お父さんになんて言うの。夕陽を見たら小鬼が生まれたよって言うの?
一応頭の中でシュミレーションをしてみたが、到底受け入れてくれないであろう事は想像に容易く、晶はついに泣き出した。
揺れる肩にいた小鬼は頭に移動し、晶はさらに絶望して泣いた。
しばらくすると、何かが頭を触っているのに晶は気づいた。小さな手で頭を撫でているようなのだ。温かく優しい。何より慰めの気持ちが伝わってくる。
「よしよし」
そう言いながら、小鬼は晶の髪を撫でた。
「珠のような髪じゃ。夕陽から見たお主の髪も輝いていたの」
晶は、とりあえず座ってからこの鬼を見極めようと思った。
「小鬼さん、公園に行きましょう」
「ほう」
二人は晶の家の近くにある小さな公園のベンチに腰掛けた。
「近所の人に小鬼さんが見えるのが心配なので、奥に座ってもらえますか」
「わしはお主にしか見えないよ」
「え、そうなんですか!?」
「それにこんなに家の近くに来るのなら帰ってしまえばいいのに」
小鬼がそう言うと、晶は冷や汗をかいて考えを巡らせた。家がバレているらしい。という事は家族のことも知っているのだろうか。
「何で私の家を知っているんですか?」
「毎日見ていたよ」
何者だろう。晶はますます不可解になり、苛立ちさえ覚えた。
「お主、とても疲れているのだろう。帰って休んだらどうじゃ」
「知らない人を家にお連れする事はできません。すいません」
「だけどわしはお前と過ごすように決まっているよ」
「なんでですか!?誰が決めたんですか?」
「宙じゃ」