第四章
しばらくすると、小鬼はそろそろ帰りたいと言い出した。もうすぐで祖母と毎週見ている自然界のドキュメンタリー番組が始まる時間なのだ。先週からの続きで、今回に見所が詰まっているから絶対に見逃せないのだと小鬼は云う。
皆が皆、やりたい事だらけで賑やかなものだと、晶は思った。
それでいて、こうして一緒に過ごせるのは実に不思議なものだとも思う。
犬は先ほどからリラックスした顔をしているから、今なら帰ると言ったらすんなり付いてきそうだ。
三人は来た道を引き返して、それぞれの考えに耽った。晶は、始まってみれば楽しかったこの時を思った。まとまりがないようで、それでいて仲良くやれててなんだか嬉しくなるのだ。違う生き物同士なのに、一緒に平和に過ごせるなんて、最高なんじゃないか。
「見て」
と、小鬼が言うと、天空で青白い光線を放って、星が消えた。
犬は皆が立ち止まるので自分もそうしたというような無の表情で、耳だけ澄ましている。
夜空のあちらこちらでは星が微かに瞬いて、風が雲を動かしている。静かな空に晶は目を凝らしてみた。
小鬼は嬉しそうに、指差しをしては夜空を眺めている。
ゆっくり歩いていると、たまにどこかの家から暖かい色の明かりが見えて、晶はホッとするような気持ちがした。
「あ!」
と、晶は急に言った。
「うん?」
と、小鬼は聞く。
「おばあちゃんの部屋に明かりが点いてる。テレビもう始まるよ!」
三人はドタバタと音を立てて、家に向かって駆け出した。