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夕陽から飛び出して来い   作者: 木畑行雲
第三章 麗しき日々!?
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第三章

 日に日に子猫は大きくなり、あっという間に人間でいう所の少年といった風貌になった。灰色がかっていた毛は黒々と艶めき、青く澄んだ氷河のような色をしていた瞳は秋月のような金色になった。

 

 猫はいつも父に付いて歩き、夜は一緒に寝た。他の家族にも甘えたが、相棒は父だと思っているようだった。

 皆、「にゃんこちゃん」とか「猫ちゃん」などと呼んでいて、猫はまだあやふやな存在だった。

 名前を付けたら、飼うことになる。そのことを父以外は誰も忘れていなかった。

 

 ある夜、晶は猫のことを「ジル」って顔をしてるよねと食卓で口走ってしまった。

 言った途端、飼いたいと遠回しに催促していると捉えられたら心外だと思ったが、家族は意外な反応で迎えた。

「まぁ、洋風な雰囲気のある子よね」と、祖母は言い、

「俺はずっと考えてるんだけど全然思い浮かばないんだよな」と、父は言った。

 父が猫をすでに家族として見ている事を、この一言で誰もが悟った。

「こいつ、洋風でジルって感じがするなら、ジルにしようか?」と、父は続け、猫の名前はジルになったかと思われた。

 

 しかし、ここで天春家の知識人が沈黙を破り、印象で話す人々にある事実を突き付けた。

「でもさ、ジルって女の子の名前じゃないかな。この子男の子だよね」と、華子は言う。

 皆、なんとなくで話していたから根拠を示されると付いていけなくなり思考が閉された。

 晶に関しては思いついた事を言っただけで、名前による性別やジルの性別など皆目意識していなかったのである。

「オスだったよな、そうだよな」と、動物病院に連れて行った父ですらも忘れていてそれ以上の言葉を返せなかった。

 しかし、華子の知識はこういった反論にだけ使われるのではなく平和的であった。

「じゃあさ、本名はジルベールにして呼び名はジルにしたらいいんじゃない」と、解決してくれたのである。

「ジルベールだって。なんか雰囲気があっていい名前だね」

晶は嬉しくなって答えた。

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