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夕陽から飛び出して来い   作者: 木畑行雲
第三章 麗しき日々!?
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第三章

 ウメはいつも持ち歩いている折り畳んだビニール袋をポケットから取り出し、口を広げてやった。ふきのとうを大事そうに入れ、理太郎は嬉しそうに持った。

 

 ふきのとうの分布を知りたくなった理太郎は、緑道の中を通って帰ろうと言い出した。

 緑道は川沿いにいくつもあるのだが、父が入って行った緑道は比較的開けていて日当たり良好だった。歩道には芝が敷かれているから、歩いていて心地よい。周りは低い斜面で囲われていて、片側にはサザンカや紅葉なんかが植えられている。

「あれは何ていう木?」と、ウメや華子に聞くと大体答えが返ってきて、晶はこういう人達は尊敬に値するといつも思った。そして、晶は今教えてもらった名前を、また自分はいつか訊ねるだろうと確信していた。

 

 緑道の出口が見えてきた辺りで、犬と小鬼が駆け出し、急に引っ張られた理太郎は少しよろけてしまった。

 犬があまりに興奮するので、仕方なく行きたがっている方へ引っ張られて歩くと、待ち切れないというぐあいに吠え出した。鼻を鳴らしたり、恋しがるような声である。

 

 小鬼は一足早く、何か黒いものの上で見つめていた。楽しそうな表情でフワフワと浮いている。

 晶は、小鬼のその様子に興味が沸き、前のめりになる犬と踏ん張る父親を追い抜かして駆け寄った。

 小鬼は優しい橙の光で何かを撫でている。よく見ると、毛がベタベタの黒い子猫だった。

 疲れているのか震えて座り込んでいる。

 晶がしゃがんで見ていると、家族が追いつき子猫を取り囲むように皆で見つめた。時たま、犬が突進しようとするのを父は止めて注意した。そのうち犬は落ち着き、よそを見たりしていた。


「どうする?」と、華子が言うと、

「うちは犬がいるからダメだ」と、理太郎は言う。

しかし、見つめていると好きになってしまうのか、皆その場から離れられない。

 

「その猫は、母君の引き合わせだよ」と、徐に小鬼は言った。


 晶は、ウッとなって目をつむった。そういうことを言われると、この猫を引き取るより他にない気がしてくる。しかし、家族に何て言う、どう説得しよう。 










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