第一章
よく映画やなんかで観る天国の光、あんなもののように白くて真っ直ぐに差している。まぶた越しでも分かる程だ。
一体何が起こっているのだろう。晶は不安になって、目を開けようとしたがあまりの明るさにすぐさま止めた。目が潰れてしまうじゃないかと本能的に感じたのだ。
しかし経験した事のないこの光はなんだろうと、不安に駆られ考えずにはいられない。
UFOかそれともどこかの化学所の事故か実験か。何か恐いことが始まっているのではないか。分からないって怖い。どこか、日陰に、目を開けられそうなとこ無かったっけ。
晶は、近くに緑地があるのを思い出して、探り探りに歩いてみる事にした。頭の中で帰り道を描き、畑の縁に靴の側面をつけて歩いてみた。両手を前に出さずにはいられないけど、案外上手くできる。
数分経って、晶は不安になってきた。まだかな。どこまで来たんだろう、普通に歩いていればもう着いている頃だ。縁に足をつけたまま進んでるから方角は間違っていないはずだけど。
すると、指が電柱にぶつかって、晶はしがみつくようにして両手で捕まえた。お前はどこの電柱だ。なで回してみたけど、どこのどの電柱か皆目分からない。
しかし、緑道の近くにもあった気がする。晶は、電柱を優しく叩くとまた手探りで歩きだした。
心なしか涼しい空気が流れてくる。そう思うと、まぶたに影がかかりあっという間に木々の中に居た。葉と葉が擦れる音、小鳥のさえずり。緑の優しい気配がする。
晶は、ゆっくり目を開けて薄目で世界を見てみた。
木立の中に広がる緑、幾つもの木漏れ日が揺れている。焦点が合ってくると、なんとも和風の笹がサラサラと横で揺れている。いつもの見慣れた景色だ。
木陰から世間を見てみてもいつもと同じ。畑と戸建ての家があるだけ。この世のものとは思えないあの光はどこにもない。
広い畑を太陽がよく照らしている。